第11話 契約とスキル1

「そう、君だよ!ここに居る三人の神の中で1番君が適性があると判断した!」


 立ち上がってニアちゃんを指差し、ドヤ顔のレイちゃん。

 この娘、これが決めポーズなのか?


「ふへっ?いや、あの適性とかあのちょっと、わ、わかんないですよ?わた,,あたし的にはちょっと荷が重いといいますか?あと、いえ、ほら!えと、私みたいな若いぺーぺーより歳いったベテランの二人がいいと思うんですよ、わ、あたし!」


 対する赤髪ダウナー系女子はメッチャテンパってる。

 素の声可愛いしキャラ崩壊してますよ?

 今にもはわわ!?とか言って転んだりしそうだぞい。


「そうかい?君も今月30歳でコウと一緒だし若者同士切磋琢磨していくのにちょうどいいじゃない!ベテランの二人、アイトは支部長で異世界攻略に時間は割けないし、これから色々と協会方面で動いてもらわなければならない!メイ にも僕の指示で裏で動いてもらえたら助かるし!なによりあの家との契約があっては異世界攻略もまともにできないだろ?僕が介入して無理矢理契約反故にするのはちょっとね…あそこ、今の神界だとかなりの有望株だし!それとニアちゃん!無理にキャラ作りしなくてもいいんだよ!あははっ!」


「えっ、ニアちゃんタメなの?」


「うっさい!人間と神の歳を一緒にすんなおっさん!!」


「コウ様、地球と神界では時の流れが違いますので…。それとニア、メイ様の前でそのような口の利き方はお止しなさい。それにメイ様の言われた通り、最近のあなたのキャラ作りはあまり評判が良くないですよ」


 メイさんがニアちゃんを嗜める、ニアちゃん顔真っ赤だぞ。


「う、うっさい!!私はキャラ作ってなんかない!!なんか自然とそういう感じになったの!!メイだって20年位前は俺とか言ってチンピラみたいだったじゃん!3桁越えのババアのくせに!猫被り!」


「チンピラ!?ババア!?この糞ガキっ!…っと、いけない。…皆様失礼致しました。ニア、自然とそうなったのなら仕方ありませんね。何年も怪我も無いのに眼帯や腕に包帯巻いて封印や魔眼云々言っていたのも自然に治った様ですしね。コウ様、この痛い娘では少々荷が重いかもしれませんが、どうぞよろしくお願い致します」


「あっ、はい…」


 ニアちゃんは元患者でメイさんはかなりの年上だった、20代くらいにしか見えないけど。

 そしてニアちゃんは黒歴史が恥ずかしいのか、ソファーに体育座りで顔隠してプルプルしてるよ。

 スカートでそんなことしちゃうから白い生地がチラリズム。

 見た目完全に制服JKだし恥ずかしそうにしてるのも高ポイント、股間に優しくない世界だわ。


「あの、レイ様。本当にニアちゃんで大丈夫なのですか?私やメイちゃんは確かに今は黒石さんと契約するのに適していないかもしれません。ですが、今この場で決めなくともこれから探せば黒石さんと相性のいい神も見つかるのでは?」


 空気だった支部長のもっともな意見。

 俺もニアちゃんみたいな神と契約できれば嬉しいけど無理矢理は嫌だな。

 そもそもシステムってのが認めるのかね?


「アイトの言う通りだね。…でも、これから色々な神にこの状況を説明して探すのはちょっと厳しいかな。契約できなければこの件の記憶を消さなきゃいけないし…まだこの件は広めたくないんだよね。それにあまり時間もかけてられないんだ。僕も創造神様から頼まれてここに来ててね…。力を与える為にちょっとヤバい物持ち歩いてるんだよ…。正直、早く手放したいんだ!ニア、なんとかお願いできないかな?それにコウと契約すれば多分、君の欲しかった物が手に入るよ。気持ちが落ち着いてきたなら、ちゃんと話をしよう。ふざけた態度で話してごめんね」


