第104話:潜れ潜れ!
大土鼠によって破壊されむき出しになった地下街へ降りていく。幸か不幸かウージャスが住んでいると予測した地下道予定地への入り口へは問題なく行くことができた。
生き埋めにするって案も出たがゴキブリ的な生命力を考え本体が死んでいなかった場合地下で進化を続ける可能性があるとの意見から直接本体を叩くのを実行することになった。
地下道予定地は薄いコンクリートで覆われていたが地図の位置とエーヴァの聴力で空洞を発見し破壊する。
見た目お嬢様な彼女が素手で破壊する姿に驚きを隠せないおじいちゃんと黒田さんに坂口さん。まあ手に音撃を乗せているから厳密には素手ではないんだけどね。
「んじゃあ行ってくる。エーヴァこっちを頼んだよ」
「ああ任せろ、万が一に備えてこっちはあたしがやる」
大鎌を抱えるエーヴァの頼もしい返事を受けて私たちは暗い闇の中へと向かっていく。途中までは細い通路といっても大人が4人横に並べれるくらいの通路を抜けると大きな空間に出る。
なんでもこっちにも地下街をつくる予定だったとか。
私の隣を少し引っ付くように走るのは思月。幼い外見ながらビルの側面を駆け下りウージャスを破壊する姿を見るに戦闘力は高い。
ただ今はなんかシュナイダーを避けているような……
「思月ちゃんはシュナイダー嫌い?」
暗闇の中で一際目立つ金色の目で私を見てくる。
「スーと呼んで欲しいのです。エーヴァがそう呼ぶので統一するのです」
「ああそうなの? じゃあ私は詩って呼んで。で、スーは犬が苦手とかかな?」
なんか見た目が幼いので子供に話しかける感じになってしまう。そもそもこの子は元誰なんだ?
先にそっちを聞けば良かったなんて思いながら答えを待つ。
「犬は好きなのです。でもこのワンコロは嫌いなのです。変態なのです」
なんか後ろで白雪を乗せたシュナイダーが「ワンコロショック!?」とか言っているのは聞き流そう。
「ワンコロはスーをいきなり舐めてきて好きだとか言うのです。気持ち悪いのです!」
おおっ嫌われてる嫌われてる。でもこんなことでめげるワンコロではないはずなので放置しておく。そもそも自業自得だし。
「あいつ変態だから気を付けてね。ところでエーヴァと仲いいみたいだけど元関係者?」
「そういえばまだ詩には言っていなかったのです。前世でスーはマティアス。マティアス・ボイエットと呼ばれていました」
「マティアス!? うそでしょ!!」
「なぬーー!?」
驚く私とシュナイダー。
「ってなんであんたが驚いてんの? 聞いてたんじゃないの?」
「あ。いや元男だとしか聞こえてなかったというか、今がこんなに魅力的だからそのな……早く舐めたかったというか。見た目が好みだったからちょっと取り乱したと言いますか。
あ、詩のことももちろん3番目に好きだぞ!」
変態の言い訳は新たな犯罪を感じさせるだけで意味が分からない。取り乱すってそれが平常運転じゃないのか? 3番目って2番目はエーヴァ? 美心? どうでもいいランキングをこのワンコロはつけているらしい。最低だ。
「おっとぉここで当たりじゃない?」
目の前から向かってくるウージャスと周囲に感じる複数の気配を感じ私たちは臨戦体勢をとる。
「どうするのです?」
「そうだねぇ、ここで止まっても囲まれるから引っ掻き回して隊列組ませないようにしようか。私とシュナイダーが前後に散るから混乱に乗じてあっちの道へ行ける?」
暗闇の中私が目の向きで察したと思われるスーは一言。
「任せるのです」
なんとも頼もしい返事をしてくれる。朧に『剣』を目の前に『雷』を描き刀に雷を纏わせると振りかぶり暗闇を切り裂く光を放ちながら前方へ、シュナイダーが炎を体に纏うと
闇の中を煌々と炎を揺らめかせ後方へ。
