第133話:無駄吠え
付かず離れず、この距離を保ちつつ2人は息ピッタリの攻防を繰り広げる。
反れた鎌を下から思月が蹴り上げ、更に反らす。片腕を上げた状態の鎌の間接部分に、地面でボールのように跳ね飛び上がった白雪が、爪を突き立てる。
すぐに爪を纏う魔力を消すと、体積の萎んだ爪は抜け白雪は下へ落ちていく。その白雪の背中を踏み台にして飛んだ思月が、傷口に魔力を込めた拳を打ち込む。
青白い閃光が鋭く走り、鎌の部分がちぎれ落ちていく。
休む間を与えず、体を丸め転がる白雪がジィータンの体の下に潜り込むと体当たりを食らわせ、そのまま身を広げ鋭い爪で体を引き裂く。
その傷口目掛け思月の青白く光る拳が打ち込まれると、体の一部が弾ける。
* * *
休む間も与えず、2人の連撃は繰り広げられ、ジィータンの手足が次々と解体されていく様に子供たちは釘付けで見ている。
美心は若干この光景に引いているが。
「美心、悪いが子供たちと身を潜めてくれるか? オレもいく」
「シュナイダーも手伝いに行くの? スーとしら子だけで大丈夫じゃないの?」
「あの蜘蛛、体を再生してやがる。いずれはスーの方が押しきるだろうが、そう時間もかけてられないみたいでな」
シュナイダーの目線の先に、手足を再生するジィータンの姿と、体育館の壊れた壁から這い出てくる、別の蜘蛛の姿がある。
「そういうわけだ、手伝ってくる。美心、無事に帰って、お前の胸に飛び込んでくるから安心しろ」
「いや、素直に頑張れって言わせないシュナイダーが凄いと思うんだ、ホントに」
フッと渋く笑うと駆けて行くシュナイダーを見ながら、変な感心をする美心は、男の子たちを集め壁の影に隠れる。
* * *
ジィータンの攻撃を、硬い腕でガードしながら強引に間合いに入ると、鋭い爪でジィータンの足を切り、すかさず思月が拳を打ち込むと、ちぎれた足は弧を描いて飛んでいく。
【もう再生してきたのよ、さっきより速くなってるかもっ!?】
「面倒くさいヤツなのです。再生能力が追い付かないほど一気に攻めるには、白雪と合体するしかないのですが……」
思月は体育館の壊れた壁をよじ登ってくる、ジィータンよりも二回りも小さな蜘蛛を睨む。
「今動けなくなるのは得策ではないのです。ここは、詩とエーヴァの力を借りるのです!」
「いや、そこはオレだろ。なんで隣にいて無視するのだ」
思月は自分に、体をスリスリと擦り寄せるシュナイダーを無視して目を合わせないように、辺りをキョロキョロする。
「ふん、恥ずかしがり屋め。そこがまた良いのだがな。
さて、広範囲攻撃ならオレの方が向いているだろう。連続で切り刻むから追撃は任せた」
「何を言ってるのです、このイヌコロは! あっ! しまった相手してしまったのです」
タンッと足音1つ立て宙を駆けるシュナイダーに、思わず声を掛けてしまう思月は、悔しそうにしながらも、シュナイダーの放つ攻撃の追撃に向け身構える。
宙を駆けるシュナイダーが炎を纏い、何もない空間で踏ん張って蹴ると、火花が咲く。
炎の線が空間を切り裂き、地面スレスレの空気を弾けさせ火花が散ると炎が空へ上り切り裂く。縦横無尽に引かれる炎の
その攻撃範囲は広く何度も火花を咲かせ、火の粉を散らしながら、小さな蜘蛛を巻き込んで切り裂いていく。
だが、シュナイダーの『
それでも手を休めず次々と生える手足を切り刻みながら、更にスピードを上げるシュナイダーの炎の線を見つめながら、タイミングを計り、手に力を溜める思月。
そこから少し離れた位置にいるアルマジロの白雪は、シュナイダーの攻撃と、思月の様子を見ながら、辺りを警戒する。
【ふむふむ、毛むくじゃら仲間として、誇らしい活躍するわねぇ。おや? ジィータンなんだか小さくなってる気がするわよん】
シュナイダーに切り刻まれ、手足を再生させる度に、自らの体を使って再生しているのか、一回りほど小さくなる。
炎が一段と大きく燃え上空から真下へ落ちると、ジィータンんの顔面を深く切り裂き地面に叩きつけると、そこへ向かって青白い光が走ってくる。
ジィータンは背中の羽を広げ、羽ばたくのではなく、真横に振ると羽の付け根がちぎれ、くるくると回りながら思月の方へ飛んで行く。
鋭い輝きを放ちながら飛んで行くそれは、そこに割って入り大きな爪を持つ腕でガードする白雪によって弾かれる。
【防御特化の白雪にそんなもの効かないのよ。今よスー!】
羽を弾いた白雪が背中を丸めると、思月は飛び乗り、蹴ってまっすぐジィータンの元へ突っ込む。
青白い閃光が真横に鋭く走ると、ジィータンは動かなくなる。
「見たか! スーとオレの愛の共同作業の前に敵うものなどいないのだ!!」
「いい加減あのイヌコロを始末したいのです」
【どーどー、スー落ち着いて】
声高らかに宣言するシュナイダーを見る思月の目は冷たい。そんな視線なぞ気にせず遠吠えをするシュナイダーに、
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