 今までの茶化す様な態度を止め、優しげな声で話すレイちゃん。

 ニアちゃんが顔を上げ、ソファーに座り直してこちらを向く。

 テンパってない、真面目な雰囲気だ。


「メイ様、私はたいしたスキルも持たない、下級の神です。それでも本当に良ければお話しを聞かせてください。正直、私の欲しかった物が手に入る、というのが気になります」


 変なおっさんと契約すると欲しい物が手に入る見た目JK、ピンクな妄想が膨らむね。


「うん、それじゃニアがコウと契約をした時のメリットを話そう。まず力も低くお金も無いニアが、最低一億円はかかる儀式をしないで使徒と契約できる。その使徒は最初から創造神様から強力なスキルを与えられている状態だ。ニアが契約した使徒に大したスキルを与えられなくても問題ない。ほぼ確実にチートな使徒とただで契約できるんだよ?異世界攻略で行き詰まってた神なら夢のような話じゃない?後、この話にニアがやる気を持ったら伝えるように創造神様に言われている事があるんだけど…。どうかな?」


 転移に最低一億円とかここも円なの!?的な疑問や俺がチート使徒になるとういうの一旦置いといて、創造神様はいったいどんな事を…。


「私…少し不安だけど契約してみよう、と思っています」


 ニアちゃんがやる気だ!

 おっさん嬉しいよ!


「わあ!ありがとう!じゃあ創造神様からの言葉を伝えるね!…ちょっとだけ恥ずかしいけど…いくよ!」


 まーたレイちゃんソファーに立って指差してるし。


「力が欲しいか…!!」


「…っ!!!」


「力が欲しいのなら…くれてやるっ!!」


 おいこら創造神、何ロリ女神にパクりネタやらせてんのよ。


「ち、力がっ!欲しいっ!!」


 効果はばつぐんだ。

 患者さんはノリがいいが見ろよ他の皆を。

 メイさんと支部長はポカーンとしてるし、あのメイちゃんさえ羞恥からか顔赤いよ?


「うん、えっと、契約してくれるならニアにも創造神様から力を与えるよーって事ね…。とりあえず契約してくれるって事でいいのかな?あははっ…」


「ハイっ!!ありがとうございます!!」


 なんか鼻息ふんすふんすしてるよこの娘。

 チョロくない?


「じゃ、じゃあ次はデメリットね。最初のうちはなんで急に使徒とそんな力が手に入ったか聞かれて面倒になると思う。その時はとりあえず、今の神界を正すために最上神様に選ばれたとでも言っておいて。詳しく何か聞かれても、最上神様に秘密にしろと言われている、でいいから!二人には証拠に僕の神具を渡すからそれを見せれば多分大丈夫だと思うよ!はい、このブレスレットね。僕とお揃いだから大事にしてね!」


 レイちゃんから黒くて光沢のある、謎の模様が入ったシンプルなブレスレットを渡される。

 美少女達とお揃いとか嬉しすぎだろ。

 渡されたブレスレットをレイちゃんと同じ左手首に着けていると対面ソファーの様子がおかしい。


「し、神殿に祭られているものと同じだ…!ニアちゃん、絶対に失くさない様に!絶対にだよ?ね?ね!」


「ニア、後で手首に縫い付けましょうね。あなたのことだからどこかに置いて失くしたとか言いそうですし」


「ひっ,,!そんなことしない、ですょ…」


 なんか、ベテラン二人の目が怖い。

 ニアちゃんも意気消沈、左手首に着けたブレスレットを右手で包んでガタガタいってる。


「あははっ!君達が思ってるほど大それたものじゃないって!これに神殿で祈りを捧げてる方がどうかしてるよ!それに着けたら僕の許可がないと外れないから安心してよ!あっ、呪いの装備とかじゃないよ!少しだけだけど僕の加護が付いてるんだ!愛の装備とかだと思ってよ!」


 外れない愛の装備…愛が重くない?

