第25話
夕方。夜斗と奏音は、九州支社の面々を待っていた
「時間通りにすら来ねぇ」
「そうなのよね…。もう18時半よ?予定から30分遅れてるわ」
暇じゃないのに、と呟くと同時に支社長が奏音の肩に手を置こうと背後から忍び寄った
「遅いな、九州支社長」
「しゃ、社長!?お、お疲れ様です!」
「そっち2人は…副支社長と秘書か」
「お疲れ様です」「お疲れ様」
秘書は達也の親戚だ
親戚とはいえ、血の濃さでいえば遠すぎるのだが
「久しぶりだな、アイリス」
「久しぶりだね、夜斗。元気?」
「まぁまぁだな」
「な、なんて口の聞き方をするんだ!社長に向かって!」
「構わん。そいつは俺の元カノだ」
「…え…?」
「なんか不都合か?」
「い、いえ!そんな滅相もない!」
「奏音も久しぶり!夜斗の隣で仕事できるの羨ましいよ」
「ふふっ、相変わらずねアイリス」
金髪ロングの少女が、夜斗の腕に絡みついた
そして支社長と副支社長を置き去りにして3人で飲み屋に入っていく
「アイリス。お前と奏音の分は社長財布からの奢りだ」
「ほんとに!?やったワイン頼んじゃお」
「ボジョレーヌーボーでも頼むか」
数分後に入ってきた支社長と副支社長にある程度酒が入ったのを見計らって、奏音とアイリスは個室を出た
夜斗も少し席を外すと伝えて個室を出る
「…アイリス、報告を」
「…夜斗。ごめんね…。あそこで、働きたくないの…!」
「ど、どうしたのよ!?」
「支社長に…夜這いを求められてて…!夜斗を好きなのに…!」
「どさくさに紛れて告白すんな。もっとまともなときにしろや。支社長はクビが決まってるぞ?」
「…あの支社、おかしいよ。みんな、私を襲おうとするの…」
「…支社に女をおくのはやめだな。奏音、全員呼び戻すぞ」
「人員が足りなくなるわ」
「保護するためには仕方ない。と言いたいところだがその通りなんだよなぁ」
夜斗は頭を悩ませた
とりあえず席に戻るため、店に戻る3人
アイリスは腫れた目を隠すため、少しうつむきがちに戻った
「支社長。秘書を本社に戻す。代わりを派遣しよう。より仕事ができるぞ」
「了解いたしましたしゃちょ〜」
「録音完了。さて、俺は仕事があるから帰る。3人分金おいてくから、お前らは飲むなり帰るなり好きにしろ」
夜斗は奏音とアイリスを連れて外に出た
3人とも飲酒はしていない。しかし、気分的な問題で歩いて帰ることにした
車はあとから取りに来るつもりなのだ
「…とりあえずアイリス、奏音の部屋に泊まれ。明日は夜架の誕生日だし、俺お前奏音瑠璃夜暮冥賀霊斗天音で祝うぞ」
「…多くない?広い場所あるの?」
「社員ホール」
「あったねそういえば」
事務所の地下にあるそのスペースは、会社の催し物によく使われる場所だ
しかしそれ以外はほとんど使われないため、夜斗はほとんど私物化している
パーティで使う、などというのは可愛いもので、時としてサバイバルゲームの会場にさえなるのだ
「あの広さだともっと人呼べるな。黒鉄たちも呼ぶか」
「後輩ちゃんも呼んだらいいんじゃないかしら。1個下だから仕事かしらね」
「鏡花と美羽はまだ大学生だ。あと真夜と雪菜も呼ぶか。ついでに真由美も」
「大人数になるね。食事とかの手配とかしてる?」
「飯は瑠璃の父親がなんか送るから希望よこせって言ってきたから、今からメールする」
「間に合うかしら…」
「あの人なら間に合わせるさ。どうせやるのは午後からだ」
夜斗は電柱の影から3人を見つめる人影に気づきながらも、あえてスルーした
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