027_薬草園

 


 薬草というのは面白いもので、同じ薬草なのに育った環境によって、まったく違う効果が現れる時がある。

 そのような理由から、俺は環境を管理できる屋敷の庭で薬草を栽培することにした。


「パッシオ、薬草は順調か?」


 このパッシオは奴隷商店で売られていたので購入した元農夫だ。

 妻と三人の子供も一緒に売られていたのを購入したもので、家族五人が俺の奴隷になっている。

 俺はパッシオ家族に薬草園の管理を任せることにした。


「へい、いい感じに育っています」

「そうか。収穫できるものはあるか?」

「へい、こちらの一角が収穫できます」


 帝城の中にある屋敷としては狭いが、一般的な基準で考えれば俺の屋敷の敷地は広大だ。

 広大な庭にある薬草園もかなり広い。広大な薬草園なので、一角といっても収穫できる薬草はそれなりに多いようだ。


「クコの実が熟していますし、カミツレも収穫できます」

「うむ、収穫してくれ」


 クコの実は薬草ではなく樹木の実だが、薬草園の一角に移植して育てている。もちろん、実は薬になる。

 俺の屋敷はメイゾンの管理下にあるが、屋敷だけではなく敷地の全域がメイゾンの力の及ぶ領域になっている。つまり、この薬草園もメイゾンの魔力の影響を受けているのだ。

 薬草は魔力を吸収することで通常の薬効以外の薬効が現れることがある。そういった効果の確認をすることも、この薬草園の目的の一つだ。


 パッシオにや薬草園を案内してもらい、生育状況を確認する。

 広大な薬草園なので一度に全部を見て回ると時間がかかるので、採取可能な薬草を重点的に見て回っている。


 屋敷の一角に俺の研究室がある。

 ここで俺は薬と毒の研究をしている。

 特に毒に関しては重要に管理しなければいけないので、地下室を研究室にしている。


 地下室への出入り口は一カ所で、その一カ所には衛兵を置いている。

 この屋敷自体がメイゾンの管理下にあるから、俺の許可なく誰も地下室には近づけないが念のためだ。


「テソ、お湯を沸かしてくれ」

「かしこまりました」


 俺の小姓であるテソは今年で十三歳になる。

 テソは魔法の才能があって、闇属性と地属性、そして水属性の三属性の適性が確認できた。

 特に闇属性の素質は帝級くらいはあると思われるので、将来有望な魔法士の卵だ。

 剣の素質は残念ながらなくサキノのような文武両道は期待できないが、帝級の魔法士なんて滅多にいないのでしっかり育ってほしい。


「セルはその薬草を粉にしてくれ」

「はい」


 セルというのは、今年で十歳になるセルミナスのことだ。

 名前が少し長いのでセルと呼ぶことにした。このセルは三人の中では一番器用で薬の知識もどんどん吸収していくので、そのうちに俺なんて足元にも及ばない薬剤師になるんじゃないかな?

 それに、魔法にも才能があって、セルから感じる魔力は三人の小姓の中で一番多いから確認したら、今現在で火属性、風属性、光属性の三属性が特級まで扱える。

 俺が見るところでは、セルは光属性の才能が一番高いはずだ。将来は帝級、もしかしたら伝説級にも届くのではないかと俺は考えている。

 才能の面で言えば、俺に仕えている三人の小姓の中で最も期待ができるだろう。

 器用貧乏にならないように育てていきたい。


 俺の小姓は三人いるが、今年十二歳になるカジャラーグ(愛称はラグ)は薬の研究では役に立たない。

 ラグは細かい仕事には合わないので、俺が研究をしている間はサキノやソーサーたちに剣の稽古をつけてもらっている。

 幸いなことにラグの剣の才能はサキノも舌を巻くほどだと聞いているので、俺の研究の役には立たないが剣の腕は将来有望だ。


 

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