第28話 エルフィンとハンネス~夢は語りかける ③

 突然、誰かの強い視線を感じ、ハンネスは後ろを振り返った。

 しかし後ろを注意深く見たが、それらしい人物は見当たらなかった。


「どうしたんだい?」

と、一緒に歩いていたエルフィンが、ハンネスのいつもと違う様子に気づき、ハンネスに聞いてきた。


 エルフィンの心配げなまなざしを見て、ハンネスの心は愛おしさで胸がいっぱいになった。いつもは押さえているエルフィンへの感情が、この日は、なぜだか押さえていることが出来なかった。

 ハンネスはエルフィンの体を引き寄せると、エルフィンを抱きしめ、その唇にキスをした。ふたりはその日、初めて互いを恋人として意識し、その気持ちを確かめ合った。


「ジャド師に、また怒られるかな?」

とハンネスは笑いながらエルフィンに言った。


「大丈夫! でも、ふたりだけの秘密だ」

と、エルフィンは小さな声でハンネスに言った。


  しかしそのふたりの仲睦まじい姿を、遠くから黙って、見ていた者たちがいた。

 アメリアと武官オリオンだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る