第23話
探偵社事務所に到着した夜斗は、うつむいた雪菜を連れて応接室に来ていた
そこには雪菜の母親が待ち構えている
「連れ戻しましたよ、お母さん」
「雪菜!どこ行ってたの!」
「………」
「さて、と。本題はここからですよ。
「こちらに、主様」
背後に現れた夜架が、夜斗に書類を手渡した
そして端末のボタンを押し込む
「さて、これは我々が調査した報告書になります」
「え…?いらないですよ」
「いやいや、これから必要になるんですよ。犯罪者を起訴するために、ね」
夜斗はそういって応接室に備え付けられているテレビの画面を示した
「では神崎さん。いえ、神崎容疑者。まずお聞きしましょう、虐待を認めますか?」
「っ――!な、なんのことですか?」
「ああまぁ認めないか。じゃあ、証明を始めよう。夜架」
「はい。容疑者は7年前に雪菜さんを施設から養子として引き取り、5年ほど前に当時の夫と離婚。美羽さんの親権を勝ち取り、東京に引っ越しましたわ」
「…どこでそれを」
「そして三島市の現在の住居に引っ越しましたわ。周辺住民によると、その頃から雪菜さんの悲鳴らしきものと容疑者の怒号が響いていたと」
「ぶっちゃけここまでで虐待は立証できる。が」
「雪菜さんの体を調べたところ、数箇所で骨折の跡がありましたわ。治療はなかったようで、普通には治らず現在も普通には歩けませんわ。それはお間違いありませんわね、雪菜さん?」
「は、はい…。2年前、かな…。それくらいから、あるきづらくて…」
夜斗はその話を聞き、調べておいた雪菜の友人から聞いたものとの差異がないことを確認した
「その後、容疑者は雪菜さんを風俗店に売り払うためにあらゆる夜の店を訪れましたわ。それは監視カメラから確認済みですわね。そして売買契約が成り立つ寸前に、雪菜さんは家を抜け出すことに成功しましたの。それから一週間後、容疑者は自宅に帰宅し雪菜さんの脱走に気づき、ようやく捜索願を出した…というのが経緯ですわ」
夜架は軽蔑するような目で、雪菜の母親を見た
そして報告書を手に、夜斗は少し笑う
「さて、証拠十分であるため、身柄を拘束・裁判所への輸送を行う。まぁ弁明があるなら聞いとくか」
「…あ…あれは虐待じゃなくて…」
「教育とでも言う気か?」
「…!そう、教育!悪いことをしたら怒るのが親の努めでしょ!?」
「悪いこと、ねぇ…。あんたが落としたのに雪菜が皿を割ったと父親に言い、わざと皿の破片の上に雪菜を叩きつけることが教育?面白いことを言うな」
「っ…!なんで、それを…!」
「現代の医学であれば、傷跡からどれほどの傷を何で負ったのかまでわかる」
夜斗はそう言って厚めの本をバタンッと閉じた
「証明終了。根源解決」
夜斗と夜架は、雪菜を連れて部屋を出た
入れ替わるようにして、黒いスーツにサングラスをつけた冥賀・夜暮が部屋に入っていった
「さて、我が夏目探偵社にようこそ」
「…え?」
「ここでバイトをすると、学費免除かつ全寮制だから稼いだ金を全て使えるという最高峰待遇だ」
「…ここは、虐待保護施設を兼務していますわ。ただし、それだけでは学費免除とはなりませんの。虐待を受けていた子が勤務することにより、当社は国より補助金を受けますわ。それを全て学費に充てることで、大学を卒業するまで学費免除が可能ですわ。その後は正社員登用を利用するもよし、辞めて好きな会社に就職するもよし、ですの」
言葉足らずな夜斗に代わり夜架が説明する
夜架はほほえみながら、右手を差し出した
そして夜斗も、フッと笑い左手を差し出す
「この手を取るか払うかはお前次第だ。施設に行くと言うなら送ってやる。うちに入るなら、寮に連れて行こう」
「…よろしく、お願いします…!」
雪菜は涙目ながらも、笑って2人の手をとった
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます