第12話 契約とスキル2

 レイちゃんがどこからか虹色に輝く箱を取り出し、テーブルに置いた。

 30㎝四方の横側にレバーが付いていて、箱の下の方に丸い穴が空いている。

 箱の真ん中には達筆で超神って書いてるよ。


「創造神様から預かってた力を与える装置だ!このを引けば穴からランダムにスキルが出るらしいよ!それが創造神様から、君達へ与えられるスキルになるんだって!これはコウとニアで一回ずつ使えるってさ!あっ、コウにはこの後僕からも力を与えるからね!よし!じゃあ思い切って、レバーを引こうか!」


「レイちゃん、ちょっと待って。これってガチャだよね?ランダムってなによ?創造神様、こんな適当でいいの?」


「あたしガチャ運無いから嫌な予感しかしないんすけど。限定とかいっつも天井までいくんすよ。これ当たりの確率何%なんですか?てか、単発で当たりとか無理ゲーっす」


 ニアちゃんの精神が落ち着いてきたのかやけになったのか元の偽ダウナー系に戻ってる。

 神界にもソシャゲってあんの?


「うん!ガチャだよね!僕もいいんですかこんな感じで?って創造神様に言ったんだけどね!創造神様曰く、与えるスキル選ぶのめんどいし、だからって欲しがってるのあげてもつまんないじゃん?俺の気に入ってるスキルいっぱい入れたし、ハズレは多分入って無いからガチャでいこうよ!大当たりで天元突破するドリルっぽいスキルとか、宇宙に干渉する魔法少女的なスキルとかも入ってるし夢があっていいじゃんね!…だそうだよ。本音を言うとチートスキル詰め合わせた爆弾みたいなヤバい箱だからさっさと返したいんだ。これ壊れたら下手して神界吹き飛ぶんじゃない?」


 なんてもの作り出してんだ創造神。

 世界が吹き飛ぶとかそりゃレイちゃんもさっさと手放したいわ。

 案の定、普通のゴッド達は冷や汗バイブモードに突入してる。

 俺はいまだに現実感が薄いからか、ヤバいんだろーなーって程度だけど。


「ハズレは無いらしいし、さっさと引こうか!引かなきゃ終わらないんだし!さぁ!!あっ、でも優しくしてね?」


 優しくするから大丈夫,,天井のシミを数えるまでもなく終わるよ、レイちゃん。

 というか俺はこのガチャ引くのにワクワクしてるんで何の問題もないのだ。

 大当たりの漢の魂、ドリルを狙っていきたいです!


「よし!黒石幸、引っきまーす!うりゃ!」


『ひいっ!!』


 レバーを引くと同時に箱が震えだし、黒い煙の様なものが全体から吹き出してきた。

 レイちゃん含むゴッド勢がビビってる。

 優しく引いたつもりだけど、壊れた?


「あれ、ヤバい感じだったりしますコレ…?」


「い、いや、大丈夫じゃないかな?ほら!煙が箱に戻っていってるし!あっ、穴からスキルが出てきたよ!!」


 レイちゃんの言う通りガチャの穴からコロコロと黒いビー玉の様な物が転がってきた。


「おぉ!これが俺のスキルか!ん?なんか書いてある…無?え、無しってこと?ハ、ハズレ?」


 創造神様よ、ハズレは多分入って無いって言ってたじゃん。

 提供割合開示しやがれ。


「ちょっと待って!今渡されたリスト調べてるから!えっと、黒玉に白で無…あった!」


「ど、どんなスキルなの!?ハズレは勘弁だぞ!」


「無の力だって、大当たりみたいだよ」


「…ファッファッファ?」


「えーと、なんか良くできた異世界の悪役とかの力っぽいスキルだって!創造神様が作ったスキルだし、改良されてるから元になった力とは別物みたいだよ。使いこなすにはそれなりに成長しなきゃないけど、主に物を無に飲み込む力とか、無重力とか他にもイメージ次第で色々できるみたいだよ!凄いね!」


 色々な意味で大丈夫かこのスキル?

 死にかけたらスキルに飲まれちゃったり、宇宙の法則が乱れたりしないよね?

