後輩のパパのターン

誤魔化せたかと思ったのだが、どうやらまだ話は続くらしい。

本当に帰りたいんだけどな。


「すみません。何ですか?」

「うむ、君にはいくつか聞きたいことがあってだな。だが、その前に礼を言おう。うちの娘が大変世話になった。そして何より、早とちりではあるが、命まで助けて貰って本当にありがとう。」

「あ、頭を上げてください!!俺も助けて貰ってますし。夕食まで作って貰って、むしろ世話になったのは俺のほうなんですから!!」

「そ、それは本当かい?」


お?どうやらようやく下げた頭を戻してくれるようだ。分かってくれて良かった。


「本当に娘の手料理を食べたのか?」


ん?何やらものすごく黒いオーラが立ち上りはじめたぞ?え?俺なんか言ったっけ?


「聞いているのか?」

「あなた、失礼!!」


と、英美里さんが日々樹さんの後頭部に手刀を振り下ろす。


「本当にごめんねー?うちの主人、興奮すると手がつけられなくなるから、早いうちに寝てもらったわ」


なんて、恐ろしいことを!!ニコニコ喋る英美里さんの横では白目を向いて上を向いている。

息はしているんだろうか。心配になってくる。


「それで、二人は付き合ってるのかしら?」

「いえ、付き合ってないです。」

「うん!先輩と私はラブラブだよ!」


二人同時に、違うことを言った気がするが、聞き間違いだろうか?


「陽姫?俺たちって恋人じゃないよね?」

「いえいえ、あんだけのことをやっといて恋人じゃないんですか?」

「あらあらー!」


何やら大興奮の英美里さん。


「じゃあ、先輩は私のこと遊びだったって言うんですね!?」

「そんな誤解を招くようなことはしてないよね!?」

「へぇー?抱き締めたり頭の上に顎を置いたり耳元で囁いたりするのは恋人のするようなことじゃないって言うんですか!?」

「くっ……!」


そんなことしてないっ!って言えればいいんだけど、やっちゃったからなー。


「えっ、えっと、それは……、気の迷いって言いますか……、恥ずかしがる陽姫を見て調子に乗っちゃったって言いますか……すみませんでした!!」


言い訳しようとしたがまともな言い訳が思い浮かばず、結局土下座することでしかこの場を切り抜けられない。ん?プライド?そんなもんどっかに落として来ちゃったよ。


「先輩、それでいいんですか?」

「あらあら、根付君そんなんじゃ陽姫を任せられないわよ?」

「いえ、別に任されても面倒見ませんよ。あと陽姫、俺の土下座でそんなにドン引かないでくれる?」


ま、冗談はさておきだ。


「お宅の娘さんを連絡もせずに家に泊まらせてしまったこと。自分が軽率でした。それはほんとにすみませんでした。」

「え!?先輩!そんな辞めてくださいって!急に押しかけたのは私なんですから!!」

「相思相愛……。」

「ちょっとお姉さん?ここぞとばかりに口を挟まないでくださいません?」

「……、」


お姉さんはまた無言でケータイを弄りだす。

なんだこの家族は!?キャラ濃ゆ過ぎじゃあないか!!

本当にできることなら誰かここから助け出してくれ……。まぁ、他の人もこんなところに来たいとは思わないだろうがな!!


なんてことを考えて、現実逃避をする五月末の放課後だった。

はぁ、これから一体どうなるんだろう……。

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