第14話 異世界?デビュー
気づくと茶色い地面の上に立っていた。
どうやら問題なく使徒になれたみたいだ。
辺りを見渡すと少し遠くに緑色の三角の山ややたらと草が密集して生えている場所があり、青空を見上げるとずんぐりむっくりな雲が浮いていた。
「ここが異世界…」
この異世界、見覚えがある。
?と書いてある箱や茶色のブロックが宙に浮いていたり、緑色の土管が地面に埋まっている風景。
「マ○オだな、これ」
髭の配管工の世界を妙にリアルにした感じ。
テッテッ♪テッ♪テテッ♪テッ♪テ♪なんてBGMは聞こえてこないがまず間違いないだろう。
なぜなら前方から1mくらいのなめこに、足付けて眉毛と目玉がある生物が近づいて来ているからだ。
実は異世界に着いて最初にこの生物が目に入ったのだが、現実逃避していた。
だってこいつ、超キモい。
2次元キャラの目玉をリアルにすると本気でキモい、デカイし血管浮いてギョロギョロしてる。
しかも目付き超悪いし。
「どうする…ニアちゃんが来るまでここから動かない約束だし、攻撃するしかないのか…?」
刻一刻と近づいてくるガンつけキノコ。
死ぬような危険は無いってニアちゃん言ってたし、ここは某配管工よろしく、キノコ退治といこうか!
倒さないでいて、あんなのに近くをうろつかれのは精神衛生上よろしくない。
キノコとの距離は後5mほど、やるしかない!
「Bダッシュ!からの~!ジャンプだオラァ!!」
狙ったど真ん中より着地点はズレたが足元に伝わる柔らかい何かが潰れる感触、手応えあり!
確認の為、後ろの足元に目を向ける。
「やったか!?…うおおっ!!キモいってマジで!」
慌ててデカイ目玉が半分くらい飛び出した、潰れた物体から離れる。
「あれ、死んでるよな,,死んだら粒子に変わって消えたりしようよ。生々しいわ…」
ビビりながらキノコの状態を確認していたら、近くに黒い模様が描かれた赤いドアが現れ、開く。
赤髪美少女キャラぶれぶれ女神、ニアちゃんの登場だ。
「おまたー。転送上手くいって良かったわ…おぉ、キノコ倒したか。ジャンプして踏んづけたん?目玉潰さなくてよかったなー」
「お、おうよ。これ死んでるよな?目玉潰すとどうなってたのよコレ?」
「あんたコレ生きてるように見えるん?目玉潰すとべったべたの謎汁が飛び散るんだよね。しかもくっさいの」
着地点が後ろにズレた事に感謝。
前にズレてたら目玉から謎汁スプラッシュされてた可能性。
「マジか、原作真似したら駄目じゃん。この感じだと亀とかアイテムとかどんなだよ?」
「あー、やっぱ原作知ってるよね。ま、亀は普通にキモい。振ると火玉が出る花は狙いがつかないから使いづらいし、パワーアップする的なキノコは特に何も起きないよ。焼いて食べると美味しいけど」
「なんじゃそりゃ。ここって地球のゲームをパクった異世界なの?」
「まー、そんな感じかな?簡単に言うと地球で生み出された色々な物語とかを、システムがパクって簡易な異世界にしてる感じ。攻略すれば報酬で最初だけは神力貰えて、後はお金、たまに自分の異世界創る為の素材貰えるよ。ここは超簡単に攻略できるから報酬カスだけど。報酬で貰えるお金50円だし。素材は端末に入れれば持って帰れるから、アイテムのキノコ拾って売る小学生の小遣い稼ぎの場所って感じだね。あそこに旗が見えるっしょ、あれ取れば攻略完了」
マジかよ、地球から色々パクっていいのかシステム?
まぁ、地球も神界もシステムが創った異世界も、創造神の創った所有物だろうから文句なんてないけどさ。
「なるほどねー、確かに報酬カスだけどさ。50円でもすぐ攻略できるなら、何回も攻略すればそこそこ稼げるんじゃない?」
「そう思うじゃん?でも、システムが創った異世界には1日3回しか入れないんだよね。てか、これからシステム関係のルールの理由とか疑問に思ったりするだろうけどさ。あたしには深い理由とか解んないから。そういうもんだと思ってて。どうしても気になるならレイ様に質問してちょーだい。ま、解る事は教えるし」
「了ー解」
郷に入れば郷に従えってな。
「よし、とりあえずここでスキル使ってみたり、色々してから攻略する感じでいこっか」
「あっ、そうだ!ニアちゃん、ちゃんと契約上手くいって使徒になれたし!これから一緒に頑張ろう!よろしく!」
転送される直前にニアちゃんとなんか繋がったような感覚がした。
美少女との繋がり、大事にせねば。
「あっ、うん。それな、おっさん。これからよろしく的な感じで。……そうだよ…ついに私が使徒持ちな上にチート持ちに…うひひひひっ…これで私を見下してた奴等に勝つる…ざまぁだ、ざまぁしてやるんだ…!!」
笑い方直した方がいいと思うんだ。
うひひしながら自分の世界に逝っちゃてるよこの娘。
「ニーアちゃん!うひひしてないでこっちに戻っておいで!素が出てるよ!」
「うひっ!?や、違うし、素とか無いって、あたしはちょっと気だるげなダウナー系美少女。変なこと言うなし、おっさん」
「そーですか。つーかさ、ニアちゃんて俺とタメ年なんでしょ?契約したんだしおっさんはやめようよ。ニアちゃんも三十路だしおばさんって事になるでしょ」