 でもまぁ、大当たりらしいしここは素直に喜んでおこう。

 なによりレイちゃんの満面の笑みが不安を消し飛ばしてくれた。

 それに普通のゴッド達が拍手しながら祝ってくれてるし。


「黒石さん、おめでとう!素晴らしいスキルで良かったね!黒石さんの異世界攻略が順調に進みそうで私は嬉しいよ!」


「コウ様、おめでとうございます。これからの成長を楽しみにしています!ただ、力に飲まれないよう御気を付けてくださいね」


「…ずるい、うらやましい。あたしだってカッコいいの引くから」


「みんなありがとう!頑張って使いこなしてみせるから!」


 なんか照れるな、ただガチャで大当たり引いただけなんだけどね。


「それじゃ続いてニアのガチャいってみようか!」


「あたしだって大当たり引くし、見てろよおっさん」


 勿論見ますとも、これから長い付き合いになるパートナーなんだ。

 大当たりを引いて欲しいさ!


「ニアちゃん!僕と契約して、魔法少女になってよ!」


「もしあたしが本当に魔法少女になったとして、おっさんは蜂の巣になりたかったりするの?つーか、あたしが欲しいのはおっさんみたいなスキルだし」


 確かに無の力とかすっごく患者っぽいしな、本気で羨ましいんだろうなぁ。


「いやでも、時間を操る魔法少女とかいいじゃん。悪魔っぽくなれるかもよ?」


「神が悪魔っぽくなるってどうなのよ、嫌いじゃないけど…まぁ、スキルだけならいいとしてさ。もし、可愛い衣装に変身しなきゃ使えないとかだったらどうすんのよ?魔法少女ってそんな感じじゃないの?おっさん、あたしが使えるスキルが少し使える様になるの覚えてる?」


 なるほど、魔法少女コスプレ中年とか誰も幸せにならないな。


「素晴らしいスキルが引ける事を神に祈ってます」


「ハァ…どの神に祈るつもりなんだかね。それじゃ、メイ様。引かせていただきます」


「うん!どぞどぞ!僕も祈ってるよー!」


 ニアちゃんが深呼吸しながら、レバーを握った。


「…オネガイシマス、オネガイシマス、創造神様。か弱き我が身に創造神様の偉大なる力を分け与えてくれたまぇ~…もうサポートだけの神生は嫌なんです。私だってカッコ良く異世界攻略してみたいのですっ…!オネガイシマス…!…創造の神に創られし、パンドラの箱よ!!その虹色に輝きし封印に秘められた希望を我に解放する時が来た!!出でよ!秘められし我が力よ!!創神祈願!アルティメットブローッ!!えいっ」


 創造神様に祈りを捧げ、気合いを入れてそっとレバーを引くニアちゃん。

 随分優しい究極の一撃だな。

 メイさん、この娘まだ病気治ってなかったみたいだね。

 ガチャを見ると俺の時とは違って、白い光を放ちながら箱が震えだした。

 そして待つこと数秒、白い光と箱の震えが収まると、赤い玉がコロコロと穴から転がり出てきた。


「っ!どうか当たりでお願いします!…赤い玉に、縛って黒い文字が書いてる…。メ、メイ様!これはどんなスキルなんですかっ!」


「ちょっと待ってね!赤玉で黒で縛っと…お、あった!封縛の力だって!当たりみたいだよ!相手を縛る力みたい!」


「そ、そうですか…。大当たりじゃないけど、当たりだし…うん、良かったかな…。でも縛る、か。…どんなスキルかリストに詳しく説明載ってます…?」


 ニアちゃんがなんとも微妙な顔をしている。

 カッコ良く異世界攻略したいとか祈っていたからなぁ。

 思っていたよりも地味だったのかもしれない。

 でも、ドリルやらファファファとかパクってスキルにする創造神様だぞ。

 縛とか非常に中二病臭い仕上がりになってると俺は思うんだけど。


「うーんとね。説明に載ってるのは、主に糸や布、鎖等を生み出して相手を束縛する、束縛した相手の力を封印、吸収等可能。生み出した糸等で相手を切り刻む事も可能。スキルがどう成長するかはあなたのイメージ次第です!だって」


