第15話 異世界攻略、スキル検証
「そろそろいい?あたしも早くスキル試したいからさっさと行きたいんだけど。端末の使い方は長くなるし攻略した後にするから…。そんな、痛がるとは思ってなかったんだ、ゴメン」
元に戻ってしまったニアに謝られ、立ち上がる。
実は痛みはすぐに失くなっていて、地面で悶絶した振りをしながら素敵な白い生地をチラチラ観賞していたのだよ。
謝られると罪悪感が湧いてきて困るのです。
「もう大丈夫!よっしゃ、俺も無の力試したかったんだよね!んで、スキルってどうやって使うの?」
「そか、大丈夫ならいいや。じゃあスキルの使い方ね。超簡単だから安心して。まず、自分が持ってるスキルをイメージする。そうするとなんとなーくこのスキルなら今こんな事ができそう!って、イメージが湧くから後はスキル使ってこんな事するぞー、的に思いながら行動すればおけ。超簡単っしょ?まずは練習がてら、そこの潰れたキノコを空間魔法で収納しよっか。あたしの使徒になったんだから使えるはず。キノコの近くで空間魔法をイメージすれば余裕だから。やってみそ」
「ういっす!」
思ってたより簡単そうで良かった。
言われた通りキノコに近づく、キモい。
「空間魔法をイメージ…。おぉ!!なんかキノコを手で触れば収納できる気がする!!…えっ、触んのコレ?キモいんだけど」
「そんな潰れたキノコ程度でビビんなし。この後の亀、もっとキモいからね。亀も倒したら収納するんだからさっさと慣れなよ。男ならキノコも亀も馴染みがあるっしょ」
逆セクですか?
いいぞ、もっとやれ。
「俺は自分のキノコ以外は見慣れてないからさー。ニアはこのキノコどう思う?やっぱおっきいのは苦手?さっきキノコ美味しいって言ってたけど」
「あたし?そりゃそんなデカいキノコ、くっさいしキモいから苦手だよ。あたしが美味しいって言ったのは普通のここで取れるキノコ。帰ったら美味しい食べ方教えてあげよっか?聞いてくるって事は、あんたも食べてみたいんでしょ?」
「俺はいいから二人きりでニアが美味しくキノコ食べてるとこ見たいなぁ。そっかー、デカくてくっさいのは苦手かぁ。デカけりゃ良いってもんじゃないよね!普通のサイズのは食べ慣れてるの?」
「は?二人きりで?まぁいいけどさ。そのデカくてくっさいの、好きな人はその匂いが良いとか言って食べるけど。あたしは無理。口に入れた瞬間、オエッてなるし。普通のサイズは食べ慣れて………おい」
ニヤニヤしながら話しを聞いていたら感づかれたみたいだ。
お、ニアが近づいて来たよ。
おやおや、顔を赤くして怒ってる御様子。
「いやー!楽しみだなぁ!おっさん頑張ってキノコ処理するからしっかり見…ギャッ!!」
本日2度目のキャンタマキック。
この罰甘んじて受けよう、癖になっちゃいそう!
「ざっけんな!そんなもん食った事なんかあるか!!潰れちまえ!!そんなキノコ!!」
「おぐぅっ!?ちょ!オウッ!!マッテ,,!」
地面倒れこんでなお、罵倒しながら執拗に股間を攻める女王,,女神様。
少しの間ご褒美を戴きました。
「ハァ、ハァッ,,,,次また変な事言ったら、こんなもんじゃ済まさないから!!」
最初に逆セクしてきたのニアなのに…。
まぁいいや、これからは愛想を尽かされない程度にセーブしてセクハラしていこう。
「ういっす…すんませんした…」
立ち上がり、頭を下げる。
「さっきより回復早いな…ま、いいや。さっさと終わらせて」
そら今回は純白の素敵布、覗かなったですし。
これ以上の興奮を与えてはキノコが成長してしまうと判断しました。
「はいよ、サクッといこう。ほい、収納!ん?なんかキノコ出せそう。よ、出た出た。んでまた収納と。こんな感じでいい?」
「…最初からそうしてろし。じゃ、次は亀んとこ行こ。あ、土管の穴と地面の穴には絶対近づくなよー。落ちたらあたし達じゃ助からないから。子供だって守ってるこの異世界のルールだからなー。絶対だぞ。振りじゃないって判ってる?」
地面の穴はともかく土管も駄目なのかよ。
原作知ってるやつには完全に初見殺しじゃんね。
「了解、さすがにそこまでアホな事しないって。てか即死ギミックとかあるのに超簡単な異世界でいいのここ?報酬もカスみたいだし」
「いーの。そもそも報酬とか難易度決めんのシステムだし。そりゃ昔は穴に落ちた奴もいたみたいだけどさ。今はこの異世界入る前に、情報見ればすぐ分かるからね。穴は避ければ問題無いし、キノコと亀もキモいけど、あいつらただこっちに密着してくるだけの嫌がらせしかしないのよ。んで、あの旗取るだけで終わり。超簡単で納得しとき」
「あいよ、んじゃ次どうする?」
「あっちに、亀いるのわかる?微妙に遠くに見えるやつ。あれを倒す感じで」
ニアが指差した方向に、よく見えないが緑の甲羅を背負った二足歩行の物体を発見。
「あそこに行くのか、穴を避けながら進めばいいの?」
「だね。あたしは後ろから付いてくから自分で考えて進んでみ。そっちの方向には?箱無いし適当でいいよ」
「了解ー」
たまにある直径3m位の穴を避け、亀に近づいていく。
すると途中にあった土管の裏側から、デカいキノコが現れた。
「ニアー、キノコいたけど倒す?無の力試してみたいんだけど」
「いいよ、あたしもどんなスキルか気になるし」
よし、遂に無の力を使う時が来た。
楽しみだったんだよね。
自分にチートなスキルがあるとかワクワクするじゃない。
「イメージっと。無の力ぁ~…」
ふむ、なにやら体を軽くできそうな気と、ボーリング玉くらいの大きさの黒い塊を飛ばせるような気がする。
やってやるぜ!!
