番外編(後輩と買い物)
「先輩から買い物行こうと誘って来たことは嬉しかったのですが……、なんでここなんですか?」
「陽姫が家に住むことになったからね、必要だと思って。」
「私は別にこんなの必要ないんですけど……」
「俺が必要なの。」
俺たちは今、大きなショッピングモールで風呂に付ける鍵を見ていた。
これをつけないと陽姫が突入してこようとするからだ。陽姫がうちで暮らすようになり三日が経つがよくもまぁ毎日毎日飽きずに風呂に侵入しようとしてくる。
そしてついに昨日、最後の砦であるつっかえ棒ですらも折れてしまったので新しく鍵を買いに来た次第だ。
「先輩、歩くの早いですよ。私もう疲れました。どこかで休憩しませんか?」
まったく誰のせいで休日だと言うのに買い物に来たと思ってるんだよ。
だが、一時間近く歩き回ってるせいで俺も少し疲れたな。
少し早いけどお昼にするか。
「陽姫、早いけど昼ごはん食べようか。何がいい?」
「私、なんでもいいですよ?」
でた、なんでもいいが一番困るんだよなー。
男子諸君には覚えておいて惜しいのだがここで言う女性のなんでも良いは、「私が何食べたいか当ててみて?」と言う意味合いが込められていることを。
この問に対してマックなどと答えたら即刻破局だろう。ここは無難にイタリアンか中華料理で行くのがいい。
「イタリアンと中華料理どっち食べたい?」
「あー、先輩、私マック食べたくなってき…た……んですけど。なんでそんな微妙な顔してるんですか?もしかしてそんなにイタリアン食べたかったんですか?」
こっちの気遣いを返して欲しい。
だが、これからはそんなに気を使う必要もなさそうだし金銭的にもマックなら余裕を持って好きなの選べるからマックでいっか。
「いいや、俺もマックで食べたかったんだ。新発売のシェイクが美味しそうだしね。」
「あ!それ私も飲みたかったんです!違う味買って飲み合いっこしましょう!!」
「しないよ?」
「ええー、しましょうよ、せんぱいー。」
「ったく、そんな目で見てもダメです。さっさとしないと置いていくよ?」
「ああーん、待ってくださいよぉー!!」
で、昼食を終えてまた鍵探しに戻るのだが……
「先輩!!あれ!あれ可愛くないですか!?」
「先輩!!クレープですよ!!食べていきましょう!!」
「もう疲れたのでそろそろ帰らりませんか?」
と、こんな感じで鍵探しの邪魔をしようとしてくる。
「何をたくらんでるの?」
「やだなぁ先輩、何もたくらんでるわけないじゃないですかぁ!!」
目をガッツリ斜め下に逸らし脂汗を垂らす陽姫。もうこれわざとやってるようにしか見えない。
「そういや今日、陽姫が楽しみにしていた映画があったような……、ぶっちゃけ前の体勢で見せてあげようと思ったけど、正直じゃない人にはやんなくていっか……。」
「鍵探しの邪魔をして今夜こそ先輩の風呂に乱入しようとしてましたぁ!!!!」
「手がネジ切れんばかりの手のひら返しをありがとう。
すみません!店員さん!この店で一番セキュリティの高い鍵をください!!」
「ああぁぁー……私の願望がぁぁ……。」
「よし、今日はいい買い物が出来た!
って、陽姫大丈夫?なんでそんな死んだ目をしてるの?」
「先輩の裸……、肉体美……、大胸筋……、シックスパック……。ひぐっ、うっ、うっ、」
突如泣き始めた陽姫、そして女の子を泣かせたように周りから見られてる俺!どう見てもヤバイ絵面にしか見えないよな……。
機嫌をとるのは調子に乗るからなるべく避けたかったが、しょうがないか。
「あー、陽姫?風呂はな?流石にダメだと思ったからで、それ以外はどんだけだって甘えてもいいんだよ?ほら、さっき言ったやつ。映画見ながら頭とか撫でてあげるから、ね?だから泣きやもう?」
「……、本当ですか?」
「うん!本当だよ、風呂以外ならいつでも甘えておっと……」
急に陽姫が俺の胸に飛び込んでくる。
確かに風呂以外ならどこでもとは言ったけど!
今ここでとは思わないじゃん!?ちょ、周りの目が痛いんですけど!?
「おーい、陽姫?そういうことは家に帰ってからにしようね?」
「いや」
「ほんとに離れてくれないと動けないんだけど?」
「いやです。先輩は卑怯です。」
「え?」
「だって、
「な、何が?」
と、陽姫が俺の胸から顔を上げて言った
「もういいです」
「ん?」
「今日は、いえ、これからは覚悟しといてください!!これでもかってぐらい先輩に甘えて見せますので!!」
うん、めっちゃ胸張って指をこっちにズビシッ!って向けてるけど、別に自慢することじゃなくね?
そう、つっ込む間もなく陽姫は歩き出してしまったので「お、おう頑張って……」と言うことしか出来なかった……。
この後陽姫の宣言どうりめちゃくちゃ甘えてられて結局、鍵をつけることなく風呂への侵入を、許してしまったのはまた別の話だ。
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