第10話 世界観測協会4

 右腕の温もりが失われた事を寂しく思いながらもロリの説明を待つ。


「あ、あの、少しよろしいでしょうか?」


 だがロリの説明より先に置物と化してた支部長が挙手。

 ようやくまともに顔を見た気がする。

 さっきまで美人にしか目がいかなかった。

 うん、50代手前でくたびれたリーマン感はあるが優しげな目をしたダンディだ。

 モノクルとか似合いそう。


「ん?どうしたんだいアイト?何か気になる事でもあった?それともトイレ?」


 そうとうビビってるみたいだからな。

 実は漏れてしまっている可能性もあるとみた。

 女性二名はともかく支部長の下着事情など知ったことではないが。


「い、いえ、トイレではないです。それよりも、ここにいる私達三人が聞いてもいいお話しなのでしょうか?先ほどの御二人の会話からも、一般的には知られてない情報がありましたし,,。もし込み入ったお話しになるようでしたら、私達は退席いたしますので、どうぞ御二人で、ごゆっくりお話しを、していただければと…」


「そ、そうですね!ただのメイドがこの場にいるのは相応しくないかとっ…!」


「あ、あたしもただの職員ですし!逃げ…いないほうがいいんじゃないですかねっ!」


 ここに居たくない気配を滅茶苦茶感じる。

 ニアちゃんとかほぼ逃げるって口に出してたし。

 置いてかないでよ、寂しいじゃん。


「あははっ!何言ってるのさ!君達はもうこの件の関係者なんだから!しっかり協力してもらう予定なんだからここに居てもらわないと困る!ちゃんとお礼はするから安心してくれ!まぁ、どうしても嫌ならこの件の記憶消すつもりだけど。たまたま手元が狂って、廃人になっちゃったらごめんね?それじゃ、説明始めてもいいかな?」


『ハイ……』


 うなだれる三人、俺に関わってしまったばっかりに…。

 申し訳ないけど俺も協力してもらったほうが助かるだろうし、この話はスルーしとこ。


 説明を始めるのかロリがソファーに立ち上がり、腕を組んだ。

 俺は真剣な目でロリを見つめる。

 けしからんおっぱいだ、腕を組むことでより存在をアピールしてくる。

 なによりその先端にある2つのスイッチ。

 押したら何が起こってしまうのか?

 いや、もしかしたら上下にオン、オフを切り替えるタイプかもしれない。

 押してつまんでオン、オン、オフゥ!


「あははっ!そんなエッチな目で見られると流石に恥ずかしいなっ!見ててもいいけど説明はちゃんと聞いてね?」


「あっ、ハイ…なんかすみません…」


 ガン見してるのにそりゃ気付くわな。

 対面の女性二名は…ゴミを見る目ですね。

 ぶっちゃけオッキしてるのもバレてると思うんだ。

 左手だけで隠せるほど子供ではないんだよ。

 というか、非現実に頭が追い付かずに謎のテンションになっている気がする。

 落ち着こう、定番の素数を数えるやつをやるんだ。

 素数って何だっけ?


「女の子達も彼をそんな目で見ないであげてくれ!僕がサービスしてるんだから彼は悪くないんだ!わかったかい?」


『…ハイ』


 ロリがマジ女神、愛してる。

 うん、真面目になろう。

 さすがに、ロリ女神に悪いわ。


「それじゃあ、始めるよ!神のシステムはね、創造神様がこの世界を創造した時に組み込んだこの世界の根本だ!この世界、神界は神を育てる為の世界で、システムはそれを促進する神界の核だね!神界はこのシステムを使う事で回っている!神界に住む神々の目標はシステムを使って立派な神に成長し、創造神の庇護から卒業して、自分の力だけで世界を創造する事なんだ!…最近の神はちょっと変わってきてるけど…ま、いいや。ここまでで何か質問はあるかい?」


「えっと、まだよく理解できないので続きをどうぞ」


「そっか、まぁ今全部理解する必要はないよ。神界で生活してるうちにだんだんと理解していくさ!それじゃ続きね。神界に住む神はみんなシステムと繋がった端末を生まれつき持っている。ニアがさっきまで使ってた地球のタブレットみたいなやつね。ちなみに使徒も神と契約すると、性能は違うけどスマホくらいの端末が使えるようになるよ。そして神はこの端末で擬似的に自分の世界を造っていくことになる。ここで立派な世界を造り、神として1人でやっていける充分な力があると創造神様に認められれば晴れてこの神界を卒業。その後は自分の力で世界を創造するってわけ。今のところ卒業生は数えるくらいしかいないけどね!ここ最近の神ときたらやる気も無いし…創造神様も退屈してるよ」


