雨を待つ

犬若丸

雨を待つ

 ひとつの森があった。

 ひとつの森には1匹のキリンがいた。

 1匹のキリンは生まれた時から1匹だった。

 母はいたはずだが、母の思い出はない。

 サバンナに生息しているはずなのに湿地帯の森で生きている。

 キリンは孤独を知らない。群れを知らないから自身が孤独であることに気づかない。

 だが、寂しさは知っている。

 森に雨が降る。雨が降ると必ず7色の輪が出る。

 青と白しかない空に7色の色がつく。

 キリンは天を仰いで7色の輪を眺めた。

 7色の輪に言葉はない。キリンも言葉を発しない。意思疎通を試みようとしない。

 ただ、時間が経つにつれ、うっすらと消えていき、青と白の空に戻るとキリンはまた寂しくなって雨を待つ。

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雨を待つ 犬若丸 @inuwakamaru329

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