第47話

夜斗は事務所に帰り、事のあらましを聞いた

犯行理由は単純で、夏目探偵社に勾留されている仲間を解放しろという要求のためだ

ゆくゆくは夏目探偵社に電話をかけ、要求を飲ませるつもりだったという

そして勾留されている仲間というのは、唯利をスーツケースに入れて輸送していた男たちだった



「逆恨みって怖いなぁ」


「そういうもんだぜ、主!まぁそう落ち込まずに飲めよ!」


「俺の金だよバカタレ。つか俺が飲んだらお前らを誰が送るんだ」


「…明日の主?」


「黒鉄飲みすぎ。ステイ」


「あぁん!?テメェもっと前線こいやオペレーター!お前元実働だろうがよ!」


「雪音もそう。私は適材適所」



桜音と黒鉄が言い合うのももう日常だ

それにしても黒鉄は勢いよく飲む割に酒に弱く、桜音はちびちびと飲むが酒に強い

桜音は既に黒鉄よりも倍近く多くのハイボールを飲んでいた



「あはは…桜音ももう少し控えてくださいね…」


「雪音はもう少し飲むべき。そして主に部屋まで送ってもらい、押し倒せばいい」


「さては相当酔ってますね!?1回飲むのやめてくださいよ運ぶの私なんですから!」


「逆によぉ、雪音。飲んで潰れときゃあ本当に押し倒せるぜ?桜音にも言えるけどなぁ」


「…本人の前で話すなよお前ら…」



夜斗はバン型の社有車でここまで全員を乗せてきている

そのためジンジャーエールをひたすらに飲んでいるが、他はなんのためらいもなくガッツリ酒を飲み干していく

高速道路の封鎖を担当していた緋月班の霊斗もガツガツ飲んでいる

しかし桃香は未成年のため酒は飲んでいない。夜斗と同じようにジンジャーエールだ



「ったく…。今日はありがとな、助けてもらって」


「査定マックスで頼むわ、夜斗」


「しばくぞ霊斗テメェ…。よしじゃあ霊斗以外は最大な」


「なぜぇ!?」


「日頃の行いよ、お兄ちゃん。」


「妹が敵に!?」


「私の査定は上がるから、お兄ちゃんの査定はどうでもいいの」


「北極より冷たい!」



妹からの扱いに涙を流しかける霊斗だったが、すぐに持ち直して夜斗を見る

そしてふと、2人ほど来ていないのを確認した



「紗奈さんと奏音さんは?」


「2人とも女子会してる。夜架もそっちいってるし、なんなら鏡花と美羽、瑠璃もそっちだ」



夜斗は少し寂しそうに言う

その中に意中の人でもいるのだろうか



「…夜斗。知らないと思うから伝えておくが、お前はクリスマスまでに彼女を作らなければならない。何故なら、警察・自衛隊・黒淵・和泉との間でかわされた協定があるからだ」


「何言ってんだ凪?」


「まぁ聞け。酒の席でなら素面じゃないから話せる。要するに、娘が可愛いそれぞれの親が、もし夜斗にクリスマスまでに彼女ができれば手を引くとしてるんだ。奏音・美羽・夜架・鏡花の4人だな。もしそれ以外の人と恋仲になれば、2度とから口出しはしないという条件で、俺立ち会いの元、月宮妹が書類にした」


「本人の預かり知らぬことなんだがなぁ…」



夜斗はそういって、素面ではないといいつつほとんど酒を飲まない凪に目を向ける

凪は少し悔しそうな顔をしていた。表情が動かない凪にしては珍しいことだ



「止められなかった。すまない」


「いいっていいって。どうせもう決まってんだよ、腹はな」



夜斗は笑う。それを聞いた黒鉄と草薙が、良からぬことを考えていることに気づかぬまま、飲み会は終了した


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