第234話:虎は犬と兎に追われ
青白い残火を映した目は怒りの炎にも見え、顎を再生しながら反撃をと映る目の色が赤い炎を映しだす。
宙で弾け炎の刃を一直線に引く『
吹き飛んだ縞タイガーは大木に衝突するも、素早く体勢を整え、体を修復しながらシュナイダーの炎の斬撃を爪で受け止める。
受け止めながらも辺りを警戒するが、その瞳には焦りが映る。
気配を探るもスーと白雪の二人を捉えきれず目だけが無駄に動く。それを許してくれるシュナイダーではなく、右前足を軸に宙返りをしながら尻尾を振り下ろし斬撃を放つと、続けざまに口に咥えた風の球を撃つ。
顔面にまともに受け目を瞑ってしまう縞タイガーの横っ面をスーの蹴りが襲う。
真横に吹き飛ぶ縞タイガーに受け身を取る間も与えず、白雪の蹴りがわき腹を捉え宙に固定される。
真上から落ちて来たスーの蹴りと真下で支える白雪の蹴りに挟まれ、盛大に吐血する縞タイガーの真正面に炎の刃が迫る。
とっさに頭から生やす鹿の角を炎の刃で散らしつつ勢いを止め、ごつく変化した顎と牙で受け止める。
炎を散らしシュナイダーが宙を蹴り真後ろに離脱すると同時に、スーと白雪が手のひらに溜めた力を縞タイガーの胴に打ち込む。
上下斜めに青白い閃光が走る。青白い光を口や目から噴き出しながら地面に転げる縞タイガーだが、一瞬で体勢を立て直し立ち上がると目や口を修復しながらシュナイダーの爪を受け止める。
あえて風の爪に身を食い込ませ、強引にシュナイダーを投げ飛ばすが、同時に真下にスーがいることに気付き強化した顎を突き出し蹴りを受け止める。
受け止められ動きの止まったスーを、白雪が地面を滑りながら腕を伸ばし引き抜くとそのまま二人が森の中へ消えていく。
目で追うもシュナイダーの風と火が吹き荒れ視界を遮る。
元々気配の小さなスーと白雪、それに加えシュナイダーの派手な技が二人の存在を感知させない。
シュナイダーと牙を剥きあいながらも、木々の間に揺れる空気を感じ取り縞タイガーの耳が動き気配へ向く。
音を立てず木々の間を滑空し鋭い爪で縞タイガーを襲うのは、ムササビの白雪。身を屈め背中に傷を追うも、致命傷を避けた縞タイガーが後ろ足をバネのように弾かせ跳躍するとムササビ白雪に襲い掛かる。
引き裂こうと爪を伸ばすが、ムササビ白雪の背中から飛び下りたスーに顔面を踏まれあえなく地面に叩き落とされる。
背中から落ちる縞タイガーを炎の刃と化したシュナイダーが襲うが、転がりギリギリで避ける。だが、縞タイガーを踏み、空中で軌道修正をしながらムササビにウサギをぶつけ入れ替えたスーが踵を首に落とすと、後から落ちて来た白雪が手を添える。
真下青白い閃光が抜け、首から血を噴き出し地面に叩きつけらた縞タイガーは背中から糸を噴き、体を地面で削りながら三人の追撃を避ける。
「しつこいのです!」
【執念よ! 執念!】
「ここで仕留めたかったが簡単にはやらしてくれんか」
三人の言葉を背にして、体を修復しながら縞タイガーは走り始める。それを追う三人の追撃をかわしながら走り続ける縞タイガーの目に木々の間を走る細い線が映る。
目を細め見ると人が電気と呼んでいるエネルギーが流れている様が瞳に映る。自分を害するほどではないが、だからといって身が傷つくのは不快であるのは間違いない。
自衛隊によって事前に張られたワイヤーはバッテリーを介して電気を流すだけの単純なものだが、縞タイガーの進路を制限する効果はあり、それにスーと白雪にシュナイダーが軌道修正かけつつ目的地へと追い込んでいく。
縞タイガー自身もどこかへ追い込まれているのはなんとなく感じていたが、後ろから追いかけてくる三人の追撃の威力が落ち始めていることを感じ取り、反撃の機会をうかがいしばらく付き合うことにする。
だがその判断は冷静で的確であったが、選択は間違っていたことに気が付かされる。
森に響き渡る音色は、血なまぐさい戦場には似つかわしくない繊細で美しい。
広がる音符の泡に囲まれながら縞タイガーは追撃していた三人の鋭い気配とは違う、真正面から力でぶつけてくる圧倒的な気配を感じ、急ブレーキを掛け立ち止まると毛を逆立てる。
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