第46話:作戦開始!!
宮西くんから私とシュナイダーに渡されるちょっと大きめなピアス型のイヤホン。ピアスといっても穴を開ける必要はなく耳に挟むタイプだからイヤリングかな?
「これで僕と通信が出来るからこっちから指示できるうちは話を聞いて。そしてこれの一番の目的は通信が途絶える範囲を探すこと」
シュナイダーの耳につけながら説明を聞く。
「つまりこの通信が途絶えたら近くに宇宙人がいる可能性が高いってこと。それで今回の2人の通信が消えた範囲を記録しておくからこれをデーターとして蓄積して今後の宇宙人捜索に役立てるから」
「宮西。お前なんか凄いな。たまには男も助けておくべきだな」
珍しくシュナイダーが男を誉めている。最後の一言は余計だけど。ちょっと照れる宮西くんが私に渡すのは例の3Dプリンターで製作したお面。
「ありがとう。猫?」
「そそ、狐でも良かったんだけど猫をベースに神々しくデザインしてみたんだ。で詩の顔に合わせて宮西くんが作ってくれたからピッタリだと思うよ」
美心が説明してくれるお面は暗い紺色をベースに尖った猫耳に目に白い隈取りそれが頬の方まで伸びている。
「かっこいいねこれ。ありがとう2人とも」
照れる2人を見て私もなんか照れ臭くなってはにかむ。
「じゃあ作戦はさっき説明した通り。通信が切れたり思わぬところで敵にあったら鞘野さんとシュナイダーが判断して」
「オッケー、じゃあ早速行ってくる。行くよシュナイダー」
「ああ」
立ち去ろうとする私たちに宮西くんが声をかける。
「あの、鞘野さん気を付けて。怪我しないように……」
モゴモゴ言う宮西くんに私は答える。
「無理! だって私自分で切り裂くから。気持ちはありがと♪」
手を振って立ち去る私たちを元気よく手を振る美心と小さく手を振る宮西くんが送ってくれる。
* * *
宮西がノートパソコンを開くと画面に広がる町の地図。
「これは?」
美心がパソコンの地図上で何点か光る赤い点を指差す。
「えっとね鞘野さんたちに通信を届ける為の中継地点。遠くなると電波届かないしね。それとこれをの反応が消えたら近くに宇宙人がいるかも知れないってことになると思うんだ」
「へえ~凄い。宮西くん役に立ってるなあ。私ももっとサポートしたいな」
誉められ照れる宮西を見て美心にライバル心が芽生えるのである。
* * *
下水道を猫のお面を被った私が走っていると通信が入る。
〈鞘野さん、もう少し北に進んだら東側にゲートが見えると思うんだ〉
少し走って下水道に沿って設置されているゲートを見つけた私が通信で聞く。
「あったよ。どうすればいい?」
〈ゲートの先にも道が続いてないかな? さきに進んだらそこって増水時にゲートを開いて雨水なんかを一時的に貯める場所なんだ〉
ゲートは壁に埋まっていて通る隙間はない近くの壁にドアがあり「点検通路。関係者以外立ち入り禁止」の文字が見える。勿論鍵がかかっている。
「えい」
ドアノブを叩いて破壊するとドアを開け鉄板の階段を進んでいく。出口の方は普通に解錠して出ると下に大きな空間が広がっていた。
下に降りるには壁に沿って設置された梯子を降りていく必要があるみたいだがめんどくさいので飛び降りる。
〈さ、鞘野さん?〉
「ん? どした?」
〈あ、突然通信にノイズが走ったからビックリしただけだよ。無事なら問題ないよ〉
焦る宮西くんの後ろで美心が「いちいち驚かないでビシッとしなさい」とか言っているのが聞こえる。
〈じゃあそこに鞘野さんの魔法の範囲を考えて魔方陣を描いて欲しいんだけど水に濡れるのは問題ないんだよね?〉
「魔方陣が成立したものは消えないよ。ただ前の漢字で効果が決まってないものも消えないってのが分かったけど。それは今関係ないか。
うん大丈夫。それに壁や地面に書いたものは1日ならもつと思うから」
〈了解、それなら範囲を考えて床にあるプールみたいなへこみに魔法陣を描いてくれる?〉
私は床に等間隔で並んでいるプールの様な段差の何個かに魔方陣を描いていく。
〈こっちも場所の把握終ったぞ〉
〈うんありがとう。順番はどっちからでも良いけど鞘野さんが戦う場所で臨機応変に対応してくれると嬉しいんだけど〉
シュナイダーから連絡が入り宮西くんが答える。
〈分かった。ところで宮西、お願いするんじゃなくて普通にお前の言葉でいいから指示しろ〉
〈えっ?〉
〈お前は仲間になったんだろ。なら俺とお前は対等だ。そして俺はお前の作戦に賛成した。なら俺らにお願いするんじゃなくて指示してくれ〉
うわぁ~シュナイダーが凄く真面目なこと言ってる。しかも内容もちゃんとしてるし。2人のやり取りを聞きながらちょっと感動する。
〈うん、じゃあシュナイダー交戦になったら判断は任せたからさっきの場所だけは間違えないで〉
〈ああ、任せろ。ところで詩、たまには良いこと言うだろう。そう思っただろ? なら今晩風呂に──〉
〈うん思った。だからパパによく言っとくよ〉
〈お風呂終ったら私が毛を刈り取るから〉
〈任せた!〉
ここで美心が参戦してくると恐れをなしたのか〈きゃん〉と短い悲鳴が聞こえてシュナイダーの通信が切られる。
みんなと会話しながら筆を進める手がいつもより軽く感じるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます