第43話
翌日。夜斗は奏音の実家に来ていた
いつものように執事に案内され、いつもの応接間に足を踏み入れる
「きたね」
「お久しぶりです、九条警視総監」
「颯でいいよ。今はオフだからね」
「え…?」
「少し頼み事があるんだ。奏音」
九条颯は、娘の奏音を呼んだ
仕事中は上司と部下の関係にある奏音だが、こういうときは幼馴染に戻る
「夜斗君には、奏音と婚約してもらいたい。といってもすぐには無理だろうから、他の女の子たちと比べる時間は与えられるよ」
全員より奏音が上だ、と言外に伝えてくる颯
夜斗はその言葉を聞いて奏音に目を向けた
黒いドレスに身を包んだ奏音は、夜斗に目を向けて少し笑った
「奏音じゃないな」
「…!流石だね、夜斗君」
奏音ではない誰かがまた笑い、ウィッグをとった
現れたのは、奏音の妹だ。髪の色が異なる
「けど、奏音と婚約してほしいというのは本音だよ。おいで、奏音」
「夜斗なら見抜けるわよね。恋歌と私は振る舞いが違うわ」
ドアをあけて入ってきた奏音は、深紅のドレスに身を包んでいた
亜麻色の髪が、いつもどおり服に流れる
「そりゃあ、な」
「言葉に偽りはないよ。奏音の話だと、5名ほど雰囲気が怪しい女の子がいるらしいからね」
「瑠璃ちゃん、真夜、鏡花、美羽、そして夜架ね」
「そんなにいたのかぁ…。誰かから選べって?」
「そういうことだよ。まぁ僕としては奏音を選んでくれたらいいんだけど」
「そうね。当然自信はあるわよ」
「なんで乗り気なんだよお前…」
夜斗は今週だけで何回目かのため息をついた
颯が思いついたかのように手を打ち鳴らす
「夜斗君、土曜日は空いてるかな?」
「え?まぁ空いてますけど…。あ、すっぽかした月宮兄妹と会議があるから昼は空いてないです」
「月宮というと、あの敏腕法律系兄妹かな。まぁ夜だから大丈夫だよ」
夜斗は良からぬ笑みに不安を感じつつも、どうせ断れない理由をつけてくることはわかっているため何も言わずに聞く
「パーティにくるといい。このタイミングで紹介はしないよ、ただ面白いことを考えついてね」
「嫌ですよあんたの面白いことって九割九分九厘俺に不都合だし…」
「まぁまぁそう言わず。あとで時間と場所を書いた紙を送るからさ」
「ぜってぇ黒鉄とか連れてきてやる…」
夜斗はそんな思いを胸に、その場をあとにした
それが颯にとって思うつぼだということに気づかずに
土曜日。夜斗はまた九条家にきていた
中に入ると、執事に案内されいつもとは違う部屋に案内される
そこにはパーティ用の服が並べられていた
「おぉう…ガチなパーティか。となると社交…だよな。利用できそうなやつ見繕ってお近づきになっとくか」
夜斗はそこにあったなんの変哲もないタキシードを着用し、また執事に案内されてホールに出た
そこにいたのは…
「真夜…?それに瑠璃、美羽、鏡花、夜架まで…」
「私もいるよん」
「澪と雪菜…?なんでここに…」
「招待状を受け取ったんです。日時と場所と…あと、言いたくないので言いませんが、とにかく無視できない文がありました」
「私もいるよ、夜斗」
「唯利…?8人も招待したのか、あの人…」
この時点では気づけなかった
颯の企みを
そして巻き込まれた8人が、どういう思いで来たかを
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