『ベルセルク』

 考えてみると、あまりファンタジーの漫画って読んだことありません。漫画を読んでいる数が少ないという事情もあるのですが、「よし、探そう」と考えてこともなかったんですよね。

 中学生の頃、前出した友人が漫画もたくさん貸してくれました。ファンタジーもいくつかあったのですが、その中ではまったのが『ベルセルク』でした。物語の薄暗さ、敵の異様さ、そして回想編に入っての華やかさ。子供心に「重厚」を感じました。

 主人公のガッツが、本当に単純に強いところもいいです。伝説の力に目覚めるとかではなくて、生身の人間として傷つきながら戦っているんですよね。しかもその理由が明らかになって、本当にやるせなくなります。彼が対峙しようとしているのは「絶対的な存在」なんですよね。

 読み始めた当時は妖精だけがお供だったガッツも、だんだんと仲間が増えていき、今では大所帯になっています。信頼され、好意を寄せられ、普通ならばそれは救いになるはずです。でもこちらは回想編を読んでいるので、「彼がすでに一度仲間のほとんどを失っていること」「彼が向かうべき者もまた、そのようにして仲間が増えていったこと」が分かるだけに、なんかちょっとやるせないんてすよね。

 本作を読んでしまうと、どうしても他のファンタジー世界に「浅さ」を感じてしまうことがあります。そして小説だと「描かない」ことで隠せることもあるその浅さが、漫画だとなかなか隠すのが難しい、というのもあるかもしれません。

 あと、本作、まだ完結してないんですよね。私、すっかりおじさんになってしまいましたよ。もうすぐ、ガッツのことを子供のように感じるかもしれません。つまりですね、「今から重厚なファンタジー漫画に出会うと、死ぬまでに完結しないかもしれない」という恐怖もあるわけですね……



三浦健太郎『ベルセルク』(1989-)、白泉社

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