後輩と朝チュン

明け方、雀の声と顔に当たる微かな風を感じ意識が覚醒する。窓は閉めて寝たと思うんだけど開いていたのだろうか。

時間を確認して余裕があればもう一眠りしよう。

そう思い、手探りでスマホを探すと何か柔らかいものに手が当たる。何かソフトボール位の大きさクッションみたいだが何か分からない。

こんな物家にあったっけ?

そう思い目を開けると、目の前に眠っている陽姫の顔があった。

おお、まつ毛長ぇ……。

じゃなかった!なんでこいつがこんな所に?

確か、昨日は俺の布団に寝したはずなんだけどな。それとさっきから気になっているのは俺の右手に収まっているソフトボールサイズのクッションだ妙にやわっこいこれはなんだ?

恐る恐る右手の位置に目をやると……、だいたい察しはついていたが、陽姫が俺の正面に寝ている時点でもしかしたらとは思っていだが……。

女の子のアレがこんなに柔らかいとは思ってなかった。朝からご馳走さまでした。


俺はしばらくソフトボールの感触を楽しもうかと思ったが、あんまやるとバレた時が怖い……、

いや、陽姫なら許してくれそうだが、その後がめんどくさいだろーな。

絶対にニヤニヤしながら「先輩も触りたいなら言えばいいじゃないですか〜、私はいつでもOKですよ?」とか言ってきそう。もちろん俺も普通に男子高校生な訳で、ちゃんと性欲もそういう知識もないではないのだが……。やはり陽姫の好意に甘えるのは良くないと思う。陽姫が俺を慕っているのは一目瞭然だが俺はあいつのために生きていこうと思っただけで恋愛的に好きな訳ではない。

そういうのをするのは好きになった相手とだけって決めている。


と、いうことで今回はたわわを楽しまずに陽姫を起こさないように起き上がり朝ごはんの用意をする。

用意って言ってもインスタント味噌汁と白ご飯、漬物ぐらいだけどね。

あ、そういえば昨日、夕飯の買い物と一緒にししゃもを買ったのを思い出した。それも焼いておくか。


俺がフライパンでししゃもを焼いていると後ろから声をかけられる。


「おはようございましゅ、先輩。」

「おはよう陽姫、学校行くから顔とか洗っておいで。寝癖も着いてるよ」

「むー、先輩はおかんですか……」


誰がおかんだ!

陽姫は眠いのか、昨日のような元気はない。

ま、そのうち昨日の調子に戻るだろ。


朝食を食べ終え、学校に行く準備を済ませ登校。案の定この頃には陽姫の調子は戻っていた。


「先輩!手繋ぎません?」

「嫌だ」

「んー?倦怠期ですか?」

「倦怠期も何も付き合ってもないじゃん」

「ひどい!ひどいです先輩!昨日私を泊めてくれたのに!抱き締めてくれたのに!!あれで付き合ってないって言うんですか!私は遊びだったんですね!?」

「ちょ、朝っぱらから騒がないで?近所迷惑だし周りの人の目が痛いや」

「じゃあ、認めちゃえばいいのに」

「君、出会って一日も立ってないのに付き合うとか正気?」

「そうですか?もうそろそろ1週間くらいに経つと思ってたんですけどねー」

「作者軸で時間語るのやめろ!!」


なんてなんでもない会話をしながら学校に行くのも案外楽しいと思える。

と、陽姫が唐突に


「そういえば先輩!朝、バストアップマッサージの夢見たんですよー!」


地雷を踏み抜いた。


「なんていうかー、すっごい優しい手つきで、気持ち良かったです!あれ?先輩?なんでむせてるんですか?大丈夫ですか!?先輩!?ほら!お水飲んでください!!」

「ゴホッ...ヴ...ゲホッゴホッゴホッ...あ、ありがとう」

「いきなりどうしたんですか?何かあったんですか?」

「いや、なんにもない。ちょっとむせただけ」

「もー、心配させないでくださいよー?」


陽姫は本当に心配したようにいう。

っていうか今ので思い出した。


「そういえばなんで朝ソファーで寝てたの?」

「あ、あれですかー……」


途端に歯切れが悪くなったなおい、


「いやー、朝方トイレに起きたんですけど……、その、先輩の寝顔見てたら可愛いなーって思って、つい正面に寝たくなってしまって……。べ!別に寝ぼけて抱きついてくれないかなー、とか寝てる間にキスしようかな、とか思ったわけじゃないですからね!?」


面白い勢いで自爆していく陽姫、キスがどうのこうのって少し問い詰めたかったが今それを問い詰めると俺も自爆してしまう可能性があるので不問としよう。


そろそろ学校に着く、家からずっと距離の近い陽姫もここまで来ると学校の連中の目が気になるのか少しだけ離れて歩いてる。


「やっぱり陽姫でも周りの目を気にするんだね」

「なんですか?その言い方。まるで私が周りの目を気にしていないみたいな言い方じゃないですか」

「あはは、ごめんて」

「ていうかいきなりどうしたんです?」

「いやー、さっきから少し離れてるじゃない」

「ああー、寂しいんですか?」

「いや、断じてちがうぞ?」

「なんか面と向かってちがうって言われると腹立ちますけど……。まぁいいや、私って可愛いじゃないですか?」


自分で言うか?と再び思うが陽姫は続ける。


「で、その可愛い私が一人の男の子と歩いてたらどうなります?」

「わかんないな」

「先輩に興味を持つ女の子が現れるかもしれないじゃないですか!」

「え?そうなの?」

「はい!女の子っていうのは恋愛に彼氏彼女がいるとか関係ないんですからね?好きになれば奪い取ろうとするし隙を見せたら先輩を取られるんじゃないかと気が気でありません!全く!」

「なんで俺が怒られてるの?ってか俺モテないよ?」


そう、俺は生まれてこの方モテたことがない。

施設の子達はよく慕ってくれたがそれは恋愛感情とはまた別だろう。


「今は、です。これから先輩には私という美少女に気にかけてもらってるっていうブランドがつくんですよ?それに先輩って髪型さえ変えれば相当イケメンなんですよ?今まで周りの女の子が気づかなかったのが不思議なくらい」


いらんがな、そんなブランド……。

ってか生きてた中でイケメンとか初めて言われた気がする。


「ふーん、俺、イケメンだったのか」

「だからって調子に乗らないで下さいね?私が先輩のことを好きなのは顔がいいからじゃなくて優しくしてくれたからなんですよ?」

「ああ、ははは、その……、」

「もう、何照れてるんですか?行きますよ?」


と陽姫は俺に笑いかける。その笑顔はとても眩しく数秒、見とれてしまうほどだった。

そりゃ面と向かって好きとか言われたら照れるだろ……、なんていうか、凄い嬉しい。


「んじゃ!先輩!私教室こっちなんで行きますねー!またお昼に!!」

「え?あ、ああ!っておい、誰も昼会うとは言ってないよ!?」

「いいじゃないですか!!食堂に来ないなら教室にいきますからね!?逃げたって無駄ですよ?校内放送かけますので!恥をかきたくなければ大人しく従ってください!!」


といって、下駄箱から一年の教室がある棟に走っていった。なんて言うか、さっきの眩しい笑顔とは違い悪魔のような顔をしていた。逆らったら本当に校内放送をされそうだ。ここは大人しく校外に出て公園ででも食べるか……。

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