第140話:詩日記④

 美心と子供たちが巻き込まれた事件の夜、3人の子供たちを無事に送り届け終わった。


 学校での騒ぎには近所の人も気付いていたらしいが、家電等が全て使えなくなった為、通報どころではなかったと、今朝のニュースでインタビューを受けた人が言っていた。


 周囲の町でも、恐らく虎や、カマキリが通ったせいで部分的に、電子機器の不具合が多発したのと、一部が破壊された家や、やつらの移動に運悪く出会ったことによる交通事故、殺害されたりや怪我をした人など、パニックが起きていた為、私たちが戦闘した学校へ警察が到着したのは明け方らしい。


 今回の戦いが終わって一度みんなで集まり話し合った。まずは確認されている個体の把握と、名称をが決定した。

 今回の『トラ』が前にあったやつと一緒かは分からないが、1体とカウントして、他の『猿』『蜘蛛』『カマキリ』は複数確認されている。『蛇』も1体だが虎の尻尾が蛇に変わったことから複数いる可能性が考えられる。ここは後で詳しく書くとして、『猿』『蜘蛛』は色の違うボス的存在が確認できた。

 金色の猿と、黒色の蜘蛛ウーラーは他の個体が身を呈して守っていたことから、群れのボスではないかと推測される。それらを踏まえ、ボス的存在に名を与える。


『猿種』……『黄金狒々こがねひひ


 シュナイダー命名、ヒヒでもなんでも好きに呼べばいいとのこと。日の光に当たると、キラキラ黄金色に見えることかららしい。


 こいつ単体でも強いのだが、厄介なのは取り巻きの猿との連携することと知恵が回ること。分断しつつ単体を撃破していくのが有効だと思われる。



『蜘蛛種』……『ウーラー』


 命名はスー、いや白雪かな? 恶心死了ウーシィンスーラー日本語で簡単に言うと『キモい』だ。これの最初と最後をくっ付けて『ウーラー』

 スーは少し不満があるようだが、白雪は気に入っている。


 こいつも連携して攻撃してくるのだが、一番厄介なのは背中の卵から出てくる足長蜘蛛の存在。

 自らの身を犠牲にして攻撃を防ぎ、潰れた体から粘液を出して、相手の武器や行動を制限していく。それに加え糸を出して、ウーラーの移動を補助する。

 背中の卵は無限湧きで、ここをどうクリアするかが倒すカギになるはず。



『虎種』……『しまタイガー』


 命名私! 縞柄の虎を日本語と英語のコラボで生み出された、宮西くん絶賛の名前である。

 こいつは単体でしか見ていないが、私たちに攻撃するより、他の宇宙人に潜む寄生体を食べることに固着しているような気がする。

 素早さ、力強さを兼ね備えた強敵である。知性も高そう。


『蛇種』……『ジラント』


 エーヴァ命名。なんでもロシアの伝承に出てくる蛇らしい。こういう付け方ありだなって思わせてくれた。

 なんか前世と違って、エーヴァって微妙にセンスよくなっている気がする。「詩はセンスがありませんのね」と言われたこと……忘れないっ!


 このジラントはスーが倒したのだが、しまタイガーの尻尾が蛇に変化したことで複数体いる可能性が浮上したため命名。ボス個体はまだ発見していないので、出てきたらそいつがジラントとなる予定。



『カマキリ種』……『カマキリンガー』


 宮西くん命名、坂口さんが「昭和を感じるいい名前だ」と肩を組み褒め称えていた。よく分からない繋がりを最近2人に感じる。

 カマキリはちょくちょく出てくる。ボスとはまだ出会っていないだけか、それともいないのか。取りあえず命名しておく。


 昆虫のカマキリと一緒で両手の鎌が厄介だ。


 他の種類の個体が出てきたら、直美さん、坂口さん、おじいちゃんの順で名前をつけることになっている。

 命名の出番がないのが一番だけども、まだ別の個体とかいるのだろうか。


 で、ここから我がチームのブレーン担当たち3人の意見、おじいちゃんは自分で考えるのは苦手と言ってアドバイザー的ポジションにいる。


 宇宙人の本体である寄生体は、寄生した生き物の遺伝子、いわゆる情報を取り込んで独自の進化を遂げる。

 ただこの進化はあくまでもその生き物の持つ情報を軸にするだけで、足や手、目などを別の場所に生やしたりはできるが、別の生き物にはなれない。


 だが、別の生き物の情報を取り込んだ寄生体を取り込むことで、その生物の特徴を使えるようになるのかもしれない。


 ただ、取り込んですぐに体を変化をさせないのは、一度変化させてしまうと元に戻れないリスクがあるからではなかろうかと推測される。


 これらの情報を踏まえ、より各個体への攻略を考え作戦を練る必要がある。



 * * *



 バタン! っと勢いよく日記を閉じる私。


「毎度毎度思うけど、なんて日記だこれ! こんなの日記じゃないやい!」


 頭を抱えて悩む私をママの声が救ってくれる。


「うたぁ~、お友達来てるわよー!」


「んー、今いくー!」


 誰だろ? そう思いながら下へと向かうと、そこにはニコニコ笑顔のエーヴァがアラさんと立っていたわけである。

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