第40話
地下通路はかなり狭い
横に2人並ぶことはできず、しゃがまねば歩くことさえできない
夜斗は先頭に立つ凪を見て、少し笑った
(あの襲撃者が、丸くなったものだ)
凪は過去、殺し屋だった
夜美も同じ組織でパートナーとして活動しており、その日は夜斗を殺そうとしていたのだ
しかし夜斗は組織を破壊し、2人を雇った
それ以来、凪と夜美は一年ほど夏目探偵社の社員として生きている
「すと、っぷ。なにか、きてる…」
真夜は夜斗に張り付いて目の前を指差した
通路の奥は曲がり角になっており、その奥から謎の光がチラついている
鉢合わせも考慮して、4人は光を灯さず暗視用に改造したメガネを使って歩いているのだ
「……」
「りょ」
アイコンタクトで夜斗は真夜に指示を送った
真夜は最後尾。1番離れていながらも、サイレンサー付きの銃をおもむろに撃った
2回ほど跳弾の音が響き、何かが落ちる音と短い悲鳴が響く
「……何をしたんだ?」
「…
凪の問いに静かに答える真夜
角を曲がり少し進んだところで、男が倒れていた
「…非殺傷弾で昏睡させるのはわかるが、あの暗闇の中ターゲットも見えないのに…?」
「すごい才能だね…。敵にしたくないかな」
「当然だ。俺のパートナーだからな」
夜斗はまた壁を押してドアを開け、広い空間に出た
あとから3人も外に出て周囲を見回す
「GPSによると位置は正しい。階段は?」
「あれそうじゃね?」
などと話している間に、その部屋の赤色灯が光り回りだした
「ま、警報くらいあるわな」
4人は銃を片手にドアを睨んだ
「主?なんでこんなとこに…ってそうか、地下から地下室に繋がってたのか」
「黒鉄…。上は?」
「制圧したぜ。大したことはなかったな、ヒョロい高校生が十人ばかしいたが、全員拘束して車に乗せたところだ。残りの十人はこいつらの兄やら父だとよ」
「…こんな、あっさり…終わらない…!」
真夜がそう呟き、黒鉄の隣をすり抜けて上へあがる
夜斗もそれに続き、黒鉄は1階で待機していた草薙と共に2人を追いかけた
「ここ…」
真夜は金庫を指差した
夜斗がスマートフォンをかざすとロックが開き、金属製の重厚なドアが自動で開いていく
「職員…?」
「…」
真夜はそこにいた20人のうち、半分を順番に指差した
そして
「仲間」
「…え?こ、拘束しろ黒鉄!」
「了解!」
夜斗の指示で黒鉄がスタンガンを手にかけ寄ろうとする
しかし、その十人は縄をほどいて立ち上がり、真夜めがけて突進した
もっとも小柄で、分析能力から戦闘はできないと判断したのだろう
「ざん、ねん」
真夜はことごとくを投げ飛ばし、黒鉄が飛んでくる十人へ順番にスタンガンを当てた
「私、強い…よ?」
残りの人質を解放し、警察に引き渡す
と同時に、夜斗は護送車の運転ができるという、東北支社の第1班の女性に電話をかけた
「よし…俺は支社に戻る。黒鉄・草薙・凪・夜美・久遠・舞莉。急な呼び出しですまんかったな、東京バナナ買ってってやる」
「通り道で買えるわ」
「まぁ冗談だ。真夜の査定は最大にするとして、6人はボーナス増額な」
「「「「いえーい!!」」」」
現金な4人(黒鉄・草薙・久遠・夜美)が喜びの声をあげる
真夜は夜斗に張り付いたまま離れず、舞莉と凪は互いに顔を見合わせてため息をついた
「苦労しているんだな、桜坂妹…」
「もう慣れましたよ…」
2人はまたため息をついて、車に戻るために歩き出した
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