二十五、喉の渇きの癒えぬ水

ふと気づけば

せんからしらせの雨露あまつゆ

天から地へと

真っ逆さま


    横たわる肢体は細く少年の脆さで、

    息を切らせていた。


しとど濡れ

夜の最中さなかに立ちんぼう


    蒼褪めた頬と、凝眸ぎょうぼうする色の対比。

    溺れながら目覚めた者に似ている。


ああ

黒曜に千の水


    熱に浮かされているのだろうか。

    酷く冷え切って震えているが。


白煙に

けぶる渇きをくだ

黒曜の

一滴一滴満ちたのを

震える内臓なかに嚥下すれど


    哀れに見える肢体がそこに、

    すぐ此処に、見えている。

    届きそうに、そこにある。


足りませぬ

癒えませぬ


    乱れた息遣いにひび割れた――


芳醇に深く湿れば湿るほど

しとどに濡れて染みるほど

潤いが

遠ざかってゆくのです


    それはつまり、性情にり、

    突き上げられて転げ落ちてゆくさまであるのか。


そこなあなた


黒曜は

漆黒に混じるかご存知ですか


    浅ましい。

    いや、浅いのは息遣いか。

    むしろ深いのか。

    不快、なのか。

    己こそ、浅はかなのか。


この虚洞うろ

ぜの闇に渇いておるのです


    苦しそうに震えている。

    可哀想だ。

    可愛そう、だ。


浴びるほど

流れ去る

黒の滴に魅入られて

湿潤の照り映える夜道に彷徨い出でておるのです


    打ち捨てた肢体がまるで、

    打ち上げられたうおみたいだ。

    開いた口の途切れ途切れに途絶えぬ息が、

    いかにももう、終わりを告げる。


水の亡霊

よく


    昂って、墜落していく。


    嗚呼なんだ、

    それはただ――


 静寂しじましお

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