『カオス レギオン 02 魔天行進篇』

 今でこそ有名作家の冲方丁ですが、デビューからしばらくは大変苦労していました。私はデビュー作から読んでいたので、早くなんとかなってほしい、とずっと思っていました。

 そんな彼の書いた名作ファンタジーが『カオス レギオン』です。同時期発売のゲームがあるのですが、小説を読んでからプレイするとずっこけると思います。全くの別物です。

 そんな『カオス レギオン』の中でも私が好きなのが本作です。テーマは移民。しかも二万人の民衆。びっくりです。主人公が強くて優秀なサポート役がいて、因縁のライバルがいて……と設定は王道と言えるかもしれませんが、この民衆大移動の前にはそんなことはどうでもよくなります。

 どうしても物語の中で主人公が自由に動き回る、他の人々は固定されているという構図になりがちです。けれどもヨーロッパの歴史に影響を受けたファンタジーであれば、このような民衆大移動がテーマになっても不思議ではないんですよね。

 冲方さんは「発想の王道」を外れているところがあり、最初の頃はそれがヒットに結び付いていなかった気がします。『マルドゥック・スクランブル』もそうですが、ぴたっとはまった時はすごく力強いんですよね。 

 繰り返しますが、ゲームは別物です。

 


冲方丁『カオス レギオン 02 魔天行進篇』(2003)富士見ファンタジア文庫

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