第5話 ぞうむし

 どんぐりちゃんとその兄弟たちは、すくすくと大きくなっていきました。お日様が頭の上に来て、

「大きくなれたなあ、ぼく。うれしいなあ。ほこらしいなあ。」

とどんぐりちゃんが喜んでいたその時です。

「ひひひ、いいどんぐりはないか?」

鼻の長い、かちこちした六本足の生き物がひげをぴくぴくさせながらやってきます。

 どんぐりちゃんが、あれは何だろう、と思っていると、おすましどんぐりが緊張した声でささやきました。

「あれは、ぞうむしです。ぼくらを幼虫のすみかにしようとするやつらです。」

 ぞうむしはひた、ひたとこちらに近づいてきました。

「いーいどんぐりは、これか、あれか?」

ひげをふりふり、歌いながらやってきます。どんぐりちゃんはびくびくしながら、目をつぶってぞうむしが通り過ぎるのを待ちました。

「こいつがよさそうだ。」

という声を聞いて、はっと目を開けると、目の前にぞうむしの口があるではありませんか!

「きゃーーーーっ!!!」

どんぐりちゃんが叫ぶと、ぞうむしは驚いてつるりと足をすべらせ、そのまま地面にまっさかさま。

「ひええーーーーっ」

というぞうむしの声が、地面に吸いこまれていきました。どんぐりちゃんはほっとして、胸をなでおろしました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る