第32話

『もう1つなんですけど、その精神的殺害・暴行時情緒酌量の関係で、マスコミが騒いだじゃないですか』


「そんなことあったな。で騒いだ会社に爆破予告来たやつな」


「あったね。犯人見つかってないんじゃなかったかな」


『見つかったんですよ。で、その犯人調べたらいじめられっこの親たちだったんです』


『解説。学生の中で、いじめられている子供を持つ親が、折角できた子をまもる法律を壊されてはたまらないと結託した』


「なるほどね。たしかに親目線だと、不要だって騒ぐマスコミは邪魔なわけだ」


「爆破予告の手紙にはたしか、[いじめ養護して楽しいか?]とか[お前らがいじめた人たちは今心に深い傷を負っている。これも私たちへのイジメだ]とか書いてあったな」


『不起訴になりました』


「そんな気はしてた。なんだったらマスコミが賠償請求されてなかったか?」


『肯定。イジメを肯定し、精神的苦痛を与えることを養護したとして、爆破予告を送付した親たちに200万円ずつの支払い命令が出た』



現代の法律は弱者を守るためにある

強者の力を削ぎ、弱者に力を与えていく

労働に関してもかなり法律で規制されてきた



「実際イジメは減ってきてるからな。問題はいじめられてるって嘘つく奴らか」


「まぁ、そういうのは調べがつくからね。例えばほら、雪菜ちゃんが受けた過去の損傷を調べる診断とか目撃証言とかさ。そもそも、映像か音声の証拠がなければ訴えても叶わないよ」


『肯定。だから嘘をつかれることは殆どない。ただ、そういった証拠を集める依頼もこれから増えてくるはず。イジメ用のプランを作るべき』


「今は一貫して調査時間×5000円+10万円で5万単位で切り上げだしな。イジメ用に10万でプランを作ってみるのもありか」



夜斗は近くに置かれていたメモ帳にそんなことを記録して、スーツのポケットに入れた



『っと、そろそろ私は夜勤の時間ですから落ちますね』


『首肯。私も買い物に行かないと、明日からの食材がなくなる』


「おう、お疲れ」


「お疲れ様です」



エンターキーで通話を切った夜斗は、夕飯を作るために台所に向かった



(そういえば今作、紗奈出てなくね?)


「夜斗、明日は出張だっけ?」


「ああ。東北支社…と言っても福島だからそんなに時間はかからないぞ」



超高速自動車道というものができたのが数年前

時速制限のない高速道路で、最高速度によって車線が規制されている

その上制限解除免許という、100キロ超えの速度を出すのに必要な免許がなければ通れないため、渋滞することはまずありえない

何故なら取得に百万円かかる上、月に5万円を支払い続けなければならないからだ



「何故速度制限解除免許を持ってるのか甚だ疑問だけどね」


「仕事で使うからな。各班1人は持ってるぞ。ちなみに会社が交通費として払うと税金控除対象になる」


「通勤費扱いなんだね…。だから静岡本社にちょくちょく通いで名古屋の人とかいるんだ?」


「そういうことだ。毎日時速200キロできてるアホもいるし、逆に速度制限解除持ってても黒鉄やら俺みたいに地元住みもいる」



速度制限解除をした場合、購入した車両やナンバーを記録される

その上、ナンバープレートの色が黒に白字という他にない色となるため、金銭的な余裕を見せつけるような形になってしまうのがネックだ



「さて…。飯にするか」



夜斗はようやく、冷蔵庫を開けて調理に取り掛かった

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