第46話(最終話)「そすて」

 年が明けて三ヶ月が過ぎ、桜の花が咲き始めた頃。

 俺は事務所の副所長となった。


 伊代さんが妊娠したので在宅勤務にするから、俺に後を継げって言われた。


 あの後、俺も一人で仕事任せてもらえるようになった。

 探しものの依頼を主に。

 あのお守りのおかげか、どれもこれも早く見つかって評判が良くなってる。

 それもあってだよって所長が言ってくれた。

 役に立ててよかった。


 友里さんにはキクコちゃんが無事帰ったことは伝えた。

 すると友里さんのご両親も和解して、今は長い空白を埋めるかのように仲良くしていると返事があった。

 うん、よかった。


 あと、もしかしてと思いお守りを持って念じてみたが、やっぱ見えなかった。

 けどいつかは見つけてみせる、母さんを。


 そう思いながら歩いているうちに、事務所に着いた。

 さて、今日も一日頑張りましょうかとドアを開け、

「所長、おはようございま……ウワアアっ!?」


――――――


「ん? どうやらみたいだね」

 所長がドアの方を向いて言い、


「今度は長い旅になるかも……けど隼人君、ちゃんと帰って来てね。だって君にこの事務所を継いでもらわないと、


――――――


 気がついて辺りを見ると、なんか古びた遺跡みたいな場所。

 ここはどこだと思っていると、


「異世界人召喚術、成功したべさー!」

 え?


 聞き覚えがありすぎる声がした方を見ると、

「……あ」


 そこには背は低めで金髪を三つ編みにしていて、蒼い目がぱっちりで頬にはそばかすがある、昔のセーラー服っぽい服を着ている子がぴょんぴょん飛び跳ねキャーキャークルクル回っていた。


「……キクコちゃん?」

 声をかけたが、

「やったべさー!」

 ああ、初めて会った時と同じだ。

 だから、


「ねえ、聞こえてる!?」

 同じように言ってやった。

 すると、


「あ、ごめんなさいだべ。あたすったら興奮して舞い上がっちまっで」

「うん、それはいいからさ」


 俺がそう言った時、キクコちゃんが俺の手を取って言った。


「勇者様、いんえ隼人さん、力を貸してけろ!」




 - 了 -

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