『冒険商人アムラフィ』

 中学生の頃、私は『ザ・スニーカー』の購読を始めます。たまたま書店で見つけたんですよね。ですからスニーカー文庫の本を読むことが多かったのですが、その頃電撃文庫もできました。最初のラインナップは何かの外伝とかが多くて、あまり魅力的には感じませんでした。でも電撃大賞が始まり、とりあえず受賞作は読んでみるか、と手に取ったのが銀賞受賞作の『冒険商人アムラフィ』でした。

 この作品は主人公たちがさわやかで、ストーリーもわかりやすく、それでいてあまり読んだことのないタイプの話で、とても面白かったです。作者の中里さんはいろんなタイプの作品を書いていますし、とにかく引き出しが多い作家ですね。銀賞ですが、完成度で言えば第1回の受賞作品の中ではトップだったのではないでしょうか。

 これまで何度か「海を舞台とすること」に言及してきましたが、いろいろと盛り込める反面、ライトノベルでは扱いにくいのかもしれません。島ごとに設定がいりますし、ファンタジー世界の船旅についても考えなければいけませんからね。一つの都市なり地域なりをばんと決めて、そこを舞台に一話書く。そういうものが多い気がします。だからこそ海洋冒険を描けるというのは、作者の力量があるということかもしれません。

 この作品のようないわゆる王道ファンタジーとは少し違うものが、第1回のコンテストから認められたというのは、大きかったのではないでしょうか。この後、電撃文庫は大きく躍進していくことになります。その中にはたくさんのファンタジー作品がありました。

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