後輩の家のファミリーカースト
現在、俺は自宅にて昨日の残りのカレーの残りを温めながらため息をついていた。
ちなみに陽姫は家族と和解?出来たみたいでそのまま一緒に帰って行った。
アイツの居ない部屋がこんなに静かだったとはな……。
今まで1人で暮らしてきた部屋が今日は余計に寂しく感じられた。
結局、話し合いの後は日々樹さんが眠ったあとただの恋バナのような雰囲気になり、英美里さんが大声ではしゃぎまくったせいで店員に怒られ、そのままお開きになったのだ。
全く、大の大人が怒られるってどういうことだよ、と思ったがそもそも原因は俺たちにあったので何も言わなかった。
ほんとに大変だったなー……、今日だけで一生分の精神力を使ったんじゃないかと思えるほどだ。
と、カレーの鍋に火を付けっぱなしだったことに気付き温まったカレーを皿に盛っていると、
ピンポーン♪
玄関のチャイムがなった。
なんだ?新聞の勧誘か?居留守を使おう。今日はアイツらとやり合う気分じゃないや。
ピンポーン♪
ピンポーン♪
ピンポーン♪
……、こんなにしつこいのは初めてだ。なんだろう。俺がいることを確信しているようなチャイムの鳴らし方……、いやいや、違うだろ、陽姫は家族と帰ったし、多分違うと─────、
「先輩ー!!!なんで出てこないんですかぁ!!」
「なんで君は勝手に入ってきてるかな!?」
「先輩が居留守使うのが悪いんじゃないですか!!!」
「……ぐっ!」
そこには大きめのキャリーバッグとボストンバッグを持った陽姫がいた。
「どうしたの?そのカバン。旅行にでも行くの?」
「いえいえ、お泊まりですよ?先輩の家に泊まりに来ました!ってか住みに来ました!!」
「は?」
「だから!一緒に暮らすことになったって言ってるんですよ!!」
ダメだ……、理解したくても頭が理解しようとしてくれない。
「ちょっと言ってることが分からな過ぎるから待ってて……。」
確かこの辺に、お、あったあった。
俺はポケットの中に入れていた名刺を取り出しそこ示されている電話番号にケータイで電話をかける。
運良く数コールで繋がったのはマジで有難かった。
『もしもし、水面です。』
「もしもし、俺です。陽太です。」
『ふむ、どうしたのかね?』
「いや、どうしたのかね?じゃないんですよ?なんで陽姫が家にきてるんです?」
俺は疑問をそのままぶつけることにした。
このおっさんに建前は不要だ。
『時に陽太君。君はファミリーカーストと言うものを知っているかね?』
「いえ、聞いたこともないですが、大体想像できます。」
『うむ、まぁ簡単に言うと家庭内の順位のことだが、自慢じゃないが私はこのカーストで水面家の最底辺にいる。』
「ほんとに自慢じゃないですね。なんでそんなに堂々としていられるんですか?」
『弱者の余裕さ』
「こっちから掛けててなんですが、切っていいですか?電話」
『まぁ待ちたまえ、今説明するから』
できることなら最初から説明して欲しかった。
『これはさっきのファミリーカーストの話しにも通ずるのだがね?陽姫が君の家で一緒に暮したいと言ったんだ』
俺は無言で陽姫を睨む。
『そしたらな、英美里が陽姫の恋を応援したいとか良く分からん理由で許可をだしたのでな……、いたっ!や、やめて!!英美里さん!叩くのはイクナイ!!後でプリン買って来るのでちょっと待って!今、大事な話ししてるんだって!悪かったって!!私が悪かったから!もう英美里さんの悪口言わないから許して!!
え?うん、わかった駅前の限定カスタードプリンね、わかった、買ってくるから……』
「威厳もクソもありませんね」
『煽ってるのかね?その喧嘩買おうじゃないか、いくらだい?』
「す、すみません……」
いかんいかん、俺としたことが、お茶目な一面がここで出てしまうとは……。
『で、話を戻すが正直私は反対だ。しかし娘のこともちゃんと応援してやりたい気持ちもある。何より、さっきの話し合いでわかったが君は悪い人間ではなさそうだ。よって、君に娘を任せようと思う。』
「任されても困ります」
『なんだね?私の娘が迷惑だと?』
「べ、別にそういう訳じゃ……」
『じゃ、決まりだ。娘を頼んだぞ。じゃないと私の人権が危ういのでな。
あ、分かってると思うけど娘に手を出したらただじゃおか──────』
これ以上ごちゃごちゃ言われると携帯を握りつぶしてしまいそうだったので電話を切ることにした。
で、こっちにも話聞かないといけないよな、と机に二人分のカレーを置き、いつの間に作ったのかサラダとスープまで用意している始末だ。
「陽姫?これどういうこと?」
「えーっと、なんか先輩の家にまた泊まりに行きたいなー、って言ったらお母さんが是非住み込みで奉仕してきなさいって言って、その間に百合姉がこの荷物を準備してて、なんかわけが分からないうちに家から追い出されたので先輩の家に来ちゃいました!!」
「……、はぁ」
「あ、せんぱーい、ため息つくと幸せが逃げて行きますよ?」
「陽姫は幸せそうでいいね」
「ま、理由はどうあれ先輩の家で暮らせるので幸せですよ?もう死んでも未練もないくらいです。」
「そっか、ご飯、食べよっか……。」
「はい!って先輩、元気ないですね?大丈夫ですか?」
「あぁ、大丈夫、大丈夫だよ……」
ならよかったです!と満天の笑顔を向けてくる陽姫。その顔を見ていると、ふと家に帰った時の寂しいと思った瞬間を思い出し自然と俺の口からも笑みがこぼれる。
「ああ、そういう事か。」
「ほうひはんへふは?」
「飲み込んでからしゃべろうね?」
「んぐ、どうしたんですか?」
「なんでもないよ、それじゃ頂きます!」
「はい!ターンと食べてください!!」
俺たちは会ってまだ二日だが、どうやら陽姫は俺にとっても大事な存在になりつつあるらしい。寂しさの正体が分かってまた頬が上にあがり、陽姫がまた笑ってると、不思議そうにしてるが、この事は俺の胸の中だけに留めておこう。
だって知られたら絶対調子乗るしね。
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