第180話:お勉強会
今までの宇宙人たちは突如現れて、手の内も分からず、その場で対応し倒してきた。だが今回は違う。
相手は蜘蛛型宇宙人のウーラー。巣を作りおそらく罠を張り私たちを倒そうと考えているのだろう。
他の人間は眼中にもないなんて思っているかも。
ウーラーの巣に攻める前に、坂口さんから国側が何らかの接触を図ってくる可能性があるから警戒するように言われた。
徹底的に姿を隠し接触しないという方法も考えたが、今後も続くであろう宇宙人との戦いを考えて、私たちだけではどうにもならなくなると判断し逆に関われるなら積極的に接触を試みることにした。
これは今のところ接触して良かったと感じている。中央にある白い棟のような巣は複数のビルを糸で包んで作られているらしく、目の前にそびえ立っている。
その白い棟を前にして攻め入ることはせず、近くにある公園に私と三木さん率いる隊と高橋さん率いる隊の八人と一緒にいる。
なんでかというと、私たちは町を四方に別れた後、自衛隊の人たちを連れて中央に向かって進んで行って合流したからだ。
高橋さんたちは、自分たちでやってきたけどシュナイダーと出会っていたみたいだ。
一気に白い棟に攻めてもいいんだけど、中で待っているウーラーは蜘蛛という特性から罠を張って待ち構えている可能性が高い。
近づいたらここから入ってくれと言わんばかりの隙間が数か所あったから、入らなかった。
自衛隊の人たちに尋ね話し合った結果私たちは作戦を実行する。
そして今、夜の公園にて私は街灯の上に立ち神経を研ぎ澄ませる。
一瞬魔力を感じる、シュナイダーからだ。
「三時の方向! 中央に誘って下さい」
私が指示を出すと自衛隊の二人が銃を構え家の影から出てきた、手負いの蜘蛛が現れるとけん制の発砲をする。
銃弾では死なないが蜘蛛も多少は痛いらしく、銃弾を嫌って公園の中へ入ってくる。そこを次の二人が銃弾を放ち予定ポイントまで誘導する。
私が街灯の上から石を投げると地面に『糸』の漢字が光る。光った魔法陣は隣の魔法陣に魔力を供給し、一気に広がる『糸』の漢字の集合体から伸びる無数の土の糸が縦横無尽に張り巡らされる。
私は糸に絡む蜘蛛の下に立つと、刀状態の
そのまましばらく待っていると、新たな頭が生えてくるので刀を頭部に突き立て燃やす。すると背中側から長い首の頭が生えてきて襲い掛かってくるので、叩き落とし首をはねる。
朧を槍の形に変え本体に突き刺すと、手の甲で光った『雷』から流れた電流で内部から焼けた蜘蛛は身を震わせ動かなくなる。
それと同時に土の『糸』を解除すると蜘蛛は地面に力なく落ちる。
「死んだのか?」
槍で突っつく私に恐る恐る近づいてきて尋ねてくるのは三木さんである。
「ええ、中の寄生体が死んだので蜘蛛も動きません」
「なるほど、蜘蛛自体に致命傷を与えるのではなく、中の寄生体を倒すことが重要なんだな」
「はい、そして外側を攻撃し続けると今みたいに対応しようと姿を変えてきます」
いつの間にか私の周りに並んでいる隊員たちが話を聞きながら、何度も頷いてはメモを取っている。
前世でも人に教えることはあったけど、なんだか恥ずかしくてむず痒さを感じながら話を続ける。
「寄生体の潜伏場所は決まっていなくて、動くもの、分裂するものもいます。ですから内部で電流を流すなどして破壊するのが今のところ有効です。
そこに至るまでに外皮を破壊する必要があるんですけど……」
私は蜘蛛の死骸に近づくと、腹部を刃のない『鉄刀』状態の朧で叩く。
ベコッとへこむ体。次に首元を叩くと、僅かにへこむ。更に最後に生えてきた頭を叩くへこむことはなく、バンと鉄でも叩くような音がする。
「外皮も進化して、攻撃を受ける度固くなっていきます。ただこれは全体ではなく、攻撃を受け修復した箇所だけです。ですから素早い討伐と、進化されても冷静に脆い部分を攻撃することが大事です。
今のところはですけど」
他にもサル型は群れで動き、頭も良いこと、トラ型は寄生体を集め自分を強化しているのではないかと思われるなど、知っていることを伝える。
過去にあった海沿いの町で起きたゾンビ事件のことを考慮して寄生体は全て死滅させてから、蜘蛛の死骸を自衛隊の皆さんに提供する。
過去の事件でもサンプルは取っているらしいが、今回のように説明を受けながら、傷のつき具合、進化の度合いを理解した上でサンプルを取れるのは今後に役に立つと言っていた。
それを踏まえて蜘蛛の死骸を進化の度合いなどに分けて公園に並べていく。
今の私たちが知り得る情報は実際に見て感じたものだけ。もっと科学的、専門的に分析研究するには専門家に任せるのが一番だと思う。
三木さんたちも立場上全ては知れないかもしれないが、知りえた情報はなるべく提供すると言ってくれたので、ちょっぴり期待している。
因みに連絡は全部坂口さんにしてくれと、お願いしている。これは坂口さん自身が提案してきたことである。
そして坂口さんの名前を出すと、三木さんたちも、名前を知っているらしく話は早かった。
ただ、坂口さんの電話番号のみ書いてある名刺を三木さんに渡すとき、じっと鬼気迫る視線を送る隊員が一人いた。
私に向けての殺気じゃなく三木さんに向けてだったから、坂口さんに電話番号する役がやりたかったのだろうか? その後三木さんが別の隊員を呼んで坂口さんのことを聞いていたとき、悔しそうだったし。
私なら電話役とか嫌だから、やる気のある隊員さんだと感心してしまう。
こうした情報の共有はお互いに役に立つはずだから、今日ここで出会えたことは無駄にならないと信じている。
「さて、次が来るみたいです。他の隊の人たちも頑張ってるでしょうし、私たちも頑張りましょうか」
私はシュナイダーから、次の獲物が送られてきたことを魔力で知らされ、自衛隊の人たちに声を掛けると、「はい!」と気合の入った気持ちのいい返事が返ってくる。
んー、これは先生になった感じがして、ちょっぴり楽しいぞ。
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