体を軽くするのは後回しだ。
全力で手の平の上に黒い塊を出して、飛ばすイメージでいこう!
「来い来い来い来い!!お、来た来た来た来たぁ!!」
イメージ通り手の平の上にバリバリいいながら、ドス黒い塊が浮かんでいる。
若干、思ってたより禍々しい感じはするが。
「ふ、ふーん。いい感じなんじゃない?」
ニアもお気に召したみたい。
だよね、患者が好きそうなドス黒い塊だと思ったもの。
「うっし!発射ぁ!!」
ドス黒い塊がキノコに向かって飛んで行く、結構スピードあるなドス黒い塊さん。
で、そのままキノコに着弾、キノコの肉を丸く抉り、通り抜けて土管にも着弾、土管も丸く抉ってお空に飛んで行きました。
「おぉ…中々良いんじゃない?どうよニア?」
振り向き、ニアに感想を求めるが、こちらを無視して空を見つめている。
「ね、ねぇ、あれが飛んでった方…光って…キャアアアアッ!!?」
「うおおおおっ!!?」
ドス黒い塊が飛んで行った空を見上げると、突如糞デカい球体状の光が広がり爆音が響く。
空気が震え、凄まじい衝撃に吹き飛ばされ、地面を転がっていった。
光と衝撃が収まったので起き上がり、周りを確認する。
「なんじゃありゃ…うおっ!穴のすぐ横じゃねーかよ!危ねぇ!…そうだ、ニア!!ニアー!!無事かー!?」
少し離れた場所に吹き飛ばされ、地面にうつ伏せになっているニアを見つける。
穴に落ちてなくて良かった。
ニアに駆け寄り、体をひっくり返し仰向けにする。
目立った怪我は無さそうだ。
「ニア!大丈夫か!?」
体を揺すると、目を擦りながらニアが体を起こす。
「………う、うぁ」
「ニア!怪我は無いか!?具合悪くない!?」
ぼーっと虚ろな目で俺を見つめるニア。
すると何故か急に俺の顔を両手で撫で始めた。
「凄いなぁ、いいなぁ、私も欲しいなぁ…。これが私の使徒の力かぁ…私の使徒…私の使徒なんだよねぇ…絶対離さないぞ…うひひひひひひ」
おい、やべぇぞ。
俺に恋愛感情とか無いだろうけど、メンヘラキャラが開花しかけてない?
「戻ってこぉい!!そっちはニアにはまだ早いでしょ!!最終的にそうなったらちゃんと面倒見てあげるけど!!まだ俺達の旅は始まったばかりでしょうが!!」
ニアの肩を掴み強く揺さぶる。
頭がガックンガックンしてるが非常事態だ、許せ。
「う、あ、ぐ、へ?お、い!な、に、し、てん、の!?」
「ふぐぉっ!!?」
はい、ビンタ。
本日,,何回目だっけ?
やれやれ、バイオレンスな女神様だ。
「ハロー、ニア!君のいとしいしとだよ!」
「うあー、キッモ…てか耳が変…ちょっとでも身体超強化あって良かったよぉ…」
「よし、いつものブレブレ女神だ」
「…なんか腹立つな。ちょっと、いや、かなりスキルが格好良かったからって調子乗るなし…次使う時は威力すっごく抑えて使いなよ」
「ああ、ゴメンな。ニア。次からはもっと上手く使える様に頑張るよ」
ドヤ顔したいところだがニアにも被害が出てしまった為、自重する。
あの塊が大爆発するイメージは全く浮かばなかった。
スキルは成長するし、イメージ次第とか聞いた気がする。
何度も使って慣れていくしかないだろう。
とりあえずあのドス黒い塊は無玉とでも呼ぶとして、何あの威力?
完全にブラックなホールのクラスターなやつ。
ファファファな感じだと思ってたら急にロボな感じにイメチェンかよ。
どっちもラスボスには違いないけどさぁ。
成長したらイメージ次第でもっとヤバいスキル使える様になるんだろうなぁ…。
色々、無っぽい技考えとこう。
もしかしたらそれが使える様になるかもしれないし。
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