 まぁ、レイちゃんの愛ならいいか。


「よし、じゃあ次だ!ニア、コウに自分の使徒になった時の契約を説明して。できれば雇用するみたいなガチガチな形じゃなくて、基本自由なパートナーとして契約して欲しいんだけど」


「ぱ、パートナー,,ですか。…そうですよね、雇用なんて私には無理だし…。わかりました」


 パートナーか、相棒!って感じかな?

 雇用はなんだろ?時給620円で働いてたこともあるし、ブラック企業は慣れっこだからそっちでも構わないがね。


「そ、それじゃ…。クソ、恥ずいな…。とりあえずテンプレ通りに…えと、黒石幸。私はアヤネ・ニアだ。私の女神として黒石幸に与えられる力は私が持つ微々たるスキルだけだ。契約すれば私の力が使徒の黒石幸にも少しは使えるが、異世界を攻略するには普通の人間とあまり変わらない。私の力だけでは簡単な異世界しか攻略できないと思う。これから行く異世界は…わからないけどあんたの力になりたいと思う。もし、使徒と認められて最初の異世界を攻略して戻ってきたら自由に生きて構わないが…できれば私と共に世界を創るのを手伝って欲しい。契約すれば私と黒石幸は魂が繋がり共に成長する身となる。成長すれば寿命も伸びるし力も増す。神界は黒石幸の住んでいた場所とあまり変わらない場所だ。不便はしないだろう。もし、元の場所に…って、これは必要無いないか。黒石幸、異世界を攻略し、新たな世界を造る為に、私と共に一生を生きてはくれないだろうか?」


「誓います!」


「いや、普通にハイとかでいいんだけど。誓います要素な問いかたしなかったよね?」


 しまった、なんか一生を共にとか言ってるから結婚式的な感じでテンション上がってた。

 こんなラヴい神にそんな事言われたら誓っちゃうでしょうよ。


「はい、ニアちゃんと一生を共に生きるよ」


「くっ…!イマイチのくせに,,!…よし!とりあえず説明は終わったし!後は異世界に転送してシステムに認められればオッケーって感じでいいっしょ!」


 なんかもじもじしてるしキャラ崩壊してるしで超かわゆす。

 誓いのキスはいりませんか?


「ニアちゃん、おめでとう!末永く仲良くね!」


「ニア、立派な女神になって…おめでとう」


「うんうん!若い二人の門出を祝福しよう!おめでとう!あははっ!」


 年上組が悪ノリしてるね、俺もその方向でいこう。


「ありがとうございます!仲良く、幸せな世界を築いていきたいと思います!」


「やめてよ!!なんか違うでしょ!!こいつとはそういうんじゃない!!あんたもふざけんなっ!」


「ふげっ!!」


 ニアちゃんに割とガチのビンタを貰った。

 でもなんだろ?この幸せな気分。

 笑顔が止められない止まらない、ついでに鼻血も。


「うっわ、キモッ…。欲につられたわ、コレと長い付き合いになんのかよ…。メイ様、クーリングオフって可能ですか?」


 おやおや、早くも離婚の危機。

 ここは一発足にすがり付いて捨てないでぇ!とかやってみようかね。

 うん、冗談じゃすまなくなりそうだし止めとこう。

 あっ、支部長がティッシュくれた。

 更にメイさんが鼻に回復魔法を使ってくれたので鼻血ブー終了。

 ありがたや。


「もう無理だね!ちゃんと契約に前向きか分かるように創造神様へ今の映像送ったから!最上神と創造神様が立会人って豪華だねぇ!今更止めるなんて僕達の顔を潰す真似はしないよね!あははっ!」


「…了解しました」


 最上神は仕事が早いね、絶対に逃がさない意思を感じる。


「それじゃ!転送の儀式の前に、お待ちかねのスキルを与えるよ!」


 遂にこの時がきた!










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