第239話:姿は変わっても彼は彼だから(名前考えるのめんどくさい)
縞タイガーと呼んでいたトラに限りなく近い生物は今、モグラの腕にトラの頭。鼻先は花のように開きうねうね動き、足がザリガニで前足の肩からザリガニの立派なハサミが生えている。背中に虫の羽があり虫っぽく黒光りしている体はオケラだろうか。
珍妙な生き物を私とエーヴァ、スー&白雪が囲む。
「名前付け直さなくていいか?」
「えぇ~めんどくさいからこのまま縞タイガーでいいよ」
「タイガー要素皆無なのです」
【縞もないのよ】
エーヴァの問いかけから始まった私たちの会話にいら立ったのかは分からないが、縞タイガーは肩から生えたザリガニのハサミを大きく広げ威嚇のポーズを取る。私たちは後ろに下がり散開する。
「スー、白雪、準備は出来てる?」
私は下がりながらスーたちに尋ねると、スーは頷き白雪は耳をぴょこぴょこ動かし準備完了の合図をする。
「それじゃあ、前線は私がいく。エーヴァはサポート、スーと白雪のタイミングは任せる!」
私は声を掛けながら朧を二本の『刀』に変え、縞タイガーのハサミを受け流しながら振るう。縞タイガーの鼻先を通る際、鼻を大きく開き花びら見たいに開いた触手を切られながらも刀を止められる。
だが私がもう一本の刀を横に振り、上からエーヴァがミローディアを振り下ろす。
刀を掴んでいた触手を開き刀を手放すと、縞タイガーは私たちの斬撃を避ける。
それと同時に私が投げた、燃える直尺が縞タイガーの肩に突き刺さり、歪んだ表情を見せるが鼻の触手を伸ばすと直尺を無理矢理抜く。
「ありゃ、意外に柔らかい?」
「再生力に能力全振りしてるっぽいぞ」
けん制になればと思い投げた直尺が普通に刺さってしまい驚いてしまったが、既に塞がった傷を見て、エーヴァの言う再生力に能力全振りの言葉に納得する。
後ろにのけ反って避けつつザリガニの両ハサミを広げ先端を振り下ろしてくるが、私とエーヴァが左右それぞれ受け流し地面に誘導する。二人で同時に回転し刀をミローディアを振り上げ鼻先を切ると数本の触手が宙を舞う。
背中を合わせたまま、エーヴァが鉄板を投げ指を鳴らすと、鉄板は震え共鳴してキンっと高い音を奏でる。
耳をつんざく音にトラの耳をペタンと倒す縞タイガーに私は『火』『弾』の漢字を描き『
握りつぶされ舞い散る火の粉を振り払う、ミローディアの斬撃が横切ると鼻先から血を吹き上がる。その隙に投げるのは先ほど私が使った新武器、その名も『
ワイヤーの中にはもう一本ワイヤーが通しており、持ち手にある輪っかを引っ張ると重なった板が開く仕組みになっている。
ちなみにさっき回転したのは私が漢字を書いているからであって、回転する機能はついていない。
投げた牡丹一華には漢字は書いていないので回らないが、縞タイガーは警戒して大きく下がって避ける。避けられた牡丹一華を後ろに回ったエーヴァがミローディアで打ち返し、縞タイガーの背中を狙う。
背中に襲いかかる牡丹一華を縞タイガーは背中の羽を広げ弾くと、羽と両手のハサミを広げその場で回転して私たちを遠ざける。
頭を下げ鼻を開きながら顔面で土を削ると、鼻先をすぼめ放ってくるのは土を固めた弾丸。
弾丸で牽制すると、大きく跳躍しモグラの鋭い爪を持った前足を振り下ろし、それを避ける私たちだが、地面にあたった前足で土をすくいながら肩のザリガニのハサミを広げその場で回転し、土をまきながらハサミを振るう。
「土を飛び道具にするとか無駄に器用なヤツだな」
「そういえば前に戦ったオケラがことしてた気がする」
土をまき散らしながらハサミを振るってくる縞タイガーの攻撃を避けながら、エーヴァがミローディアで土を払いつつ私が直尺を投げ攻撃する。
「っとそろそろいいかな?」
私が宙に『雷』を描くと、投げていた直尺についていた細いワイヤーが縦横無尽に張り巡らされた森の中に電流が走る。
縞タイガーは僅かに体を焼きながらも背中の後ろから、蜘蛛の糸を上空に伸びるの木の枝に結び体を引き上げる。
だがそれは一瞬だけ、木の枝に風の刃が走ると枝は切断され縞タイガーは空中で体勢を崩す。
枝ごと切られ落ちていく縞タイガーは、上から見下ろすシュナイダーを睨みつつ背中から糸を放出する。
周囲の木々に糸を巻き付け落下を防ごうとする縞タイガーだが、シュナイダーの背中から飛び降り落下するスーの蹴りがわき腹に決まると、糸を引きちぎりながら地面へと叩きつけられ、体をくの字に曲げ鼻から盛大に血反吐を吐く。
「白雪!」
縞タイガーを踏みつけ空中に飛び上がったスーの声に、いつの間にか木の上にいた白雪が飛び降りる。
【スー、全力でいくのよ!】
白雪は顎を上げ、自分の首元にあるファスナーに手をかける。
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