第63話:詩日記②
ここに私の生きた軌跡を記したいと思う──
◆◆
ここで私はペンを置く。
これだけで満足だ。もういいだろうそんな気分にさせてくれる一文である。
そんな満足感を胸に再びペンを握ると日記を書き始める。
◆◆
まずは私の衣装が幼馴染みの
思えばフラプリのお面や天狗、アイスホッケーのマスクなどを被ってカーテンを羽織っててるてる坊主の私だがやっとまともな姿になれた。
その姿とは一言で表すと巫女さんである。基本はほぼ巫女さんであるが袴は短くミニのガウチョパンツみたいになっている。これのお陰で足が切れるのだ。
そして飾り紐が袖や襟に施され赤と白のコントラストが美しい。
血を流して戦う私にぴったりの衣装だと美心がイメージした渾身の作品だ。
前世では血を流すと引かれることが多かったから血を流すのが尊いとか言われて感動のあまり泣いたのは秘密である。
お面の話を書く前に新たな仲間が増えたことを書かないと。
宇宙人になにか怨みでも買ったのだろうか? 前世絡みとか?
そんな宮西くんは手先が器用でパソコン関係が非常に得意。そして色んなことに博識である。
生き物が好きと言ってもペットを飼いたいとかでなくその生き物の生態が好きらしくかなり詳しい。
この知識で私とシュナイダーの能力を生かした作戦を立案してくれたお陰で強敵だったワニガメンを討伐できたのだ。
3Dプリンターとプラモデルの塗装技術を屈指て美心のデザインした猫のお面も作成してくれた。デザインも巫女の服に合わせ和風になっている。
宮西くんのお陰で戦略の幅は広がったと思う。あのシュナイダーですら認めているのだから彼はとても頼もしい仲間だといえる。
◆◆
「ふ~書いた、書いた」
どうにも日記は苦手だ。勉強は嫌いではないのだけど日記というのは書いていると自分の秘密を記しているようで恥ずかしくなるから苦手だ。
椅子の背もたれに体重をかけ上を向く。
「あっ」
書くことを思い付いた私は日記に向かう。
◆◆
この間のネズミの宇宙人。ラットンを倒した際に救助した男の人名前を
なんで分かったかと言うと名刺をもらったから。倒した後地上に出たらシュナイダーが名刺を咥えて戻ってきた。
ヨダレのついたそれを見ると『宇宙防衛省』なる文字が……。前にニュースで見たことがある。確か日本を宇宙の驚異から守る為の機関が設立されたって。
でもあれは宇宙空間を使って攻撃してくる他国からの驚異を未然に防ぐものだったはず。
……あぁそういえばワイドショーでコメンテーターが「実は宇宙防衛省のお仕事には宇宙人の驚異からも守るって項目もあるんですよ」みたいなこと言って「そんなことないけどねぇ~」ってスタジオの人たちが笑っていたのを見た記憶がある。
ということはあの人たちはここ最近の事件の調査をしていたってことか。
そういえば宮西くんが言っていたっけ。ゾンビ事件を筆頭にショッピングモール、公園での事件のネットでの情報制限が凄いとか。
国家ぐるみでなにか動いているということかな?
でも国ねえ。前世のエウロパ国は魔物がいて当たり前の世界だから色々とやり易いとこもあったけどこの国はどうなんだろう?
しばらく様子を見て距離を置くのが無難なのかな。
◆◆
パタンと日記を閉じる。
「やっぱこれ日記っぽくない。もっと今日はなになにして楽しかったぁ~とか。こんなに美味しいもの食べれて幸せ! とか書くものじゃないのか? どこに国とつるむのはまだ様子を見てからにしようなんて書く女子高生がいるよ」
机に伏せ足をパタパタする。
「あぁぁぁ最近直尺で剣になるぜぃ! とかテンション上がってたけどこれは私が求める転生ライフなのか? そうなのか?」
自問自答する私は椅子から立ち窓の外を見る。下にはシュナイダーが門の外を通る散歩中のお姉さんと可愛いワンちゃんに尻尾を振っているのが見える。
視線を町並みに向ける。屋根ばっかり見えどこまでも広がる家。遠くに見える煙突から煙が出ているのは工場地帯。
この見えている範囲ですら私は守ることは出来ない。そう断言できる。守れることが出来るのは私の攻撃が届く範囲だけ。
実に狭い。
「はぁ~前世の方がこういうとこは良かったってことか」
前世と比較して現世の幸せを噛み締める予定が、戦闘面のこととはいえ懐かしんでしまうとは。
美心と宮西くんがいなかったらもっと寂しくなってたんだろうな。
下でクーンと甘えた鳴き声が聞こえる。お姉さんに撫でられご満悦そうに尻尾を大きく振っているシュナイダー。
ああ一応シュナイダーもいて助かってるよと心で呟き外を眺める。
ちょっぴりセンチメンタルな私はしばらく空を眺め空を飛ぶ鳥をみて過ごす。
やがて飛行機が飛んでいくのが見える。そういや飛行機って乗ったことないや。今度パパに言って飛行機に乗せてもらおうかな。空飛ぶってどんな感覚なんだろう? 落ち着いたら旅行に行きたいなぁ。
なんて想像して心が少し軽くなる。
* * *
飛行機の窓からエメラルドの瞳にところ狭しと建ち並ぶ住宅街を映す。
「お嬢様、もうすぐで到着します。楽しみですね」
眼鏡をかけたスーツの女性が飛行機の窓から外を眺める銀色の髪の女の子に声をかける。
「ええ、楽しみだわ」
そう笑顔で答えると女の子は再び窓に視線を戻し誰にも見えないように微笑む。
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