第219話:光の差す方へ向かえば
私が上空に打った赤い信号弾は、自衛隊の人たちの大体の居場所を知る意味もあるが一番大切なのは色が示す意味だ。
『青』は水場、『橙』は土がある場所を意味する。
私の力は様々な物質に魔力を流し変化させることで成り立つ。空気中の水分を使うことも出来るが、最初から水があった方が能力をフルに発揮できる。
前世と違い普通の石には魔力を流せるのだが、建造物の壁には力が流せない。
宮西くんや坂口さんから、様々な物質が複合して作られているから上手く流せてないのではないかとの見解をもらった。
お陰で、アスファルトやセメントに覆われている日本では私の『土』の属性が使えなかったわけだ。
なのでこの信号弾には、自衛隊のみなさんが私に最適な場所を探して知らせてくれるという役割がある。
「それにしても、水と土が一緒にある場所ってこの辺りに川とか流れてなかったはずだし、なんだろ?」
事前に覚えていた地図を頭に思い浮かべようとするが、後ろから飛んでくる物体の気配を感じ真横に跳ねて避ける。
飛んできた塊は、近くに停まっていた車を激しく揺らしてドアをへこませる。
ガラス片が散るなか滑りながら、途中拾っていた鉄の棒を弓状の朧につがえ放って反撃する。
私の放つ矢を黄金狒々は避けながら勢いよく走ってくると、豪快に繰り出されるパンチを私が避けると歩道の柵が吹き飛ぶ。
肩に一撃喰らわせながら、後頭部を蹴って後ろに飛びつつ、背中に矢を放ち二本ほど突き刺す。
振り返る黄金狒々よりも先に、宙に描いた『切』の漢字に石を投げて発動させればバス停のアーケードが崩れ落ち、黄金狒々の頭上に崩れてくる。
その隙に壊れた柵の棒を拾い『槍』を描き槍に変えると、『鋭』『刃』を宙に手早く描き投擲する。
鋭さを増した槍が黄金狒々の胸元に突き刺さるとそこに、懐から取り出した直尺を投げて絡ませる。
魔力を流せば直尺の『雷』が光り、柵の棒で出来た槍を電極に電流が体内へ流れる。
けたたましい雄叫びと爆発音と共に、瓦礫を吹き飛ばし胸に刺さった電気が流れる槍を強引に抜いて投げ捨てる。
「直接流したのに、そこまで効果ないかぁ。もっと電圧を上げないとっと」
文句を言ってる途中で投げて来た瓦礫を避けると、更に上空から黄金狒々が振り下ろしてくる拳を避ける。
アスファルトに拳を打ち付け、そのまま火花を散らし振り上げる拳を体を反らし避けると先程よりも強い風が上空へ抜けていく。
怒りで威力が増したのだろうかは分からないが、ますます攻撃をもらうわけにはいかなくなった状況で、矢を放つと近くにあるビルの二階の窓ガラスを突き破ってビルの中を走って逃げる。
目的地に行くにはビルを突っ切った方が早いし、狭いと物を投げにくいであろうとの判断だったのだが……。
「うわっ! うそでしょ!」
ビルの壁をぶち破り黄金狒々が入ってくる。肩からタックルしたのだろう、右肩から入ってきて破片を散らしながら、床をすくい上げ振り上げる拳に机や椅子が宙を舞う。
パソコンや紙などが舞うのを見て、ここで働いているであろう人たちのことを思い浮かべてしまいちょっぴり申し訳ない気持ちになる。
でも仕方ないと気持ちを切り替え、宙を舞う椅子を蹴り黄金狒々にぶつけドアを蹴破り廊下へ逃げると、窓を破って外へ飛び出す。
壁を蹴って降りる私の上の窓が割れ、私を飛び越えて黄金狒々が先に地面に先に着地すると、近くにあった家のプロパンガスのボンベを掴み数本投げてくる。
空中で身を捻りながら避けつつ、両袖からワイヤー付き直尺を投げ二本のボンベの先端に巻き付けると、私に向かってくる黄金狒々に向かって強引に投げる。その際袖の中にあるワイヤーの根本を外しておく。
黄金狒々も体を捻り避けるが、ワイヤーが張った二本のボンベに絡まってしまう。
ワイヤー付きのボンベが絡まったせいで宙でバランスを崩し、ボンベの重さに引っ張られ落ちた黄金狒々に向かってやることといえばこれしかない!
弓につがえる『火』の『矢』はボンベに向かって飛んでいく。火に炙られたボンベは爆発するものかと思ったんだけど……。
何だかよく分からないけどボンベの先端から豪快に炎を吹き上げ始める。
まあ、結構な火力で黄金狒々が焼かれてるからこれはこれでいいんだけど、思ってたのとなんか違う。
「ってぇ!?」
追撃をしようとする前に炎を吹くボンベが豪快に私に向かって飛んでくる。壁にぶつかり破片と火の粉を散るなか金の毛を黒く焦がした黄金狒々が真横に飛んでくる。
両手で私を掴もうとするのを、宙に回転しながらギリギリ避けると黄金狒々は壁にぶつかる寸前でくるりと回転すると、足で壁に着地し水泳のターンのように壁を蹴ると私に向かって飛び掛かってくる。
「しつこいっ!!」
後ろに下がりながら、矢を放ってけん制し飛び掛かってくる勢いを殺すと、ビルの壁に向かって飛び、壁を走って避ける。
そのまま走りビルに囲まれた僅かに暗い場所から、光が強い方へと向かう。
ビルの間を抜け、光の広がりと共に開けた場所に出ると目の前には、
「田んぼ!?」
喧騒な町並みから一転、のどかな田園風景が広がる。
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