前後の雷と火の放つ激しい光が暗闇を払い支配する。
数匹のウージャスが倒れ、直ぐに私の雷の走る刀を除いて暗闇は戻る。
周囲の気配を探るとすでにスーと白雪はいない。バチバチと刀で弾ける雷に照らされたウージャスの姿が見える。
刀を握り構えるとウージャスたちが警戒して身構える。が、既に遅い。
ウージャスの真上に息を殺し待機していたシュナイダーはその体に炎を纏い尚、空気を取り込み爆発的に炎を成長させ地面に一直線に落下すると地面にぶつかった炎は空気をも焼きながら地下空間に広がっていく。
炎に巻かれウージャスはひっくり返り手足を激しくバタバタさせながらもがくが、やがて静かに手足を縮ませ硬直する。
建物の影に避難し『水』から『氷』の盾を作り且つ『風』にて爆風を防いでた私だが凄まじい熱量に肌がヒリヒリする。
シュナイダーも魔力量はエーヴァの次に多い。私たちと違いスタンダードな魔法は力の制約がない分シンプルに使いやすい。
「普通に戦えば強いのに中身が変態なんだよなあ」
愚痴りながら広い空間に飛び出ると死にきれていないウージャスを2本の刀にした朧を振るいながら切り捨てていく。
このときシュナイダーの気配がないことを確認しながら進むと直ぐにやって来る新たなウージャスの集団。
チームみたいなものが出来ているのだろうかなかなか統率がとれてる。
前方に4匹。先頭はマンホールを持ってその影に隠れながら突っ込んでくる。2匹目は棒を持ち構えながら同じく突っ込んできて3匹目は石かなにかを投てきしてくる。
後ろに立つ4匹目は……おっ? なんか銀色の鎧を着た奴がいるぞ。
盾持ちウージャスが私に突っ込んでくるのに向かって私も突っ込んでいく。その行動に一瞬ためらうが対抗すべく突っ込むそいつに手に描いた『風』から『風弾』を放ち上半身に向け放つとそれを防ぐため盾が上に上がる。
身を沈め地面すれすれを滑りながら盾持ちウージャスの足を切り落とし背中に回るとそのまま後ろにいた棒を持ったウージャスの手を落とし首をはねる。そのまま回転し下に倒れている盾持ちウージャスの首をもはね胴体を蹴る。
地面に落ちていたマンホールの端を踏んで宙に浮かせると思いきり蹴る。
くるくると回りながら飛んでいくマンホールは石を投げていたウージャスの胴体にめり込みその勢いのまま壁に叩きつける。
倒れる前に詰め寄った私が首をはねる。
「ぼうっと見てる場合じゃないでしょ。そんな目立つ鎧着てんだから強いんじゃないの?」
挑発するそいつは頭、胴、手足と銀色の鎧を装備している。私に4本の腕に握りしめる先端が尖った棒状の武器を振るい向かってくる銀色ウージャスの攻撃を弾くと互いの刀と棒がぶつかり火花を散らす。
何度か銀色の鎧に当ててみるが弾かれるので隙を見て銀色ウージャスを蹴って距離を取る。
朧をの『刀』を取り消し1本の棒にする。そのまま構えるそれは棍を用いる棒術。その目的は鎧を破壊することではなく相手の体の主に関節を破壊すること。
銀色ウージャスの左右の手首を叩き武器を落とすと先端で銅を突き後ろによろめく銀色ウージャスの股に棒を通しそいつの右膝を支点にして棒を払うと左足が浮かぶ。私は回転しながら残った右足を払うと背中からひっくり返る銀色ウージャス。
肘に棒を落とし体重をかけ捻り無理矢理関節を外しながら腹の上に立つと額を突き首を上げさせむき出しになった首に棒を突き落とし貫通させる。
貫通した首にそのまま手に描いた『雷』を発動させ内部から焼ききる。
「色違うだけで弱いじゃん! こそこそ隠れてないでもうちょい気合い入れてきなさいよ!!」
私は棒を振り周囲に潜むウージャスの群れに挑発する。
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