第25話 異世界に行く前に
工房の裏に避難しようとしていた俺の手を、シンさんがギュッと掴む。
えっ…駄目よ…俺には一生を共に生きると誓った地雷系女神様と、ロリ巨乳最上神様がいるの…。
二人のマッスルタイムには参加できない…。
「帰るぞ」
「了解です」
素早く端末を操作して、青くてゴツい扉を出すシンさん。
扉を開くと、さっさと先に行ってしまった。
さっきの雰囲気が恥ずかしかったのかな?
頭の中では存分に茶化すけど、現実では茶化したりしないのに。
まだそんな仲良くないから怖いもの。
残っててもしょうがないし、俺も行こう。
「シンさんと上手くいけばいいですね!じゃあまた!」
「ありがと、何かあったらまたおいで。シンをよろしく頼むわよ。またね、黒石君」
お互いに手を振ってお別れをする。
アリスさんの心配そうな顔を見て、少し心が痛んだ。
周りに甘えて迷惑をかけないように、頑張ろう。
扉から出たら協会の入り口近くだった。
中に入り、人のいない喫煙スペースで一服しながら話をする。
「さて、これから攻略をしに行くが、行き先は俺が決める。そして、基本的に攻略に俺は手を貸さない。危なくなったら助けるがな。普通の異世界だと攻略の役にたっていなかった者は、報酬が貰えなくなるんだ。初回クリアしか貰えない神力も、無かった事になるからな。同じ異世界を次回にちゃんとクリアしたとしても、金だけだ。神力はもう貰えない。パワーレベリングは、システムに厳しく禁止されているという事だ。意味は分かるか?」
「パワーレベリングの意味は分かりますよ。乞食とかコバンザメとも言われるやつですよね。ちゃんと自分の力で頑張るので大丈夫です。あとはシンさんのやり方に従いますんで、何でも言ってください」
「そうか、ならいい。今日教えるのは、普通の異世界攻略のやり方だけにする。あれもこれもと教えても、覚えられないだろう?ではまず、端末を出して異世界のアイコンを押せ」
「了解!」
異世界のアイコンを押すと項目が出て来た。
戦闘、その他。
基本的に戦闘は文字通り戦って攻略する異世界で、報酬で貰える神力が高いらしい。
その他は恋愛、育成、パズル等色々で攻略条件は様々。
こっちは死ぬ危険はまず無いそうだ。
報酬で貰える神力は微々たるもので、報酬はお金や素材がメインなんだとか。
恋愛や育成が攻略条件の異世界でも、クリアする為に戦闘があるなら戦闘する異世界の項目になり、貰える神力も高くなるらしい。
神力が低いうちは選べる異世界が少ないが、神力が増えれば、選べる異世界の数も増えるとのこと。
分不相応な神や使徒が絶対無理な異世界には行けないように、システムが制限しているそう。
あくまで絶対無理な異世界だけで、ほぼ無理くらいなら行く事ができるので、自分の力を過信した馬鹿がよく死ぬらしいが。
戦闘の項目を押して、表示された異世界をスクロールしていく。
制限されてんのこれ?
もう目眩がするほどズラッと、異世界の名前が並んでるんですけど…。
シンさんの指示に従いながら、検索機能を使って行く予定の異世界を選ぶ。
「この仮想戦士の世界でいいんですよね?難易度普通LV1の。…あの、大丈夫ですかね?まだ超簡単しかクリアした事ないんですけど。まさか、俺にはほぼ無理な異世界じゃないですよね、ここ?」
最初はあまり危険じゃない、無難な異世界に行くって、話し合いの時に言ってなかったっけ?
つーかLVってレベル?
超簡単にはLVすら書いてなかったんだけど。
ちなみに難易度普通LV1の報酬は1000円、超簡単の20倍だ。
報酬に神力が書いてないのは、存在が感覚的なものだからとか?
「ざっと黒石君の選べる異世界を見たが、仮想戦士の世界より難しい異世界もあったぞ。そもそも攻略課で働くなら、難易度普通LV1の異世界は全然危険じゃない。攻略条件も、敵を倒せとしか書いていないだろう。俺はどんな世界か知っているしな。黒石君なら楽勝だ、保証してやる」
「…了解。頑張りますわ、決定押しますよ。…なんか端末から鍵出て来たんですけど」
端末の画面から黒い鍵がにゅるっと出て来た。
特に変わった鍵には見えない、地球で使ってた家の鍵が少し大きくなったようなものだ。
「扉を出すイメージをしろ。もうイメージには慣れたものだろ?端末の入るを押しても扉が出るがな。扉の鍵穴にその鍵を入れて回せば、選んだ異世界に行けるようになるぞ」
サクッと地味な木の扉を出し、鍵を回す。
確かにイメージにも慣れたもんだな。
「異世界に行く前に少し説明するぞ。複数が同じ異世界に入るには、通る扉が同じでなくてはならない。例えば俺と黒石君が同時に別々の扉から仮想戦士の異世界に行く、そうすると別々の仮想戦士の世界にそれぞれ着く事になる。つまり、これから俺と黒石君が一緒に行くには、今出したその扉を一緒に通る必要があるって事だ。例外も教えておく、契約した神と使徒は別々の扉でも、選択した異世界が同じなら一緒の異世界に着く。理由は魂の繋がりがあるからだとか聞いたが…よく分からんらしい」
魂の繋がり…転送の儀式の時に感じたあれかな?
ニアと繋がってると思うと、漲ってくるね。
もっと色々なとこを繋いでいきたいですわ。
最初は手からいきますか。
最終的には勿論、あれとあれよ。
「それと注意事項だ。同じ異世界に入れる人数は最大5人。1日の上限である3回を越えた者は入れない。異世界ではショップが使えない。攻略に関係のない性行為、無駄に長く滞在する等は罰があるからな。俺が一緒にいるうちに、しっかり覚えておけ。細かい事は端末にあるヘルプで調べれば詳細がある。後でちゃんと読んでおけよ。説明はこんなところだな。何か質問はあるか?」
「気になる事はありますけど、今はいいです。後でヘルプで確認してみますよ。正直、一気に覚えようとしても無理だと思うんで。まずは異世界攻略を頑張りますよ」
ぶっちゃけ、頭がこんがらがってきた。
今はシンさんがいるし、何かあれば教えてくれるだろう。
「そうか。焦らず、1つずつ覚えていけばいい。長々とすまんな。では、攻略に行くとするか」
「了解!どんな異世界か分かりませんが、バッチリ攻略してみせますよ!」
扉の向こうへ、一歩踏み出す。
待ってろよ、仮想戦士。
ボコボコにしてやらぁ!
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