日常

第41話

真夜は目を覚まし、昨日のことを思い出していた

直感的に金庫の中に人がいることに気づいた真夜

何故気づいたのかは真夜自身わかっていない



「……?」



目の前で寝息を立てているのは、夜斗の妹の紗奈

彼女は重度のブラザーコンプレックスで、毎日真夜に夜斗の話をして若干引かれている



(…ベッド…上の、はず…)



二段ベッドの下段に位置する真夜の寝床の出入り口側が紗奈に使われているため、真夜は出ように出られない



(…邪魔)



真夜は紗奈を押しのけようとしたが、思ったように力が出ない

それどころか腕や足にかなりの激痛が走る



(なに、これ…)


「ん…。あ、おはようございます真夜ちゃん。なんで私のベッドに?」


「…わたしの、セリフ…」



紗奈は周囲の景色を見回し、現状を把握する

と当時に真夜に抱きついた



「昨日疲れすぎて寝ちゃったんでしたごめんなさい!」


「…そういいながら、抱きつかないで…」



真夜は無理やり紗奈を押しのけた

走る激痛に耐え、腕を抑える



「真夜ちゃん、腕痛いんですか?」


「ん…。なんでか、わかんない…」


「うーん…。多分筋肉痛ですね。大の大人を十人投げたって聞きましたし」


「筋肉痛…?なったこと、ない」


「え、それなのにあんなに強いんですか。私とかあまたの筋肉痛を乗り越えても奏音さんにすら勝てないのに」


「…環境?」



真夜は立つのさえ厳しいらしく、ベッドに倒れ込んだ

紗奈はその様子を見てニヤッと笑ったあと、部屋を出た

数分後、紗奈は部屋に戻ってきた。夜斗を伴って



「ということでお兄様、真夜ちゃんをお願いします」


「構わんが、あまり遅くに帰ってくるなよ?真夜の飯作るのお前しかいないんだから」


「大丈夫です、6時には帰ってくるので(明日の)」


「……」



ため息をついた夜斗が、横になった真夜の隣に腰を下ろした



「悪いな真夜。筋肉痛になるまでこき使って」


「だい、じょぶ…。じゃない」


「素直だな」



夜斗は笑い、真夜の隣で横になった



「…?」


「座るほうが疲れる。あそうだ、舞莉に湿布買ってきてもらうか」


「……(フルフル)」


「いらないのか?」


「夜斗、いたら…治る…気がする」


「…そうか。ま、いくらでもいてやるよ。水曜日だけど」



夜斗は奏音に電話をかけ、休む旨を伝えた

怒鳴り声がする受話部を耳から離し、収まったところでよろしくと伝えて電話を切る



「いいの…?」


「おう。新入社員のケアのためならいくらでも怒られてやるさ」


「…そう」



真夜は夜斗に抱きついた。軋む腕が悲鳴を上げるがお構いなしだ



「痛いんじゃないのか?」


「痛み、より…強い想いも、ある」


「ほーん。まぁとりあえず、当てるのやめない…?」


「…?当ててる」


「どこで知ったんだその知識」



真夜の部屋が紗奈と同じになったのは雪菜の入社の日だ

オペレーター同士で部屋を組むことにしたため、真夜は1人で一部屋使っていた紗奈と同室になった

それからは、紗奈にあらゆる知識を詰め込まれたのだが、その成果の1つがこれである



(あのブラコン娘…)


「そんなに、小さく無い…はず」


「紗奈よりはあるよな。あいつ自分のことまな板族っていうくらいだし。まぁ最後に見たのとか十数年前だけど」



もはや小学生の頃とかいう次元である



「まぁゆっくり休め」



夜斗は真夜を撫で、真夜は久しぶりに微笑んだ

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