第24話白虎隊

しばらくして、涼太は白虎隊の元にやってきた。


 百人屋敷は活気があふれており、鴉隊の屋敷とは雲泥の差だった。


「よく来たな」


 宗雪に出迎えられた涼太は、そこで白虎隊がどのようなことをやっているのかを学んだ。新人は雑用と訓練を行っているらしい。雑用だけやっている涼太とは全然違う生活であった。羨ましいとまでは思わないが「普通」とはこういうことなのか感心はする。


「とりあえず、鬼が出るまでは警備や訓練をやっていてくれ。小隊長に話は通しておく」


 話を聞きながら、小隊長というのもいるのかと涼太は感心した。


 百人も部下もいるのだからあたりまえなのかもしれないが。


「小隊長の志摩だ。以後は彼の指示にしたがってくれ」


 宗雪が紹介した志摩は、涼太よりも少しばかり年上の男だった。この年齢で小隊長なので、かなりの出世株なのであろう。


「鴉隊長のところにいた……涼太か」


 志摩は、静かに涼太の手を掴んだ。


 気のせいか、手を握る手が力強いようなきがする。


「鴉隊長のことを教えてくれ。俺、憧れてるんだ!!」


 志摩は眼をキラキラさせていた。


 どうやら、本当に志摩は鴉に憧れているらしい。


 涼太は少し驚いた。なにせ、ここまで鴉に憧れている人間を初めてみたのだ。涼太も少しは憧れているが、志摩ほどではない。おそらくは鴉のダメなところもたくさん知っているからだろう。


「あの人って、跳んで跳ねたりすごいだろ。どうやって、やってるんだ。一緒にいたってことは、やり方も学んでるよな」


 志摩の目は、相変わらず目をきらきらさせていた。


 鴉から鬼の退治方法を学んでいるだろうと言いたげだった。残念ながら、涼太は鴉から何も学んでいない。


「やり方もなにも隊長は、普通に飛んだり跳ねたりしているだけなので……」


 コツも何もないだろう。


 ごく普通に飛んだり跳ねたりしているだけだ。


 ただ天性の才能があるだけだ。


「ここにいる間に鴉隊長に近づけるように訓練をしようぜ」


 志摩はそう言った。


 その言葉は、まるで子供ようだった。純粋に物事に憧れる子供。


 だが、涼太は思った。


 鴉に近づけば近づくほどに、人間を止めることになりかねないと。

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お江戸の火消し、鬼退治記録 落花生 @rakkasei

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