第29話 教団に助けを求めて来た男女
ハンネスとエルフィンはマジックミラーの窓から、教団に駆け込み、助けを求めてきたというふたりの男女の顔を注意深く、しばらく黙って見つめていた。
やがてエルフィンが、静かに言った。
「女性のほうは知りませんが、男性のほうは帝国軍の武官でオリオンと言う者です。
マルデク情報省長官オスカー・フォン・ブラウンの右腕と言われる男で、文武両道にたけています」
そして不思議そうな顔をして、ミカエルに聞いた。
「なぜ彼が、ここに?」
「女はそのマルデク情報省長官オスカー・フォン・ブラウンの婚約者で、ふたりは恋仲で、地球へきみたちと同じように、駆け落ちをしてきたそうだ。
そして我々に保護を求めている」
ハンネスとエルフィンは驚きながら、互いの顔を見た。
「オスカーに婚約者がいたなんで、まったく初耳だ。
オスカーは、エルフィンにぞっこんで、会うたびにいつもにお前にプロポーズしてたよな?」
とハンネスはエルフィンに言った。そして、
「マルデクでは、オスカーは私の親友だったので、彼の好みは良くしっているつもりですが、彼女が婚約者だと聞いても、何かしっくりこないのが、本当の気持ちです」
と、ハンネスは言った。
「彼女はマルデク王朝の血を引く、王女の称号を持つ女性だそうだ。
政略結婚を親に迫られたのだろう」
と事も無げに、ミカエルは言った。
「武官オリオンは、実直で心から信頼出来る同僚でした。
戦場では随分、助けられた。
できれば、助けてあげて下さい」
とエルフィンはミカエルに言った。
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