第24話 買い物3
「やる気満々ね…同僚君、武器はちゃんと装備しないと駄目よ?」
おぉ、凄くゲームっぽいぞ。
ぶきやぼうぐは もってるだけじゃ だめですよ的な。
…アリスさんがゲームの台詞をパクってふざけているのか、本気で忠告してるのかわからない。
装備って、何?
ぶきを もってるだけじゃ だめなんですか?
「端末のステータスを開け。武器を選べば手に持った武器を装備するか決めれる。装備すれば、いつでも出し入れ出来るようになるぞ。装備できるのは武器だけだし、1つしか装備できんがな」
ふざけて返事をしようか迷っていると、シンさんが装備について教えてくれた。
俺って全然端末の機能知らないね。
ビールとタバコでヒャッハーしてないで、少しは端末を確認しておけばよかった。
今日はチュートリアルの日だな。
シンさん、お手数おかけします。
言われた通り端末を開き、装備をしてみようとする。
「あれ?名前を登録してくださいって出たんですけど」
「何でもいいぞ。名前をつけなければ装備できんし、盗まれない為の防犯登録みたいなもんだと思っておけばいい。俺は単純に槍で登録してるしな。装備ができたらスキルを使うようにイメージしてみろ。出し入れ出来るようになる。出せるスペースがあればだがな」
なるほど。
名付けには結構悩むタイプなんだよな。
ああああとか適当に名付けても、感情移入できないし。
でも、筋肉カップルを待たせるのも気が引けるし、今回は適当に決める事にしよう。
大きい鉄の剣だし、単純に大鉄剣でいいや。
装備もちゃんとできたみたいだし、出し入れできるか試してみる。
武器をしまうイメージをしたら簡単にできた。
なんとなくだが、端末に収納された気がする。
空間魔法で収納しようとすれば、そっちに収納されちゃうんだろうけどね。
違いがよくわからんけど。
次は出してみるか。
「うおっ!?あぶねっ!」
出した瞬間に重さで手から離れ、地面に落ちる。
とっさに避けなければ、足に落ちて怪我をしていたかもしれない。
収納し直し、スキルを使いながら武器を出すイメージでやってみる。
無事、軽い状態で出す事に成功。
良かった、出す度に避けて拾って持つって、地味に手間だし、ちょっと恥ずかしい。
「大丈夫そうだな。では、一度ここから出て一服してから攻略しに行くか」
「了解です!アリスさん、今日はありがとうございました!今更ですが、名前は黒石幸といいます!これからよろしくお願いします!」
「はい、どうも。私はイワキ・アリスよ。ミツイ・アリスでもいいわよ?これからよろしくね。…最後に黒石君が何者なのか、教えてくれたらお姉さんは嬉しいんだけど?凄いスキル持ってそうなのに、何故か協会の受付嬢の使徒。どうみても神界に慣れてないのに黒制服で、支部長の息子のシンに面倒を見てもらってる。怪しすぎじゃないかしら?」
シンさんへのアピールはいいとして、俺はアリスさんに怪しまれていた模様。
知ってたけど。
なんなら、アリスさんの異世界に入る前に怪しい同僚君、って言われてるし。
こういう時、レイちゃんになんて言えばいいって言われてたっけ?
…ヤバい、忘れた。
プルプルでふわふわのおっぱいばかりが頭に浮かぶ。
思い出すんだ、あの時の感触を!
違う、今必要なのはおっぱいじゃないよ。
レイちゃんの顔を思い出せ!
あの時、あの柔らかい唇でなんて言っていた!?
…あの唇とキスしたんだよなぁ…グヘヘ。
…うん、駄目。
シンさんに目で助けを求める。
ため息を吐きながらも、頷いてくれた。
頼む、超兄貴!!
「アリス、黒石君達は今の神界を正すために最上神様に選ばれたのだ。詳しい事は秘密にしろと言われいる。証拠は黒石君の左手にあるブレスレットだ。俺は殺されても話さんし、もし黒石君達にちょっかいを出せば、何が起こるかわからんぞ?」
あー、確かそんな感じだったね。
そんな脅すみたいに言わなくても、レイちゃんは酷いことしないと思うけど、多分。
「冗談でも本当でも笑えない話ね…黒石君、ブレスレットを見せてくれない?」
「あっ、はい。これですね」
アリスさんに左手首の黒いブレスレットを見せる。
レイちゃんの許可がないと外せないという、愛が詰まっているブレスレットだ。
「…この形、この神力…!?…ほ、本物!?」
本物ですよー。
テンプレな感じでびっくりしてるんだろうけど。
この神力…とか言われても、わからん。
アリスさんには、不思議な神力が見えてるのかね?
てか、神力ってなんなのか、よく分かってないし。
「わかったか?あまり首を突っ込まない方がいい。話せる時がきたら話してやる。大人しくしていろ」
「…わかった、今はそれで納得しておくわ。…でも、シンは大丈夫なの…?もし、あなたが居なくなってしまったら私は…」
「…心配すんな、俺が最上神様に頼まれたのはたいしたことじゃねぇ。おめーは黙ってここで武器屋やってりゃいいんだよ。俺の槍の整備は、おめーにしか任せられねぇからな」
「シン…」
ぶっきらぼうに喋るシンさんを、潤んだ瞳で見つめるアリスさん。
二人の距離が近づいていく…。
何この雰囲気。
今にも二人でシンさんの槍の整備をおっ始めてもおかしくなさそうだ。
筋肉と筋肉のぶつかり合いは、ノーサンキューですわ。
つーか、シンさんもニアもキャラぶれすぎ。
これから三人で異世界攻略課で働くんだろうけど、俺はずっとキモウザ変態キャラでいくからな?
さて、人の恋路を邪魔するのは良くない。
恥ずかしがり屋なシンさんの為に、邪魔者は工房の裏に行って、ニアにセクハラメールでも送ろう。
お題は女武器屋の熱くなった炉と、豪槍の破壊神、とか?
…いや、もう少し考えてみよう。
二人共体力ありそうだし、時間はたっぷりありそうだしな。
足音を立てないように静かに歩き出す。
「待て!!黒石君!どこへ行く!!」
あ、バレた。
俺に気にしないでアンアンパンパンマンマンしてれば良かったのに。
「チッ、もう少しだったのに…」
アリスさん、残念でしたね。
ま、シンさんにはやる気なさそうだったし。
そのまま進んでも多分キスくらいだったんだろうけど。
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