第99話:武器の名前は『朧』~辞書で調べて決めたよ~

 おじいちゃんの作ってくれた武器は簡単に言えば変形武器だ。名前はおぼろ 

形のない曖昧さを表現してみた。我ながらカッコいいぞ!


 基本は鉄で作られた木刀『鉄刀』となり刃はなく打撃をメインとするが私が刃を付属させることで刀となる。これが2本なので2刀流なわけだ。

 そしてこの刀の持ち手は大小があり大の柄は空洞になっていて小の持ち手がスッポリ入ってロックがかかる。

 これで『こん』の形、その状態で先端だけに刃を宿せば『槍』そして鉄刀のくり貫かれた背に収納されている3枚の鉄の板指を引っ掻けるピンがあり引っ張ると収納されていた板が出てくる。


 持ち手から伸びる一番長い板の先端にピンで2枚目が固定してあり2枚目と3枚目は持ち手の方にピンがついている。引っ張り出し一枚可動限界まで伸ばすと弧を描くそれが上下。上部の一番先端にあるワイヤーを引っ張り下部にフックを引っ掻けると『弓』の形状をとる。

 もちろんこのままでは弓っぽい武器でしかない。


 弓の横に血で『弓』を描くと鉄の弓が生まれる。弓なら水や木からでも作れるが始めに武器として持っておくとメリットがある。

 それは矢に属性がつけられるということ。


 宙に『雷』『矢』を描くと雷を弾けさせ『矢』にぶつけると3本の雷の矢が生み出される。2本を薬指と小指で挟み1本をつがえウージャスに向かって放つ。目映い光を放ち高速で飛ぶ矢が手負いのウージャスの足に突き刺さると矢が弾けウージャスの全身を雷撃が駆け巡る。

 痙攣する手負いのウージャスの頭に2本目の矢突き刺さり弾けると崩れ落ちる。


 横に滑りながら放つ3本目は普通のウージャスの手を吹き飛ばし怯ませる。踏み込む私は4本腕のウージャスの攻撃を弓の背で受け流し腹を蹴ると『弓』の血を私の血で消してワイヤーをはずし板を畳む。

 『槍』を朧に描き先端を鋭くさせると向かってくるウージャスの腹部に突き立てそのまま押し壁に縫い付けると手を離し宙に『火』を描き手を突っ込むとそのまま槍を握る。

 槍を炎がつたいウージャスを燃やしながらそのまま真上に振り上げ上半身を真っ二つに切り裂く。


『槍』を消すと結合部分を外し2本の鉄刀にすると宙に描いた『剣』を通すと2本の刀となる。なんで『剣』なのに刀になるかって?

 私が強くイメージし覚えた漢字が主となるみたいで『剣』を使っていた私にとって馴染みのない『刀』は魔法として成り立たなかった。なので剣も刀もまとめて『剣』で発動するのだ。

『刀』の方が画数が少ないし使えるようになりたいんだけどね。


 2本の刀を持って4本の鉄の棒を捌いていく。手数は多いが剣術の形をなしていないものなど敵ではない。

 4本の腕から放たれる攻撃凄いように見えるが結局、外に向けた攻撃範囲は広がるが内にむけた攻撃は手同士がぶつかるので単調な攻撃になりがちだ。まして剣技として成り立っていないものを捌くことなど容易い。


 振り下ろされる右上の腕を弾き開いた脇に刀を這わせると回転しながら振り上げ切り落とすと回転の勢いそのままもう1本の刀を斬り上げ胸元から顔面までを切り裂く。


 後ろに下がらずあえて向かってくるウージャスの足元を刀で突っつくと『火』の漢字が光り燃え上がり始める炎。刀に炎を纏わせると連続で斬り3本の腕を全て落とす。


 炎に包まれるウージャスの体に腕を交差させ突き刺すと2本の刀を中央に向かって斬り進め斬り抜く。刀と刀が交差する瞬間擦れ火花が散り振り抜いたとき火の粉が外へと舞い散る。


 炎に包まれた上半身が跳ね地面に転がり同じく炎に包まれた下半身は膝を折り静かに倒れる。


「さてと」


 私は気絶したままの宮西くんを抱えおぶると安全な場所目指して走り始める。

 走り始めて分かったけどウージャスがあちこちに湧いていたのが分かる。

 というのは既にウージャスが絶命しているから。おそらくさっき出会った思月という女の子がやったのだと思われる。


 私やエーヴァ、シュナイダーにはない倒し方。魔力の体内移動による内部破壊といったところかな? エーヴァの音と違い全身隈無く駆け巡り破壊する技。

 なんかそんな技を使う一族がいた気がするけどその転生者なのだろうか?


 そんなことを考えていると背中でもぞもぞ動き出す宮西くん。どうやら目覚めたみたいだ。


「う、う~んここは?」


「起きた? ちょっと揺れるからしっかり掴まってて!」


「え? 鞘野さん? あれ? ひやあああああ!?」


「ああっうるさい! 耳元でいきなり叫ばないでよ!」


「ごごごごめんなさい!」


 怒る私に必死で謝る宮西くん。この辺で下ろしてもいいんだろうけど怪我しているかも知れないし安全な場所まで運んでからにしよう。私がおぶって移動した方が速いしね。


「大方ウージャスに襲われ助けられたってとこだろうけど、まあいいわ。取り敢えずはどっか安全なところで降ろすから」


 後ろで宮西くんがコクコク頷くのを感じる。


「ほら、もっとしっかり握って」


「え? ええっ!?」


「あぁもう! 密着してくれた方が走り易いんだって!」


 宮西くんの腕を引っ張り背中に密着させると私は加速する



* * *



 このとき詩にしがみつき首の付け根辺りに顔を埋める宮西が


「今ならシュナイダーの気持ちが分かる!!」


 そんなことを思いながら息をしていることを詩は知らない……





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