第130話:共演者の到着
弾ける泡が音を奏で始めると外灯の上に立つエーヴァが、ミローディアを大きな円を描きながら地面に降り立つ。
4匹の蜘蛛は空中を滑るようにしてエーヴァに襲いかかろうとしていたが、突然バランスを崩しなにもない空中で足を踏み外したようにバタバタと足を動かし始める。
振り上げられたミローディアが1匹の蜘蛛の腹部を貫くと、そのまま弧を描き縦半分に切り裂く。そのまま横に振られたミローディアの先端が顔面に刺ささるとそのまま地面に叩きつける。
ミローディアから手を離し、足に巻いてある鉄板を抜くと、蜘蛛の攻撃を体を回転させながら前進しかわしながら足を切り落とし、蹴り飛ばすと鉄板を投げつけ突き刺す。
演奏の終盤になればなるほどエーヴァの補正は上がる。曲が長くなればなるほど終盤の強さは跳ね上がり、音階の高さ、低さの数で最終的な威力、鋭さ、スピードが変わるらしい。
今回の演奏はそこそこ長く、低い音が多かったということは、威力重視。
「てめえで最後か、砕いてやるからこいよ!」
エーヴァの拳が蜘蛛の顔面にヒットすると、蜘蛛は弾けるように吹き飛び外灯に激しく体を叩きつける。
最初に切り刻まれた蜘蛛と、今しがた吹き飛ばした蜘蛛に鉄板を投げて突き刺し、フルートを短く吹くと4匹の蜘蛛一部が派手に破裂して痙攣して動かなくなる。
突き刺さっていたミローディアを抜くと大きく振り、血を払う。
「美心、無事で良かったですわ。あら? こちらの子どもたちは?」
美少女が優しく微笑むと、男の子2人は頬を赤くして、緊張した面持ちでエーヴァを見ていて、エーヴァが自己紹介するとガチガチになりながら自己紹介をしている。
エーヴァがさっき、グーで蜘蛛殴ってたの見た? なんか「砕いてやる」とか言ってたの聞こえなかった? って聞きたくなるんだけど。
因みに、はるとくんは相変わらず美心に引っ付いている。
「エーヴァ、周りの状況はどう?」
「シュナイダーが校舎の裏側で戦っているようですわね。それ以外周りに敵の影はありませんわ。
ただここに来るまで、
途中で通信は切れたのですが、位置を考えますに、恐らくここに向かっていると思われますわ」
「そいつらはここに呼ばれたのか、目的が私たちにあるのか……そもそも蜘蛛でない可能性もあるわけか」
前回の他の宇宙人同士の食い合い、あれの意味するところは正確には分からないが、トラの様子からサルの隙を狙って襲ってきたように感じた。
食い合うのも目的なら、向かってきている敵が私たちを狙いつつ、この蜘蛛も狙ってきている可能性もある。
色々考えたいことはあるが、今は美心と子どもたちを無事に帰すことを考えよう。校舎を外から見上げ、周囲を見回す。
出入り口である校門の位置までの距離は1キロ程度、走り抜けることも可能ではあるが、開けた場所で子ども連れて、何匹いるか分からない敵の襲撃を警戒するのは難易度が高い。
いや待てよ、そもそもこの蜘蛛たちはどこから来たのだ?
今日私が家に帰るまでに電波障害なんてなかったし、この学校に近づくまで宮西くんとも会話出来てた。となると考えられることは限られてくる。
「ねえ、きみたちはどこで蜘蛛に襲われたの?」
私の質問に子どもたちが思い出そうとしているのか、一生懸命首を捻っている。そのうち、
「ぼくたち、外で遊んじゃいけないって言われてたけど、3人で鬼ごっこしてたんだ。ぼくがあそこの体育館の裏に逃げたとき、ガリガリって大きな音が聞こえたから、なんだろう? って、でね、中を見ようって皆で入る場所探してたんだ。そしたらバーンって壁が壊れて怪獣が出てきたんだ」
身ぶり手振りで必死に話してくれる佑馬くん。時々、
どこの世界でも子どもの話し方って一緒なんだな、なんてふと思いながら佑馬くんの言葉を整理する。
といっても内容は単純、体育館から音がして、中から現れた。その蜘蛛が現れるまで電波障害はなかった……つまり地下深くを通って、小学校の体育館から出現したってことだと推測される。
「エーヴァ、蜘蛛を殲滅、または、ここに来るのを諦めさせるしかないと思うんだけどさ。美心たちを先に帰すのと……無理か」
「ですわね。もうたどり着いたみたいですわ」
不器用に飛ぶ、というより落ちるように滑空してくる緑色の物体、カマキリ。高い建物から羽を広げ落ちてきたのだろうか。
お世辞にもカッコいいとは言えないフラフラした姿を、私たちの頭の上で見せる。
私は美心たちを校舎の中に入れて避難させる。
両手の大きな鎌を振り上げ私らを捉えるが、校舎の3階の窓を突き破ったシュナイダーが飛び出すと、ガラ空きのボディーに体当たりをして空中で弾き飛ばす。
シュナイダーが、口に咥えていた蜘蛛の足を、ペッと捨てると空中を走り、落下するカマキリの背に一撃加え背中を反らすと、首に噛みつき、ぐるんと回り首をねじ切る。
そのまま火を纏ったシュナイダーだったが、突然跳ねてカマキリから大きく距離を取る。
ねじれてちぎれそうな首に繊維状の物が巻きつくと、頭を回転させながら首を伸ばしていく。ろくろ首みたいになったカマキリは、首を鞭のように振るいながらシュナイダーを牽制しながら地上へ落ちてくる。
「次から次へと、まったく……」
思った以上に長い戦いになりそうな予感にうんざりしつつも、気を引き締める。
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