 ほらみろ、某執事やニアちゃんと同じ赤い目の鎖使いみたいなやつじゃん。

 ニアちゃんもニタニタしてるし、想像できたんだろう。


「うひっ,,♪やった、やったよ。もう、荷物持ちとか収納の女神(笑)なんて言わせないっ…!あたしは封縛の女神…!封縛のアヤネ・ニアだ!!うひっ、うへへへへっ…!」


 とりあえず妙な笑いをして一人言を言ってるニアちゃんを祝ってあげなきゃな。


「おめでとう、封縛のアヤネ・ニアちゃん。いいスキルじゃん!封縛のアヤネ・ニアの使徒になるのかー。封縛のアヤネ・ニアの使徒として俺も頑張らなきゃな!」


 他の神様ズも生暖かい目でお祝いする。


「うんうん、素晴らしいスキルを戴いたね。同期に異世界攻略に置いていかれる様になった後も、協会職員に就職して頑張っている君を私はちゃんと見ていたよ!これからは封縛のアヤネ・ニアとして、黒石さんと頑張っていくんだよ!」


「封縛のアヤネ・ニア、おめでとう。小さい頃から自分の使徒を持って、立派な世界を創るのが封縛のアヤネ・ニアの夢でしたからね。夢を叶える為にコウ様と共に頑張るんですよ。ただ、妙なキャラ作りをしたり、奇行を繰り返すのはおよしなさい。後々恥ずかしい思いをするのは封縛のアヤネ・ニアですよ」


「あははっ!おめでと!封縛のアヤネ・ニアね!じゃあ、僕もそう呼ぶことにするかな!」


「やめてください、テンション上がって調子こいただけなんです。あたしはニア、普通のアヤネ・ニアです。あたしが悪かったです。いじめないでください」


 ニアちゃんが涙目で恥ずかしそうに頭を下げる。

 なんか普段気が強そうな女の子のこういう態度、ちょっとグッとくる。


「普通のアヤネ・ニアちゃんもこう言ってるし普通に呼ん、ブヘッ!?」


「やめろって言った!!死ねっ、おっさん!」


 さっきと同じ場所にビンタ炸裂、またしても鼻血ブー。

 すぐに近付いて回復しようとしてくれるメイさんにマジ感謝。

 ティッシュ係の支部長もね。

 今のは調子こいた俺が悪い、とりあえずニアちゃんのご機嫌をとらねば。


「うん、俺が悪かった!!いやあ、しかし無の力と封縛の力のコンビってなんかカッコいいね!しかもお互い同じスキルちょっとは使えるんでしょ!ヤバいね!」


「あっ、さっき言おうとして忘れてた!創造神様のスキルは個人の魂に完全に定着するから本人しか使えないんだよね!」


 マジかよ、なら断然魔法少女になって欲しかったわ。


「えっ、封縛と無の女神もいいなって思ってたのに…」


 この患者、全然懲りてないな。


「まぁまぁ!創造神様がわざわざ用意してくれたスキルだよ?最初はそこまで強くないかもしれないけど、成長したら絶対チートだって!スキルショップに出品される事だってない、君達限定のスキルなんだよ?そのくらいは我慢しようね!」


「俺は大丈夫だよー、無の力だけでも充分充分!創造神様に感謝ですわ!ニアちゃんもカッコいいスキル貰えたんだしここは素直に喜んでおこう!」


「うん、そだね。あたしも充分ですメイ様。何も誇れるものが無いあたしに素晴らしいスキルを与えて戴いて、本当にありがとうございます。創造神様にも感謝を」


「うん、創造神様にも感謝してたって伝えておくよ!それじゃ、貰ったスキルを使えるようになる為に、その玉を飲み込んでね!ちょっとビリッてなるけど大丈夫だから!さぁ、ゴクッといってみよ!」


 ビリッとっていうのが気になるがまぁ大丈夫だろ。


「んじゃニアちゃん、せーので一緒に飲もうか!」


「はいよ、それじゃ、せーの!」


 無味無臭の玉を口に入れ、飲み込む。


『ギャッ!!!?』


 飲み込んだ瞬間、身体中を何かがバリバリと巡って行き、意識が飛んだ。








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