 ロリ女神が職員とメイドさんを一瞥する。


『申し訳ございません!!』

「あっ、申し訳ございませーん」


 支部長とメイさんが即座に頭を下げ謝った後、ニアちゃんが出遅れて謝る。

 あっ、サーセン、ペコッて感じ、ラヴい。


「ああ、いや、いいんだ。ちょっと快適にし過ぎちゃった僕達も悪いし、創造神様も何か考えがあるみたいだしね。話が脱線しちゃったね。基本的にシステムで出来ることの話をする前に質問はあるかい?」


「あー、それじゃ2つほど。えっと、ここにいる人は皆さん神なんですか?それと凄く今更なんですけど、あなたって何者?まだ名前も知らないんですよね」


 ロリ女神がきょとんとした顔でこちらを見て、笑いだした。


「あっ、あははははははっ!ごめん!そうだよね!僕はもう君達の事知ってたから油断してた!それじゃ改めまして!僕はレイ!この世界では創造神様の次に偉い最上位の神、管理者達の1人だよ!よろしくね!それとここに居るのは君を除いて皆神だよ!この世界には神と極少数の使徒しかいないからね!」


 マジかよ、天使とかいないんか。

 確かに今のところ全員が神がかった容姿をしている、行動は若干庶民っぽいが。

 そして、管理者でロリ(ショタ)神のレイちゃん君か。


「よろしくね!えーと、なんて呼べばいいんですかね?管理者様?レイちゃんとか?レイ君でもあるし…」


「コウ様!その呼び方は流石に…!」


 フレンドリーにロリ女神と話していると焦るメイさんに止められた。

 ロリとはいえ流石にこの世界のお偉いさんにちゃんはまずかったか。


「大丈夫大丈夫!メイもそんなに気にしなくていいって!神の君達は僕のこと、レイ様かレイさんって呼んでよ!一応上司みたいなものだしね!アイト、メイ、ニアもよろしくね!」


『レイ様…よろしくお願い致します』

「レイ様よろしくですー」


 息ピッタリだな支部長とメイさん。

 ニアちゃんはこの雰囲気に慣れてきた御様子。


「黒石幸君!君はレイちゃんとレイ君、どっちがいい?」


 そんなの一択だろ。


「レイちゃんでお願い致します!俺もコウとかでいいんで!」


「あははっ!じゃあコウの前ではずっとレイちゃんでいるね!呼び方もレイちゃんでいいよ!特別だからね♪」


 そう言いながらまた腕に抱きつきパイパイで挟み込む。

 あざとい、だがそれがいい。

 レイちゃんのサービス精神にせっかく落ち着いた心とマイサンが反応しかけるがなんとか平静を保つ。

 半勃ちはセーフだろっ……!

 ジャッジはっ……!

 メイさん、ジト目。

 ニアちゃんもジト目だが通常時もジト目っぽいから今回はまぁセーフという事で。


「レイちゃん、ご馳走さま。じゃなくてありがとうね。そろそろシステムで出来る基本的な事が聞きたいなー」


「そうだね!時間も結構経っちゃってるし、やらなきゃいけない大事なこともまだ残ってるから、ここからの説明はざっくりいくよー!システムで出来る基本的な事。1、神が自分の世界を造れる。2、システムが地球の色々な世界から抽出した情報を参考に造った異世界を攻略して力、金、素材を稼ぐことができる。3、地球の物品を購入できる。制限はあるし地球の元値より割高だけどね。4、異世界攻略で力を増やせば端末の能力も上がってできる事が増える。他にも世界の処理とか、転移関係やら色々あるけどせっかく世界観測協会の支部長と職員がいるんだし後で聞いてみてね!後はコウに使徒の説明をして力を与え、使徒になってもらえば一段落なんだけど…使徒として契約する神を決めなくちゃならない。神と使徒は深い繋がりができるし、今回は特殊なケースだからしっかり説明しなくちゃならないんだよね」


 真剣な顔でこちらを見つめるレイちゃん。


「え?レイちゃんと契約するんじゃないの?」


「ごめんね、僕が契約してあげたかったけどちょっとできない理由があるんだ。どうしてかは言えない、ごめんね」


 レイちゃんがとても悲しそうだ、おっさんそういうのに弱いのよ。


「レイちゃんと契約できないのは少し残念だけど気にしないで!おっさん、ちゃんと異世界攻略頑張るから!」


「ありがとね、コウ!」


 まだ少し悲しそうだがとりあえずぎこちないが笑顔を見せてくれた。

 そして、対面のソファーに真面目な顔を向ける。


「ニア、君がコウと契約する神になるんだ!」


「…え?…私ですか…?」


 ニアちゃん、いつものダウナーなあたしはどこ行った?

 ジト目も全開じゃあないの。


















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