「は!?誰がおばさんだ!私はまだまだピッチピチだわ!神は頑張れば200年は生きるの!もっと頑張れば寿命だって延び続けるし!見た目だって寿命が近づくまでは自分の好きな歳の姿でいられるんだから!レイ様とかあんなロリってるけど最上神なんだし、1000歳越えててもおかしくないっつーの!大体、地球と神界じゃ時間の流れが違うって言ったよね!?地球での30歳なんてこっちじゃおっさん通り越して爺みたいなもんだっつの!」
ニアちゃん激おこぷんぷん丸。
女性に年齢の話は駄目でしたね。
レイちゃんの歳が4桁越えの可能性は今は流そう。
「ゴメンゴメン俺が悪かった!神の事知らなかったからさ。おばさんとか言ってごめんね?でも地球と神界での時間の流れとかわからんしなぁ。俺も30年しか実際生きてないから、爺とか言われても」
「ふぅ…あー、あたしも悪かった。ゴメン。神界で女神に歳の話しは禁止ね。基本キレるから。説明するわ、ちょっと長くなるよ。地球の1年が神界だと30年。つまり神界は時間の流れが地球の30分の1って感じなわけ。だからあんたはここじゃ900年前に産まれたっていうこと。そんなの30歳からしたら爺でしょ?ま、それ言ったらあたしは地球じゃ一歳だし、地球から来た使徒みんな年寄りって事になるからね。さっきはあんな言い方しちゃったけどさ、神って見た目の歳変えられるっしょ?肉体年齢に精神も引っ張られるから寿命近づくまでは基本若いままでいるけど。それに、地球から来た人間も神と契約して使徒になれば神力で寿命延びるし、神と違って見た目の歳は変えれないけど老化は止まるんだよね。使徒にする為に選ぶ人間って、大体が若い美男美女なわけ。中年や老人って、金持ちがたまにやる範囲転移でしかこっちにいないの。だから神界にいる中年とか老人って、寿命が近づいて老化し始めたやつぐらいなわけ。んで、おっさんは見た目がおっさんじゃん?レイ様のおかげで今はそこそこ見れる感じになったけどさ。やっぱ、おっさんはおっさんなわけで、それでおっさんって呼んでた。嫌ならやめる、呼び捨てでコウかクロイシでいい?長い付き合いになるしね、くん付けとかさん付けもなんかヤダし。そのかわり、あたしもニアかアヤネでいいよ。ちゃん付けはやめて欲しい、なんかむず痒いから。タメ年なんだしね、これからは気楽にいこ………ううん、ちゃんと契約できたんだし。これじゃ私、駄目だよね。…まだ神界の常識とかわからないのに怒ってごめんなさい。私も自分が変な娘なのは分かってるんです。これからまともな神になるように頑張っていきます。時間はかかると思いますけど。もう一回、確認してもいいですか?こんな私でも、あなたは私の使徒として一生を共に生きてくれますか?」
時間の流れや寿命の説明をして、呼び方の話をしていたら、急にしおらしくなってしまったキャラ迷走女神。
ここは使徒としてキチンと返事をせねば!
「使徒として!ニアと一生を共に生きる事を誓いまぁす!!説明ありがとね!俺、神界の常識わかんないから、また嫌な気分にさせるかもしれない!そん時は遠慮なくまた怒っていいから!ニアは気にしなくていいよ!それに無理にキャラ変えなくていいからね、変な娘でもまったく気にしないから!あ、でもうひひ笑いはなんとかしたほうがいいと思うわ。ま、今後ともよろしくぅ!コウでもクロイシでもどっちでもいいから!」
ニアに手を差し出す。
時間の流れとか寿命やらの常識もなんとなく理解したからおっけ。
今の最優先はニアとの信頼関係だよ。
さぁ、おっさんの緊張してジットリしてるであろう手を握るのだ。
しょうがないじゃん、さっきまでキモいウザいが標準装備でこっちも適当に話しやすかった見た目美少女が、急にしおらしくなって目をウルウルしながらの真面目きゃわわモード。
おっさん、塩対応の若い女性には職場で慣れているから適当に話すの全然余裕だけどさ。いくら実はタメ年とはいえ、真剣な感じでの若い女性との話しは緊張する。
レイちゃんが同じ感じで質問してきた時もヤバかった。
微妙に笑顔にしてるつもりだが引きつってること間違いなし、握手プリーズ、はよ。
「ふふっ、じゃあ私もコウと一生を共に生きる事を誓うね。これからよろしくお願いします」
ニアが握手してくれた、ふふっの笑顔の破壊力よ。
「いやこれさ、説明の時も思ったけどマジで結婚のセリフみたいじゃんね!ときめくわ!誓いのキスとかいかがですか?…ふぐぅっ!!」
本日3回目のビンタを頂戴いたしました。
少し痛いけど鼻血は出てないと思われる、身体超強化のおかげかな。
「これはそういうんじゃないってば!!教科書に載ってるのなんとなくそのまま使っただけ!!確かに契約した神と使徒が結婚する事は多いけど!私はあんたにそんな感情なんて持ってないんだから!勘違いしないでよね!!」
「うはっ、ツンデレキタコレ!!おごっ!!?……ア、ァ、キャンタマはダメ…」
クリーンヒットでございます、あぁ、ボールが上に参ります。
「うっさい!!ちょっと反省してろ!!」
これも悪くないな、とか思いながら数分悶絶しましたとさ。
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