第143話:遊園地たのしぃー!
新幹線に乗り込む私たち、座席を回転させ向かい合う。
私と美心が横に並んで向かいに、エーヴァとスーと白雪が並んで座る。
通路を挟んで、宮西くんと坂口さん、アラさんと尚美さんが向かい合って座る。
「スー、その服って昔私が着てたやつだ。懐かしいなぁ」
向かいに座るスーの服を眺める。確か小学生から中学生にかけて着ていた服だ。
デニムのパンツにカットソーとシンプルな出で立ちのスー。
遊園地に行くからスカートは避けた方が無難だと私と美心も膝丈のハーフパンツである。
エーヴァは長めのガウチョパンツで、遠目からはスカートに見えなくもない。
エーヴァが着ると気品を感じるからなんだか悔しい。
「ねえ、スー。昔は男だったんだよね?」
転生したことを知らない人が聞いたら誤解されそうな質問をする美心。
ジャガイモをフライしたお菓子をポリポリ食べるスーは大きな目を美心に向ける。
「今は完全に女の子なわけだよね。それってどんな感じなの?」
「どんな感じと言われても、ああそうなんだとしか言えないのです。記憶も曖昧で性格にも違和感を感じるのですが、こんなものなのかなと納得しているのです。
死んで女神に会ってから、この姿になるまでの記憶があやふやなのです」
ちょっと困った顔でポテトを咥えるスー。
「死んだと言えば、マティアスほどの男を罠にはめ殺害する。いくら腕が鈍ってたとはいえ中々できることではありませんわよね」
「だよね、それは私も思った。単体でもかなりの力を持っていたマティアスがそう簡単に死ぬとは思えないよね」
「そう言われても、殺されたのは確かなのです」
【もー、乙女が5人も揃ってるのに、殺された、死んだとか話すのは、なしよん。楽しいお話しましょうよ!】
キャリーカーに縛られている白雪が私たちにごもっともな意見を言ってくる。聞こえない美心に伝えると納得したように何度も頷く。
私たちは今から遊びに行くわけだ、もっと楽しく盛り上がる話をするべきだろう。
「私の朧にもう少し変形機能つけたいんだけどさ、なにか良いアイディアない?」
「あまり付けすぎると耐久面で不安になりますわ。もう少しシンプルにしてはいかがかしら?」
「おじいちゃん、もっと変形させたいって言ってたのです。エーヴァは増やしたらどうなのです?」
「だよね! 楽しいよ変形させて攻撃を考えるの」
「臨機応変さは大切ですけど、シンプルに洗礼していくのも悪くないですわよ。スーはその最もたるではなくて」
「スーの今の魔力があまり物質に伝達しないので、素手の方が魔力効率いいのです」
「間合いは白雪と同時に攻めることで補えるってわけか。ねえ美心はなんか良いアイディアない?」
「なん良いアイディアかない? じゃないし! ちげーよ! 全然楽しくないし! もっと盛り上がる話をしよっか」
3人で楽しく盛り上がって、美心に話を振ったらキレてしまう。
美心は、ふんっと息を吐くと私たちに集まるよう手招きして、小さな声で囁く。
「いい? 隣にいる坂口さんと、尚美さんを見て」
美心に言われ3人とも2人の方へ視線を向ける。
尚美さんは、アラさんと楽しそうに話しながら時々坂口さんと宮西くんに話を振っている。
ちょっとめんどくさそうに答える坂口さんと、必死に答える宮西くん。
「はいっ、なにか気づいたことは?」
小声で美心が尋ねてきて、私ら3人は顔を見合わせる。
「尚美が手に持っているお菓子が美味しそうなのです」
「尚美の靴、コッチの新作ですわ。いつもファッションに拘っている尚美ですけど、今日はいつも以上に拘っている気がしますわ」
「坂口さん、寝癖ついてる」
私たち3人が答えたところで、美心が腕でバツをつくり私に向ける。
「詩とスーはダメ! エーヴァは可能性を感じる!」
勝ち誇ったように胸を張るエーヴァと、なんの勝負か分からないけど負けた私とスーは悔しがる。
「でも、落ち込んじゃダメ! エーヴァが感じた尚美さんの変化! これを突き詰めていくよ」
美心になだめられ、私たち3人は美心の指導を受けるのだった。
* * *
「みなさん無事入場できましたか? では、こちらフリーパスですのでお配りします。一日中遊び放題ですよ!」
アラさんの配るリストバンド型フリーパスを手首に巻くと、美心とスーがテンション高く両手でタッチして、今から遊べることを喜んでいる。
美心と喜びを表現したスーが、テクテクと私とエーヴァの元にやって来ると、両手を広げる。
顔を見合せる私とエーヴァは手を広げ3人でタッチする。
「ふふっ、変なの」
「昔なら考えられねえな」
「なのです!」
3人で笑い合う。
「よしっ! じゃあ最初はお化け屋敷から行こうよ!」
「ええっ!? 鞘野さん、出だしからお化け屋敷はちょっと」
オロオロしながら反対するが、何だかんだでついてくる宮西くんとお化け屋敷開幕となる。
怯え震える宮西くんを引っ張ってお化け屋敷を出ると、ガクガク足を震わせるアラさんにエーヴァがしがみつき「怖かったですわ」とか言って頭を撫でてもらっている。
「もう少し上手く隠れないとバレバレなのです! でも楽しかったのです! 次あれ乗りたいのです!」
お化け屋敷から笑顔で出てくるスーと美心。スーは直ぐにジェットコースターを指差し行こうと誘ってくるので皆で向かう。
「やべぇ、三半規管が劣化してる。20年ぶりぐらいに乗ったけど死ぬかと思った……」
「久々のジェットコースターはキツいわぁ。でも楽しいっ!」
青ざめた顔でジェットコースターの搭乗口から降りてくる坂口さんと楽しそうにしてる尚美さん。そんな2人にサッサっと寄った美心。
「坂口さん休んだ方が良いかもしれません、尚美さんお願いしても良いですか? 落ち着いたらまったり2人で遊園地散策すると良いと思います! 時間が来たら集合場所で会いましょう」
「えっ、え?」
美心は1人で大丈夫と断る坂口さんと、尚美さんを強引に押してベンチに追いやると、親指を立て笑顔で私たちの元に戻ってくる。
やりきった顔である。
「まだまだ始まったばかり! さあ~次に行くよ!」
「おー!」
美心に気合いに皆が腕を上げて応える。まだまだ楽しむぞ!!
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