第202話:捻りとは相手の嫌がることを考えることなのです
蜘蛛猿を追いかけていくと、道幅の狭い道路へと辺りの景色が変わっていく。
そして、張り巡らされた糸と、その糸に吊られ車やらがぶら下がっている。
うむぅ、正直捻りがない。
気配を探ると、待ち伏せしていたのであろう猿が数匹、辺りに散らばっているのが感じ取れる。
気配に注意を払いながら蜘蛛猿の背を追う、その真上に糸で吊り上げられぶら下がっている車の真下を私が通り抜ける瞬間、糸は張りを失い急降下し激しい衝撃音と共に地面にぶつかる。
それだけでは生ぬるいと次々と落ちてくる車や大きな看板などなど。
衝撃音が鳴りやむと大きな土埃が上がり、がれきの山が出来ている。
そのがれきの山のもとにぞろぞろと集まり取り囲む猿たち。そいつらはどこか笑みを浮かべているようで、何匹かは手にもった鉄の棒で手を叩きながら悪ぶって、調子に乗っているようにも見える。
どこの世界でもああいうガラの悪い感じのヤツっているんだなぁって思いながら、猿たちを上から見てたりする。
「あのさ、罠を発動した後、起点の位置に留まったらダメでしょ。位置がもろバレだし。それに自分たちが出した音で敵を見失ったら元もこうもないじゃん」
マンションのベランダで手を叩き、大口を開け喜んでいた猿の口の中に刀の朧を突き刺していた私は雷を放つ。
激しい光と破裂音と共にガラスが割れ、地上に降り注ぐ。
突如上空で起きた爆発に猿たちは、車の下に私がいないことにようやく気がついたらしく、慌てふためいている。
一匹の猿が急ぎ壁の凹凸を器用に駆け上がり、爆発のあったマンションのベランダに飛び込む。
爆発でもうもうと煙が巻くその空間を、顔をしかめ見る猿。
一瞬何かが光ったと思ったときには首に巻き付いている水の鎖。
しっかり巻き付いたのを確認して、私は鎖を持ったままベランダから飛び降り、壁を駆け降りる。
そして壁を上ってきていた援軍の猿たちの中の一匹のもとへ向かって走ると、頭を踏みつつ飛び、鎖を投げて首に巻き付ける。
鎖が巻かれた猿は、私に蹴られた勢いで手を離し、全体重をベランダに残された猿の首に掛け宙にぶら下がってしまう。
そして私が地面に降りたことで、他の上っていた猿たちが慌てて壁にぶら下がりながら降りてくる。
降りてくる一匹の猿のもとに石を投げる。石は猿の足下に当たり『火』の漢字を光らせると壁で火が弾ける。
この衝撃で手を離し落ちてきた猿が背中を激しく打ち付け、衝撃で開いた口に刀を突き立てる。
刀を捻りながら右の甲に描いてある『雷』、柄に描いた『撃』を光らせ『雷撃』を発動させる。
立ち上がる雷撃に、動かなくなった猿のもとに立つ私に向かって来る猿。左手の甲に描いた『速』の文字を撫でつつ、二本の刀の『鋭』を光らせる。
小さくも鋭い円は二回同じ軌道で線を引き、猿の体を斜めに切り落とす。
そのまま両腕刀を地面に刺すと自らの両腕を切り、血の流れる手で再び刀を握り刀身に這わせた血で地面に描くは大きな『鳴』
斜めに切られた猿が崩れ落ちるとき、宙吊りになっていた猿に首を絞められていた猿が、命からがらベランダから身を乗り出すが、そのせいで宙にいる猿の重みで落下してしまう。
そして猿たちが落ちてくるのは私がいる場所。
バク宙しながら、ワイヤーの繋がっていない直尺を投げる。前もって描いてある漢字は『雷』。それを発動した直尺が宙で雷を纏い『鳴』に突き刺さる。
『
死体を含め四匹の猿を巻き込んで、爆音と共に雷が天へ向かって立ち昇る。
空で弾ける雷の光を背に二本の刀を構え、刃先を蜘蛛猿に向けるが台詞を言う前に、蜘蛛猿は私に背を向け走り去って行く。
「ここで逃げちゃうか。罠はまだあるってことなんだろうけど……まっ、行くしかないか」
正直ここで終わらせたかったが、逃げられものは仕方がない。逃げる蜘蛛猿の背を罠を警戒し慎重に追いかけて行く。
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