第156話:集まるぬいぐるみ
OSJにあるフリーフォールは5人用の台座が1面に設置されているタイプである。
白雪は口を大きく開け、魔力で形成した多く鋭い前歯で座席と、支柱とを繋ぐレールの一部を噛み砕く。
そしてレールから外れ、グラグラになった座席を巻き上げるためのウインチに繋がるワイヤーをかじり始める。
【
白雪によって噛みちぎられたワイヤーは、宙吊りになっていた座席をワイヤーのしがらみから解放し、地上へと落下させる。
その真下にいるカエルたちに落ちてくる鉄の塊は、数匹のオタマジャクシたちを潰し地面にヒビを入れる。
更に上にある照明やスピーカーを次々と落としていく。
それらを中心に散り散りになるオタマジャクシの群れに追い討ちをかける私の『火弾』の連撃。
炎の中心に次々と突き立てられるその辺の柵を切った鉄の棒(私が切った)が、鋭いホイッスルの音で炎を纏った衝撃波が広がりオタマジャクシたちを燃やしていく。
その炎を切り裂き走るヒョウの白雪。その背中に乗るスーが青白い線を引きながらカエルの腹に打ち込む。
その衝撃は凄まじく巨体を大きく曲げ、口を大きく開き、体液やら卵やらをドボドボ吐き出す。
そこに高速で飛んでくる鉄の棒が数本口の中に投げ込まれ突き刺さると、鋭い音で衝撃波が起こり頭部が吹き飛ぶ。
「ん? 音が消えねえ。体の中で移動したのか?」
頭が失くなったカエルを見て呟くエーヴァの元に集まる私たち。
その目の前でカエルがビクビク体を痙攣させ始めると体を突き破って大量の足が生えてくる。
背中を中心に生える大量の足を使って移動を始める。大量の足はカエルっぽい色をしているが、形状は虫っぽい。
腹を上にして、失った頭を後ろにし、長い舌を尻尾のように動かし、元足の裏に目玉をつけガサガサと大量の足を動かし動く姿は、この生物が地球上のものではないことの証拠だと思う。
オタマジャクシを踏み潰しながら突進してくるカエルの、元太ももの付け根を突き破って生えてくるカマキリの鎌をクワガタの顎のように広げ、足の裏にある目で私たちをしっかりとらえている。
大きな顎が音を立て交差し、スーが避けた後ろにあった街灯をへし折る。そのまま無数の足を使って元来生物ができないようなむちゃくちゃな方向転換し、顎を広げるとエーヴァへ向かっていき避けられ別の街灯を折る。
今度は顎を閉じ一本の角のようにして私に突っ込んでくる。気持ち悪さ前回で突っ込んでくるそいつを避けようとしたとき、後ろにあるゲームセンターに人影があるのが見え、避けるのを止め突進をずらすことを決め正面を向いたときだった。
ヒョウの白雪が走ってきて私を咥え背中に乗せると、ゲームセンターの中へガラスを破って突っ込む。私は中にいた人を掴み乱暴に引きずりながら、別の出口のガラスを突き破り外へ逃げていく。
「大丈夫ですか……って坂口さんじゃん」
「なんだその残念そうな反応は、それよりもこれ」
私が手にぶら下げている不機嫌そうな坂口さんが、アルマジロのぬいぐるみとゲームセンターにでもあったのだろうか、玩具の弓を渡してくれる。
「お、使えそう! ありがとう坂口さん。白雪もありがとうって言ってるよ。じゃあここ危ないから逃げてて」
「扱い雑だな」
「それよりここ危ないですよ」
文句を言う坂口さんを芝生に投げて突進してくる元カエルを迎える私と白雪。
【いくのだわ、うたっち!】
「あいよ!」
私が投げたアルマジロにヒョウがぶつかると、動き出したアルマジロがその体の鎧を固くしカエルの顎を両手で受け止める。
すぐさま青白い光が私たちの間を走り抜け顎の付け根で弾けると、空中から鉄の棒を振り下ろすエーヴァの追撃で顎が飛ぶ。
『剛』を描き玩具の弓を強化し放つ矢は炎の矢。それはちぎれた顎の傷口に突き刺さり燃やす。
燃える炎をアルマジロの爪が掬い三本の赤い線を横に引き、顔面を切り裂く。のけぞる元足に雷の矢を突き刺し目を潰すが、元お尻の部分に大量の目玉が一斉に涌き出てくる。
「相変わらず気持ち悪い。目玉生やせばいいってもんじゃないしょうに」
「それには同意見だな。こいつ再生能力高いタイプみたいだし一気に押しきらねえとな。なあ、スー?」
私の隣に来たエーヴァが鉄の棒を抱え、カエルを睨みながらスーに声を掛ける。
「今火力が出せるスーが本気でいくのです。後で拾ってくれると助かるのです」
「それが一番だね、私とエーヴァでスーと白雪をサポートしよっか」
短い作戦会議を終えると私たち4人はカエルへ向かうのだった。
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