第110話:神たーくぅ~、神託っす!
自己紹介も終わり今後のことを話あう。といっても、宇宙人が来たら倒すってだけなんだけど。
いつしかバラバラになり、各個人が詰めた話を始める。
私はエーヴァと一緒に、今回の武器についての使用感をおじいちゃんに話している。
おじいちゃんも武器なんか、作ったことないから試行錯誤しているみたい。でも楽しそうで、目が輝いている。
「それ、本当に!?」
ちょっと離れたところで話すのは、美心とスーに白雪。
歓喜の声をあげる美心と目が合うと、嬉しそうに話し始める。
「詩、聞いて! スーちゃんのシラユキ、他のぬいぐるみに乗り換えが出来て、戦えるんだって」
つまり、ウサギじゃないものになれるということ? それは凄いのか? そもそも私は白雪の実力をよく知らないのだけど。
そんなことを思う私とは対照的に、興奮する美心は手を大きく広げながら、凄いことなんだとアピールしてくる。
「つまりだよ、私はぬいぐるみを作ることで、スーちゃんとシラユキに新たな力を与えれるってこと!!」
手をバタバタさせ大興奮の美心。そうとう嬉しいみたいだ。スーの手を取りピョンピョン跳ね全身で喜びを表している。
途中から美心とスー、白雪が手を繋いで円になり、ピョンピョンしている。なんだあの集団は……楽しそうではあるけど。
ひとしきり跳ねたあと、スーが私のところへやって来る。
「詩に会ったら、聞きたいことがあったのです」
「私に聞きたいこと?」
「前世のことなのです。詩の前世、エレノアに何か言われたのです。よく思い出せないのですけど、すごく温かくて、大切なことを。覚えていないですか?」
「私が、スーの前世、マティアスに? 温かい言葉なんか言ったっけ? そもそも私マティアスとあんまり話したことないし。あんまり喋らない感じだったじゃん」
私の横からズイッと顔を出してきたエーヴァが話に入ってくる。
「お前、いつも一言しか喋らなかったじゃねえか。それに、コソコソとぬいぐるみ集めて楽しんでたろ」
「ふわっ!? し、知ってたのですか!?」
「当たり前だろ、あんだけ一緒にいれば、お前が追っかけの女からぬいぐるみ貰って、ウキウキで抱き締め、くるくる回る姿を見る機会もあるだろうよ」
「はわわわわわわっ!?」
顔を真っ赤ににして、走り去るスー。よほど恥ずかしかったのだろう。外に出ていくスーを美心と白雪が追いかけていく。
白雪は、あんまり外に出ないでほしんだけどね。
それにしても私が、マティアスに何か言ったかな? 本当にあまり喋ったことないし、そもそも関わったことがほぼ、ない気がする。
でもスーにとって大切なことそうだし、思い出しておこう。
ふと視線を横にやると、宮西くん、尚美さんと坂口さんが会話している。聞き耳を立てると、どうやら宇宙人の正体、出現場所のパターンやらを、お互いの知る情報を提供しながら話し合っている。
こういう、分析、戦略を得意とする人達がいてくれるのは非常に助かる。
現場の状況を把握して、その場の戦略を組み立てることは出来ても、情報を集め、全体的な戦略を組み立てるのは苦手だったりする。
よく見るとシュナイダーが、ところどころ会話に入り、自分が他の動物の強力を得て、集めた情報を提供している。何だかんだで役に立っている。
ちょっと前のめりになって興奮気味な坂口さん、気になって会話を聞く。
「宮西くん、つまりだ。君たちは宇宙人がいることを機械の不具合で探してたってことか」
「はい、そうです。数ヵ月の通信障害の痕跡と、通信機器の不具合を確認しながら向かっていけば、見つけれるかなと」
「電子機器の不具合のあるエリアに、宇宙人がいる可能性があるってのは俺たちも言っていたんだが、その不具合に対抗するため、より強力な電波を発する通信機器や、中身を保護する為の素材を開発していたらからな。その探し方は思い付かなかった」
坂口さんは、椅子に座ったまま上を見上げ、少し悔しそうにする。
「頭が堅いのよ。被害はあっても、宇宙人の映像や動画がないせいで報道としても困ってるわけよ。噂じゃ、フィルムカメラでも撮れないっていうんだから、口頭で伝えるしか出来ないし。
今回の事件だってさ、パニックの方が大きくて、実際に宇宙人をしっかり見たって人の方が少ないわけ。見たんだって言っても証拠もないし、今一信憑性がないって片付けれるのよね」
尚美さんがキッと坂口さんを睨むと、坂口さんは察したようでペコリと頭を下げる。
「国絡みで報道や情報に規制をかけている、国としては説明しにくいものを発表したくないのさ。
それに、国が対策しなくても、100の仮面を持つ少女が退治してくれてるから取り敢えず様子見でってことさ。どうせ電子機器使えないから、兵器も使えないしな」
私の方を期待してるぜって目で、チラッと見る坂口さん。
「今は私たちだけで、抑えてますけど、いずれそう出来なくなったときが困りますよ」
「この間の戦い見る限り大丈夫じゃないか? 詩ちゃんもそうだけど、エーヴァお嬢さんも恐ろしく強かったし」
「それは分かりません、だって私たち4人しかいないんですよ。いずれ限界はきますから、何らかの対策を練ってくれた方が、ありがたいんですけど」
私の意見に顎を押さえ、考える坂口さんに尚美さんが苦言する。
「楽観視しすぎだって、だから国はいつも対応が遅いって、文句言われるのよ。そもそも、詩ちゃんたち女の子3人と、イヌコロに全て任せるって、大人としてどうなよ。恥ずかしくない?」
「む、むぅ……確かに。俺が出来ることはあんまりないが、上に掛け合ってみるか」
皆がお互いに意見をぶつけ合う中、玄関のドアが開いてスーたちが帰ってくる。
ちょっぴり恥ずかしそうなスーをなだめる美心と白雪。
そのときだった、部屋の中心に違和感が生まれ広がっていく。だがそれは嫌な感じではなく、何度か感じたことのある感覚。
どこまでも広がる平らな地面と青い空。壁はないし、建物もなにもない空間。
周りを見回すと、私、エーヴァ、シュナイダー、スーと白雪しかいない。
そしてバサッと羽を広げ赤い羽を舞わせ、背中に後光を背負うそいつは、ぐるぐる目玉を私たちに向け、ヨダレを垂らす。
相変わらずムカつく存在だ。
「お久しぶりっす! みんなの女神ことシルマっす! 今日は皆さんにオルドを通して、神託を与えにきたっすよ! どっすか? 女神ぽいっす?」
そして相変わらず、人をおちょくった喋り方のロリっ子女神の登場(声だけ)である。
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