二十三、愛玩

 殺す 夢を見る

度々

 殺す 夢を


正確に言えば

 殺す わけではないのです

 死なせてしまう だけなのです

結果として

 殺してしまった だけなのです

つまりは 殺し たと同じことなのです


決まって愛玩動物です

冷たい骸になってます

汚らしさはありません

しづかに硬く剝製みたく事切れています

理由は常にひとつです

憎くて殺しはしないのです

足りない

ただそれだけです

欠いていた

それだけです


何が


有り体に言うなら愛でしょう

思いやりの心でしょう

つまりは責任感でしょう


可愛いと

思っていたはずなのです

骸になっても愛しいと思える程度に可愛いのです

可愛いけれど

可愛がれはしないのです

都合のいい時だけの身勝手な愛なのです

だから忘れてしまうのです

可愛がることを


そうして

気づけばそれは死んでいます

冷たい骸になっています

悲し気に丸くなり

侘しそうに眠っています

とこしえに

求めても願っても得られない救いに

身を小さくして力尽き

命も尽きているのです


そうしてわたしは思います

嗚呼やはりこうなった

わたしはまた殺してしまった


何度目でしょう

愛玩動物を殺すのは

それはやはり 殺し です

 殺し 以外の何物でもないでしょう


両手で抱き上げ

頬ずりする

臭いを失くした獣のからだ

しなやかさを忘れた筋肉に

冷えた毛皮がまだ優しい感触で


それは子猫だったりもし

それは愛犬だったりもし

それは老猫だったりもし

それは憧れの犬種だったりもし


本当に飼っていたことのある子のことも

いつか飼ってみたいと言ったことのある子の場合も

飼おうと考えたことのない子のときも

様々ではあるけれど

夢の中では総じて可愛い

可愛いはずの子らなのです

死してもなお

その骸でさえ可愛く思える


故に

わたしはそれを抱き上げて

朽ちたからだに頬ずりをする

懐かしい愛しさを

思い出して抱きしめる

ごめんねと呟きをもらす

それから


無造作に廃棄する

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