後輩と中庭
「えっと、なんでそうなるの?話しが見えないんだけど。」
いきなり両親にあって欲しいと言われた俺は混乱したまま思ったことを聞いた。
「昨日、姉と電話した時に両親と話し合えって言われて、で、今日話すって言ってしまったんですよ。両親も仕事を休んでるって姉から連絡ありましたし、このまま行かない訳にも行かないじゃないですか」
「確かにそれはそうだけど……、なんで俺までついて行くの?」
「寂しいじゃないですか。一緒について来てくださいよ。一緒生きるって言ってくれたじゃないですか」
「それはそうなんだけど……。はぁ、分かった。一緒に行くよ」
「それでこそ先輩です!でもいきなり一緒に行くと親もびっくりしちゃうので呼ぶまで近くの席で待機でお願いします」
「うん、分かった」
親のためとは言っているが、どうやら俺にも気を使ってくれているらしい。
不承不承だが俺も了承した。今日の放課後はなんとも面倒なことになりそうだな。
まぁ昨日の段階で死んでしまってたらこんな面白い後輩と過ごすことは出来なかったし、今は感謝してる。後はこの思いをどう伝えるかだが……、もう予鈴もなる時間だし調度いいか。
「じぁ、後はLINEで場所とか伝えてくれる?」
「あ、わっかりましたー!
はぁ、楽しい楽しい先輩との時間も終わりかぁ
しょうがないですよね。じゃ、先輩、午後も頑張って下さい!」
と、陽姫は心無しか寂しそうに午後も頑張れと言ってくれる。
「じゃあ、陽姫も頑張ってね」
俺は陽姫の頭をポンポンし、その後クシクシと撫でてやる。
「せ、先輩?」
「ん?なーに?」
「い、いえ、出来ればこのまましばらく撫でて下さい」
「ん、」
しばらく頭を撫で続けていると、陽姫は気持ち良さそうに目を細めている。
なんか前から思っていたが猫みたいなやつだな。
天真爛漫なところとか、自由気ままなところとかがそっくりだ。
昼下がりの中庭でゆったりとした時間が流れる。
このまま永遠に続くのではないか、と思われる時間にも終わりが来たらしい。
掃除前の予鈴が学校中に鳴り響く。
「それじゃ、俺は教室掃除だから戻るね?」
「……、」
「……?」
何も言わない陽姫を不思議に思い、顔を覗き込んで見ると、なんとも無垢な顔で眠りに落ちていた。
そうだよな、陽姫も不安なはずだもんな。なのに平気なフリして俺に接してくるし、無邪気に絡んでくる。
だけど、やっぱり不安が大きいから俺に着いてきてくれと頼むのだろう。
一緒に生きると言ったのだから、それくらいのことはしないとだよな。
まぁ、今は陽姫を起こすのが先決か。
「陽姫!陽姫起きて!」
「……、むぅ?しぇんぱ〜い?」
「やっと起きた。あと少しで掃除の時間だよ」
「私、寝てたんですか?」
どうやら、自分が寝たのも気づかなかったらしい。
「ああ、ぐっすりだったよ昨夜寝れなかったの?」
「いえ、気づいたら寝てましたけど……、」
あ、そうだった。確か陽姫が可愛い反応するからつい攻めるのが楽しくなっちゃったんだよなー。我ながら自分の性格はサドスティックな一面があったらしい。初めて知ったけどね。
「もぅ、先輩ったら私をリラックスさせるプロですか!?私をどこまで落とせば気が済むんですか!?」
気がつけばいつもの様子だ。案外寝起きはいい方らしいな。
「そんなプロ聞いた事もないし、あっても正直なりたくないね。てか掃除の時間だよ?いいの?」
「ツンデレですね?そんな先輩も好きですよ?ぶっちゃけ掃除はもう間に合わなそうなんでヤバいですけど、ちかい近いうちにうちにツンデレをデレデレにしてやりますからね!?それじゃまた、放課後に!!」
と、陽姫は走り去っていった。
うん、なんだ、好きとか面と向かって言われるとやっぱり照れるもんだな。何回目かでも慣れないものは慣れない。
リア充なら「俺もだよ」とか言えるんだろうけど、あいにく小中学校は虐められてばかりだから、絶賛ぼっち中だ。
陽姫にはからかってくるか、心配させるからどっちにしても言えないがな。
なんて考えてながら教室に向かった。
教室に入ると、誰かが話し掛けてくる。
こんな珍しいこともあるもんだ。俺が話し掛けられる時は決まって委員会の仕事か、授業で当てられて先生と言葉を交わすくらいのもんだ。
回想してて悲しくなってきたからやめよ。
それにしてもなんの用だ?
「根付って一年の水面ちゃんと知り合いだったの?」
水面って確か陽姫の苗字だったよな?
「まぁ、知り合いっちゃ知り合い、かな?」
「なんで僕に聞くんだい?一緒に昼飯食べるくらいだから知り合いだろう?いいや、聞き方を間違えたね。付き合っているのかい?」
うむ、これは難しい判断だ。一度、陽姫ともハッキリさせておきたいが一緒に生きるとは言った、確かに言ったぞ?だからって恋人になるとは限らないだろ?
でも一緒に生きるってある意味プロポーズみたいなもんだよな。
だが、現状俺は好感は持っているが恋愛感情はない。
結論、恋人ではない。ってことでいいかな?
「恋人ではないよ。たぶん」
「そっかそれならいいんだ。もし陽姫が特定の誰かのものになると今まで振られてきたやつらが浮かばれないからな。」
自分で有名だとは言っていたが……、一体どんなことしたの?陽姫。お兄さん教えて欲しいや。
「ま、そういうことだから」
「いや、どういうこと?」
「あんまりやり過ぎると水面ちゃんに振られた奴らに後ろから刺されても知らないよってこと。」
「ソッカー、チュウイシトクヨー」
「うむ、カタコトなのが気に触るけどいいや、じゃあね」
と、名も知らぬクラスメイトの彼はどこかへ歩き去って行った。
あいつ、教室掃除で見たことある奴だった。ちゃっかり逃げやがったな……。
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