第3話 お母さん木の涙

 またある日には、きつつきがそばにやって来ました。きつつきはこつこつとお母さん木をたたいて穴をあけ始めました。どんぐりちゃんは、お母さん木がどんなに痛いだろうと思うと悲しくなって、きつつきに

「あの、お願いです、やめてください。」

と言いました。するとお母さん木は、

「いいのよ。やさしい子ね、おまえは。きつつきさんは、お母さんについた悪い虫を食べてくれるの。それに、お母さんはすぐに穴をふさぐことができるのよ。」

と答えました。どんぐりちゃんはすっかり感心しました。

「へーえ、そうなんだ。お母さんはすごいねえ。」

「それにね、きつつきの穴はあわててふさがなくても、何年もすれば鳥たちの立派なすみかになるのよ。」

そこでお母さん木は少し涙目になって、

「おまえもいつか、大きな木になることができたら、たくさんの鳥や、りすや、くまたちを守ってあげてね。」

と言いました。

「おかあさん、どうして泣くの?」

どんぐりちゃんは聞きました。お母さん木は、葉っぱの手のひらで涙をおさえて言いました。

「今はね、いいのよ、気にしなくて。これから先のことは、また話すわね。」

「うん。」

 

ひとしきりおしゃべりしたどんぐりちゃんは、うとうと、やがてすやすやと寝息を立てはじめました。眠りながら、どんぐりちゃんは、ほほに当たるそよ風や、それにゆれるお母さん木のさわ、さわ、という音を聞きました。

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