『妖精学入門』

 私はずっと『妖精事典』が欲しかったのですが、なかなか見つからないうえに高価でした。そんなわけで訳者である井村君江さんの本は、「『妖精事典』を買うまでのつなぎ」として大変楽しませてもらいました。

 妖精と言えば羽が生えてちっちゃいものを思い浮かべる人も多いでしょうが、あれは特定の作品によって作られたイメージではないかと思います。ここに書かれる妖精たちはどちらかというと妖怪に近く、様々な姿をしています。

 また、アイルランドにおいて敗れたトゥアハ・デ・ダナーン族が海と陸のかなたに赴き、「目に見えない美しい国」を作る話は大変興味深いです。どの国にも、戦いに敗れた者たちが異形としてどこかで生きているだろうという発想はあったでしょう。たとえば竜宮城や鬼ヶ島はそういうものと同じなのではないか? などと考えながら読んでいくのも面白いです。

 まあ、本当はやはり、ファンタジー好きには『妖精事典』を読んでほしい気持ちがあります。ソフトカバーで再販予定とのことですから、そのうち買えるようになるはず、と思います。


井村君江(1998)『妖精学入門』講談社現代新書

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