第6話 台風(1)

 木の葉がざわざわと音をたてます。黒い雲が空をちぎれちぎれに飛び、湿った重たい風がどんぐりちゃんのほほをなでました。どんぐりちゃんはあやしい空模様にどきどきして、おすましどんぐりに聞いてみました。

「きょうはどうしてこんなお天気なの?」

「台風が近づいているんです。ほら、空の西と東を見てごらんなさい。風が、西側では北から南に、東側では南から北に吹いているでしょう。これが台風の特徴です。」

とおすましどんぐりは答えました。

「いやはや、知ってはいましたが、実際に見るとすごいものですね。」

どんぐりちゃんは西と東を同時に見てみました。

「ほんとだ、頭の上で、風がぐるぐる高い所へ回りながら登っていくみたいだよ。」

風はどんどん強くなり、空はますます黒くなり、おかあさん木の叫ぶ声が聞こえました。

「みんなしっかりつかまっておくのよ!」

 そばのしいやたぶの木は、心配そうにきいきい、ぎいぎいとうなり声をあげました。どんぐりちゃんはしっかりと目をつぶって、ぎゅっとおかあさん木につかまっていました。

 ごうごう、びゅうびゅう…

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