第39話

走行中、夜斗はふと瑠璃のことを思い出した

仕事中のため特に連絡することはしないが、気がかりなことがあるのだ



(今日たしか、デートって言ってたな。大丈夫なのか?主に俺)



付き合っているわけではない、と瑠璃は言っていた

しかし夜斗は何故か、気が気ではないのだ



「夜斗…つく…」


「ああ。各員戦闘態勢に移行。非運転者は突入場所を確認したな?想定外の事態に備え、2発を非殺傷弾に、残りを実弾に変更しろ」


『『『『了解!』』』』



到着するなり即座に銃を構えて本社を包囲する夏目探偵社

あとから到着した警察は周囲から一般人を退避させる



「ゴー」



夜斗の合図の元、各班がドアを蹴破り突撃する

夜斗と真夜は変わらず正面から突入し、目の前の受付に銃を向けながら近づく



(…何もいない…?逃げたか?)


『夜斗。こちら唯利』


「おう」


『地下に通路がある。人の気配はしないけど、一応警戒したほうがいいかも』


「地下室は?」


『金庫がある。けど、電波遮断されてるから人がいるかは見えない』


「了解。真夜」


「ん…」



夜斗と真夜は地下通路まで唯利に案内させ、真夜がまたドアに手を当てる



「…聞こえ、ない。おと、遮断されてる…」


「入ってみるしかないな。唯利」


『ハッキング完了。入れるよ』



夜斗はドアを開け、ゆっくりと中に入っていく

真夜もそれに続き、入ると同時にピクッと反応した



「…そこ」



真夜が指差したのは、なんの変哲もない壁を指差した

夜斗は不可解に思いながら近づく

しばらくすると、凪と夜美が降りてきてそこをつついた



「うーん…なんか微妙に人の反応あるかも。空洞があるんだけど、反響的になにかあると思う」


「夜美姉と同意見だ。元吹奏楽部の耳が正しければ、だけど」


「夜風2人とも同じ意見か」


「どーする社長。ぶち壊すか?」


「怒られるわ。押したら開かねぇかなぁ…開いたわ」



忍者屋敷にある回転扉のように、かなり簡単に開いたその壁の向こうには…



「誰もいない…?」


「いや…当たりだ」



凪が特殊弾頭の1つ、閃光弾を投げ込む

閃光弾は、衝撃を検知して太陽光レベルの光を放つ弾頭だ



「ぎゃああああ!!」


「目が!目がぁぁ!」


「な?」


「ナチュラルサイコか凪お前…」



出てきたのは5人の男たち

奥には他に5人、目をやられた男たちが残っていた



「この程度も見抜けないとは、本当に実働班か?」


「俺の本分は社長職だっての…」



夜斗はその十人を縛り上げ、残りの5人を捕獲するために1階に戻った

2階、3階、4階を探してきた各班が集合し、状況を話し合う



「十五人と聞いていたが、少ない。社長、地下はあれだけか?」


「真夜が聴いた限りではな」


「こっちも人っ子一人いねぇんだ。人質すらな」


「地下通路があるって誰か言ってなかった?そこ見たっけ?」


「地下で確認しただろ」



姉にツッコミを入れつつ、凪は踵で床を叩く

2人で右手の人差し指を床にあて、目を閉じる



「反応あるぞ」


「反応あるね」



2人がほぼ同時に言う

音の反響から、地下にある空洞を探知したという



「あることはわかっても、行かないことにはどこに繋がっているかはわからない」


『肯定。手配は済んでいる。その先にあるのは、とある一軒家。建前ではシェアハウスとなっているものの、実際には不特定多数の男女の出入りが確認されている。その総数、20名』


「あの大きさの家に20人住んでいるとは考えにくい。社長、どうする?」


「……夜風と冬風で地下通路から突入、霊桜と桜坂は地上から訪問しろ」



夜斗の指示で、桜坂・霊桜は車に向かった

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